ジレンマや駆け引きを手軽に味わえるドイツゲームを中心とした近代ボードゲーム。これらは、いつ生まれ、どういった経緯で日本に広まったのでしょうか。現役住職のボードゲームジャーナリスト・小野卓也さんとともに、その歴史を振り返ります。
【教えてくれた人】
ボードゲームジャーナリスト
小野卓也さん
1973年生まれ。山形県の曹洞宗洞松寺33代住職を務める傍ら、国内最大のボードゲーム情報サイト「Table Games in the World」を運営しています。
<各時代を代表する名作ゲーム>
【1960年代】
3M
アクワイア(日本では取り扱いなし)
【プレイ人数:3〜6人】【プレイ時間:90分】【対象年齢:12歳以上】
1962年に米国人、シド・サクソンが考案したホテルチェーンの投資と合併をテーマにしたゲーム。タイル配置と株の購入による駆け引きは現代でも色褪せぬ面白さ。
【ココがポイント】
米国の経済ゲームが海を渡って大ヒット
「米国で生まれた経済ゲームが欧州で受容されて広がり、評価されました。欧州のゲーム感を変えたユーロゲームの原点と言えるゲームです」(小野さん)
【1970年代】
メビウスゲームズ
ウサギとハリネズミ(現在は取り扱いなし)
【プレイ人数:2〜6人】【プレイ時間:30〜45分】【対象年齢:10歳以上】
1973年に英国で誕生したサイコロを使わずにカードでプレイするすごろく。手札をうまく使って、ボード上でカードを補充しながら相手を出し抜きゴールを目指します。
【ココがポイント】ドイツへも普及したカードで遊ぶすごろく
「1979年、第1回のドイツ年間ゲーム大賞を受賞。そこからドイツゲームの歴史が始まります」(小野さん)
(現在は「八十日間世界一周」(ホビージャパン)としてリメイクされています)
【1980年代】
カワダ
スコットランドヤード
4860円
【1980年代】【プレイ人数:3〜6人】【プレイ時間:40〜50分】【対象年齢:10歳以上】
1983年にドイツで発売された名作ゲーム。怪盗X役1人と刑事役数名に分かれて遊びます。刑事側は怪盗Xの移動したチケットから行動を推理して逮捕を目指します。
【ココがポイント】
世界が初めて認めたドイツゲーム
「ドイツゲーム初の世界的な大ヒットを記録。これをきっかけにオリジナリティ溢れるドイツゲームが次々と発表されていきます」(小野さん)
【1990年代】
ジーピー
カタン スタンダード版
4104円
1995年に発売。累計販売数は2000万個を超える人気ゲーム。プレイヤーは土地からとれる資源を使って、他プレイヤーと交渉しながら無人島を発展させていきます。【プレイ人数:3〜4人】【プレイ時間:60〜90分】【対象年齢:8歳以上】
【ココがポイント】
フリーク向けゲームがまさかの大ヒット
「ドイツゲーム全盛期に生まれた名作。時間がかかりルールも多い『カタン』のヒットによりドイツゲームはフリーク路線へと舵を切ります」(小野さん)
【2000年代】
メビウスゲームズ
カルカソンヌ 日本語版
3800円
【プレイ人数:2〜5人】【プレイ時間:35分】【対象年齢:7歳以上】
2000年に発売されたタイル配置ゲーム。地形や道、建物などが描かれた地形タイルを1枚ずつつなげながら、地形タイルに自分のコマを配置して得点を得ます。
【ココがポイント】
新たな時代を築いた王道ファミリーゲーム
「このゲームが累計1000万個を超えるヒットを記録したことで、ドイツゲームはフリーク路線から一転、ファミリーゲーム路線に回帰します」(小野さん)
【2010年代】
ホビージャパン
ドミニオン:第二版
4860円
【プレイ人数:2〜4人】【プレイ時間:30分】【対象年齢:14歳以上】
2008年に発売された米国発のカードゲーム。トレーディングカードゲームから着想を得て、場からカードを買い自分専用の山札(デッキ)を作るデッキビルドシステムを確立しました。
【ココがポイント】
新たな層を取り込んだ驚異のカードゲーム
「2000年代に、『ドミニオン』が世界中で大ヒットしたことで時代が変わりました。ドイツゲームに、TCG層を取り込むことに成功したのです」(小野さん)