最新世代のゲーム専用機には、Xbox Series SやPS5デジタル・エディションのようにディスクドライブを備えていないハードウェアが登場しつつあります。過去のゲーム機と互換性があったとしても、すでに所有している物理ディスクが読めず、結局は遊べないわけです。
マイクロソフトがこの問題を解決することを意識したらしき「セカンダリデバイスを使用した光ディスクのソフトウェア所有権の検証」なる特許を申請したことが明らかとなりました。
この特許出願は2020年11月に提出され、ちょうど先週USPTO(米特許商標庁)が公開したものです。まだ承認はされていませんが、MSが過去のディスクに閉じ込められたゲームを、ディスクレス化が進むゲームの未来に持ち込む方法を探している証拠になると思われます。
ざっくりといえば、この特許は「電子コンテンツを含む光ディスク」を読み取り、「電子コンテンツの所有権を確認」できるディスクドライブを持つデバイス(Xbox 360、Xbox One、Xbox Series Xなど)を前提としています。
そちらで所有権を確認すれば、もう一方のドライブなしゲーム機(Xbox Series S)などでアクセスできる仕組み。すなわち「電子コンテンツのデジタル版を、第2の機器や外部の機器・サービスから第1の機器にダウンロードまたはストリーミングできる」と説明されています。
しかし、この仕組みをどうやって実現するのかは、かなりあいまいです。例えば、2つの機器は同じLAN上にあるか、2つの異なるLAN上にあるか、あるいはインターネットや他の「分散ネットワークシステム」を介して接続されているだけかもしれない……とのことで、要は(あり得る状況を並べているだけで)何も言っていないに等しいでしょう。
また、所有権の検証そのものはデバイス上で完結することも、Xbox Liveのような「外部のビデオゲームサービス」を利用できるとも書かれています。家の中だけで認証してもいいし、MS側のサーバーで確認もできるというわけです。
さらに最初のディスク認証(「遊ぶ権利がある」という状態)がいつまで続くかについては、両方のデバイスが「同じLAN上にある」限り、ディスクが最初のデバイスのディスクドライブ内にある限り、または「電子コンテンツのデジタル版が外部デバイスまたはサービスで利用できる」限り、とあらゆる状況が挙げられています。
ただ興味深いことに、「インターネット料金や帯域幅の問題を防止/軽減するために、LAN機器からコンテンツをストリーミング/ダウンロードできる」かもしれないとされており、ディスクデータ自体を転送するためにMS側の集中型サーバーを介さなくてもいい(家庭内だけで完結する)可能性も示されています。
本当に実現できるかどうかは怪しいところですが、そもそも「なぜMSがこの問題を解決すべきか」と考えたくだりには、大きなスペースが割かれています。
すなわち多くのゲーマーは「物理的なビデオゲームメディアやその他のビデオゲーム機器の膨大なライブラリを長い間溜め込んでおり、それはビデオゲーム機器の持ち主にとってかなりの金銭的(および精神的)投資を意味する」ため問題であるとのこと。そして新型ゲーム機を買い足した人達は、わざわざ「次世代ビデオゲーム機器用のデジタル版ビデオゲームコンテンツを再び購入する」ことを余儀なくされると書かれています。
そうした金銭面での負担ばかりか、MSは「物理的なビデオゲーム媒体を持つ人の多くは、その物理的なビデオゲーム媒体に感情的な愛着を持っています」「これらの所有者は、物理的なゲーム媒体を扱う際の「感触」や物理的なゲーム媒体に関連する「ノスタルジア」を大事にしています」として、ゲームコレクターの心情まで深く踏み込んでいるしだいです。
こうした仕組みを実現しても、おそらくMSにはお金があまり入ってきそうにありません。それでも熱量の高い特許を申請しているのは、Xboxの責任者フィル・スペンサー氏が根っからのゲーマーのためかもしれません。
Source:Justia Patents
via:Ars Technica