ヨシムラヒロムの一階通信 第六階 株式会社バンダイ
連載「一階通信」ではエントランス部分から見える企業の顔を取り上げる。1階にエントランスがない企業も多々あるが、それはご愛嬌。受付や入口があるフロアを総じて『1階』と呼び、エントランスから企業を紐解く。
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今回は、誰もが一度は遊んだことがある株式会社バンダイを一階通信。
男子諸君なら、人生に一度は「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル(通称ガンプラ)を作った経験があるはず。僕の場合、中学時代がピーク。毎月のお小遣いを握りしめては、いまはなき新宿のさくらやホビー館で新作を買いに行った。人生で初めての徹夜もガンプラ制作だったと記憶している。帰宅部の中坊のありあまったエネルギーは、すべてガンプラに注がれていた。
ガンプラ制作は、100%自分が思った通りに作れなかったりもする(そこがハマる魅力の1つ)。間違えてパーツを折ってしまったり、スプレー着色がムラになったり、と時折ミスも発生。大概は接着剤で直したり「まぁ仕方ないか」と諦めるが、修正不可能な場合も。
そういった時に頼るのが、企画・製造・販売元のバンダイだ。欲しいパーツを指定し、パーツ料金分の郵便切手を送ると、1週間ほどでパーツが届く。ミスを頻繁に起こしがちな中学生モデラーにとって、コレは非常にありがたいサービスだった。一度、手持ちの切手の都合で数円多めの切手を送ったことがある。その際に、バンダイから送られてきた封筒には、パーツとともに差額分の切手も同封されていた。中学生ながら「しっかりした会社だなぁ」と思い、以来バンダイという会社を勝手に信頼している。
台東区駒形の下町を歩いてるとウルトラマン、仮面ライダー、ドラえもん、アンパンマンの像が忽然と現れる。初見の人はキャラクターの日本代表に驚くはず! その横にあるのが今回の目的地、バンダイの本社。一階部分はガラス張り、外からもエントランスに並ぶ大量のオモチャが目視できる。もう、ここの時点で「今回の取材は成功だ!」と思った。
2004年に竣工した14階建のバンダイ本社ビル。入り口で、まず出迎えてくれるのが巨大なTVモニターだ。縦2m横4mはあるだろうか。常に新商品のCMが流れている。このスペースは2階との吹き抜け。広場になっており、空間的にヌケが良い。
そこから奥に進んだ先にあるのがエントランスだ。右側は壁伝いにガラス棚が並び、その中には外からも見えたオモチャが並ぶ。1歳児向けから、仮面ライダー変身ベルト、妖怪ウォッチ、マニア心をくすぐる高価なキットまで。並ぶオモチャの総数は優に1000を超えるだろう。
最も熱心に見たのが、もちろん青春を捧げたガンプラの棚。今年で誕生から36年を迎えるバンダイの看板商品の1つだ。歴代で2000種類を超えるモデルを販売してきた。
「2000以上あるモデルで絶版は1モデルしかないんですよ。ちなみに不人気で絶版なのではなく、たくさん生産したことにより金型が劣化し絶版になったんです」と広報のA氏。現在の総売上は4億5900万個以上、計算上だと日本人全員が約3個づつ持っていることに……。もう、ちょっとワケがわかんらないほどのバケモノ商品だよね。
じっくり見ていると昔作った「Zガンダム」を発見!これは中学時代に作った思い出のモデルだ。「これ作った時、背中についた羽部分が重くて、支えられなかったんですよ」といらぬ話を口走ってしまう。「やば! 怒られる」と思ったが、A氏は「それはすいませんでした。けど、最新のモデルは進化してるので完璧に固定できますよ」とクールな対応。日々、ガンプラも進化していると実感した。
続いて、向かったのが奥にある服のゾーン。仮面ライダーなどのヒーロー、ヒロインをモチーフにした子ども服が並ぶ。「僕が幼稚園のころに着ていたのと変わらないなぁ」と思ったが、A氏の説明を聞いて愕然する。13年から発売された「NEXTPETS!」シリーズはAR対応。「専用カメラアプリを使い、服を着た子どもにスマホを向けると、画面上はキャラクターとの2ショットになるんですよ」とのこと。オモチャも常にイノベーションが求められている。日進月歩はまさにこのこと。
AR服の隣には、子ども用のコスプレ服も展示されていた。こちらも人気商品、大人発信のコスプレ文化が子どもにも定着したことを実感した。
そして、左側のゲームの筐体機の並びへ。ここではカードダスの最新型を見ることができる。以前は現物を見て、ニヤニヤ楽しむだけであったカードダス。現在は、大幅に進化しゲーム機にスキャンニングをして遊ぶカタチが人気らしい。自分の持っているカードに描かれたキャラクターが画面上で戦う、そりゃ子どもは夢中になるわっ。
妖怪ウォッチ、アイカツ!、ガンダムと色々なキャラクターで展開されているが、現在一番人気はドラゴンボール。ここだけは20年前の僕の少年時代と変化ナシ。改めて、鳥山 明先生のスゴさを再確認した。
バンダイのエントランスは、ざっくり分けて上記の3つのエリアで構成される。ここに来るだけで、日々進化をするオモチャの最新事情がわかるだろう。
また、何よりも素晴らしいのが誰でも見学可能という点。取材時も子どもたちや外国人観光客が遊んでいた。見学無料なので、一度は足を運ぶことをオススメしたい。
帰り際、A氏に「お子さんは、お父さんの仕事が自慢なんじゃないですか?」と聞いた。「『他の子には言わないで』と言っているんです。そのことが広まると色々と大変なことも起きますからね」と意外な答え。けど、確かにバンダイの社員だと分かると色々と頼まれそうではある。「子供がパパの職業は言えないなんて、なんかスパイみたいっすね」と言うとA氏は微笑。最後に、そんな会話をしてバンダイを後にした。
株式会社バンダイの一階通信見どころまとめ。
①大量のオモチャ
②NEXTPETS!シリーズ
③データカードダスの筐体