【西田宗千佳連載】医療機器の計測には及ばないが…医師から見たスマートウォッチの価値

ink_pen 2026/1/20
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【西田宗千佳連載】医療機器の計測には及ばないが…医師から見たスマートウォッチの価値
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.157-3

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はApple Watchに新たに備わった「高血圧のパターン通知」機能。あらゆる病気の要因ともなる高血圧にアップルが注目した要因とは何か。

 

今月の注目アイテム

アップル

Apple Watch Series 11

6万4800円~(税込)

↑高血圧パターンの通知のほかに、心電図アプリやバイタルアプリも搭載し、健康状態を理解して最新の情報を受け取れる。睡眠の質を理解して回復力を高めるために毎晩の睡眠データを分析する「睡眠スコア」も利用可能だ。

心拍の変化や運動量、高血圧パターンの通知などによって、スマートウォッチは、健康管理にとって大切な機器に変わってきた。

ただ、これらの情報が実際に「病気への対策」にどう使われるかは、意外と知られていない。

筆者は複数の医師に、スマートウォッチでの計測データについて、その価値を取材したことがある。全員が口を揃えて言うのは「情報はないよりもあったほうがずっといい」という点だ。

計測データの正確性・緻密さだけで言えば、どんなスマートウォッチのデータも、病院で使われる医療機器での計測には及ばない。だが、スマートウォッチの情報には「常に計り続けている」「すぐに測れる」という要素があって、それが重要な価値になっている。

Apple Watchを含め、スマートウォッチの上位モデルには「心電図(ECG)」を測る機能がある。これも、精度自体は高くない。だが、病院の計測機器と異なり、「すぐにその場で計測できる」ことには大きな意味がある。

心臓に関する異常は、あるタイミングでは体感できても、すぐにその傾向が消えてしまうことが少なくない。異常を感じても病院に移動して検査を予約して……という工程を踏んでいる間に、医師が知りたい傾向が失われてしまうことも多いらしい。

そこで、スマートウォッチで簡易的にでも「いつでも」「すぐに」計測しておき、そのデータを医師に見せることで、病気につながる傾向を把握できる可能性が高まるのだという。数値の精度が低くても、医師ならば変化の傾向を見れば状況は判断できるため、「診断の情報はあるほどありがたい」ということになるのだ。

ただし、そうしたデータも、一定の医学的な裏付けがある形で記録されていなければならない。心電図機能や「高血圧パターンの通知」は、効果や精度を検証したうえで「医療機器認定」を受けないと、それらの価値を訴求できない。

安価なスマートウォッチの中には、そうした機能についてきちんとした認定を受けずに販売しているものもある。他国では認証を受けているが日本では違う、というパターンもあるので注意したい。

特に「血糖値の把握」については注意が必要だ。ニーズも高いので「血糖値が測れる」と謳うスマートウォッチやスマートリングも存在するものの、技術的課題が多く、結果の妥当性は検証されていない。日本糖尿病学会も、それらを「付けるだけで血糖値がわかる」とするスマートウォッチについて、「不正確であり、それらの機器は糖尿病の治療に使うべきではない」と警告している。

これらの事情も考えると、価格は高くなるかもしれないが、健康維持を目的にスマートウォッチを買うのであれば、どの機能がどういう形で提供されているかが明確になっている、定評のある大手メーカーのものを選ぶべきだ……という結論になるのである。そのなかでは、各社がデザインや機能を競っている。

ではそんななかで、健康以外の側面での付加価値はどうなっているのだろうか? その点は次回解説する。


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