去る9月15日~18日に開催された東京ゲームショウ2022(TGS2022)。久々のリアル開催となった今回、残念ながら近年の定番でもあった競技大会「e-Sports X(イースポーツクロス)」の開催はなく、TGS主催のeスポーツイベントは行われませんでした。しかし、会場内には「eスポーツコーナー」が用意され、eスポーツに関係するブースが数多く出展。これまではeスポーツを前面に押し出しているブースは少なかったのですが、コーナー化するほど、eスポーツを中心に展開しているブースが増えたと言えます。eスポーツコーナー以外にもeスポーツ関連の商品を取り扱ったブースが各所に点在しており、TGS会場を見渡すとどこでもeスポーツ関連ブースが目に入るような状態です。
コーナーが出来るほどに成長を続けるゲーミングPC市場
最も数が多かったのはゲーミングPC、PC周辺機器メーカーや販売メーカーのブース。今回のTGSでは、PC関連メーカーの勢いからここ数年の変化を大きく感じられました。
さらに、DXRacerやイトーキなど、ゲーミングチェアを販売するメーカーのブースも当然、出展していました。ニトリもゲーミングチェアを展開していたのが印象的です。
プレイ環境や競技サポート製品の展示も充実していた
変わり種としては、「ゲーミングマンション」を謳ったブースも登場。音楽制作向けの防音賃貸マンション「ミュージション」を展開するリブランマインドが提案するもので、防音と高速インターネットを提供するマンションになっています。夜中でも大声で配信しても問題無く、マンションにありがちな一棟でひとつの回線になることで、部屋ごとに高速通信が見込めなくなるようなことも、専用回線を引くことで解決しています。
ヤマハミュージックジャパンとブースでは、部屋を別途借りるのではなく自宅にゲーミング用の防音室を導入したい人の為の防音室「アビテックス」を展示。ヤマハミュージックジャパンは、前述のリブランマインドの「ミュージション」の開発にも参画していて、出展ブースではそれをゲーム実況に転換。
梱包資材メーカーの川上産業も防音・静音ルームを展示。いわゆるプチプチと呼ばれる緩衝材を応用した防音室で、プチプチが緩衝材としてだけでなく、保温、防寒にすぐれ、音の吸収もすることをアピールしていました。
物販コーナーにブースを展開していたカンロは、ゲーミンググミを発売していました。ゲーミングチーム「忍ism Gaming」と共同開発したグミで、ゲームをプレイする時の集中力を高め、それを持続させる効果があるとのことです。
ブドウ糖が主成分となっているので、プロ棋士が対局中に糖分を補給し脳を活性化させるのと基本的に一緒です。以前、東京ビッグサイトで開催していた「eスポーツビジネスEXPO」でも、他メーカーがゲーミンググミを発売しており、eスポーツに関わる企業・製品の幅が広がっていることを実感できます。既存の技術や商品を、ゲーミングやゲーム実況などの利点にスポットを当てて、本来の商品の使用目的とは違った展開を行う。ここ数年でそういった商機は増えました。
今後、eスポーツのメインプラットフォームはゲーミングPCとなる?
今回のTGSでは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントはPlaystation関連の出展はしておらず(インディーゲームコーナーでの出展はあり)、TGS開始以来、初めてコンシューマプラットフォーマーの出展がありませんでした。その変わり、VRのMETA QUEST2や携帯ゲーミングPCのSTEAM DECKのブースが出展されるなど、既存のプラットフォームに捉われない存在に注目が集まりました。広く言えば、METAのデバイスはゲーミングPCと接続して遊ぶので、コンシューマプラットフォームに代わりゲーミングPCが今回のメインであったとも言えます。
そもそもゲーミングデバイスの多くは、ゲーミングPCの周辺機器です。ゲーミングキーボードやゲーミングマウス、ゲーミングヘッドセットやゲーミングモニターなど、コンシューマ機で遊んでいるプレイヤーにはあまり縁がないものですが、PCユーザーにとってはどれも必須となっています。冒頭で触れたゲーミングPC関連メーカーの展示が増えたことも鑑みると、ここ数年でゲーミングPCの認知度が高まったと改めて実感しました。
昨今のゲーム、特にオンラインゲームは様々なハードでリリースされ、ハードを超えた対戦、協力プレイができるクロスプレイが主流となっています。ただ、コンシューマ機とゲーミングPCがマッチングすると、それだけでゲーミングPCユーザーの方が有利になると言われるなど、ゲーミングPCを選ぶ意味が出てきています。特にプロゲーマーやハイアマチュアなど、ハイエンドプレイヤーにとって、ゲームのプレイ環境は死活問題となるので、ゲーミングPCとその周辺機器であるゲーミングデバイスを揃える傾向にあると言えます。
とは言え、ゲーミングPCやその周辺機器はコンシューマ機に比べ高価であり、簡単に手が出せないのも事実。実際、コンシューマ機でも10数万円のゲーミングPCと同等の性能を持つPlayStation 5が高いと言われる昨今、それ以上の価格のゲーミングPCを購入するのはさすがに覚悟が必要でしょう。そういった意味では今回のTGSは、さまざまなゲーミングPCやゲーミングデバイスを直に触れる機会であったわけです。
総じて今回のTGSはゲーミングPC、それに付随する周辺機器、eスポーツ関連が大きく躍進したと感じました。TGSに来場する人たちは、コアユーザーでアーリーアダプターであるので、まだまだ一般的にゲーミングPCなどが浸透するには時間がかかると思われますが、今後の主流となっていく可能性は十分にあるのではないでしょうか。