ゲーム&ホビー
2023/1/12 21:15

今からでも始められる! 「スプラトゥーン3」を、シリーズやりこみ勢が“やさしく”こってり解説

任天堂が2022年9月9日に発売したNintendo Switch用ソフト「Splatoon 3(スプラトゥーン3)」は、発売から2か月で国内販売500万本突破という驚異的なスマッシュヒットを記録しています。

↑隠れて、撃って、そして「塗る」

 

スプラトゥーンシリーズは、初心者から中上級者まで同じゲーム世界の中で遊べる懐が深いゲームです。シンプルなルールで子どもでも楽しく遊びやすいゲームですが、熟達していくeSportsとして成立するほどの奥深さも兼ね備えています。かくいう筆者も前作を1000時間ほどプレイしている愛好者の一人です。

 

しかしながら、「流行っているけど具体的にどんなゲームかは知らない」「なぜこんなに人気が出たのかわからない」と、スプラトゥーンシリーズについてよく知らないという人も少なくないはず。また、発売から数か月が経っており、「興味はあるけれど今更始めるのも……」など、躊躇している人もいるでしょう。

 

今回は、まだ遊んだことがないという人や、スプラトゥーンシリーズについて知りたい人に向けて、本作の面白さや魅力をお伝えします。

↑「スプラトゥーン3」のタイトルカット

 

どんなゲーム?

スプラトゥーンシリーズは、いわゆる3Dシューティングゲームです。プレイヤーは「インクリング(イカ)」と呼ばれるキャラクターを操作して、インクを塗って陣地を広げたり、撃ち合ったりして戦います。

 

もっとも基本的な対戦ルール「ナワバリバトル」は、3分間の陣取り合戦です。4人1組で2チームに分かれてインクを塗り合い、ステージ上により多くのインクを残した方が勝ちという分かりやすいルールです。インクを塗り広げていくと、対戦相手との撃ち合いが生じることがあります。

↑本作の基本ルール「ナワバリバトル」では、インクの塗った面積の広さを競います

 

小さなステージでナワバリ争いをしている中で、何度も攻防が起こり、緊張感のある試合展開になります。身体を動かすスポーツで例えるなら、バスケットボールやフットサルのような楽しさがあるといえるでしょう。

 

パターン化しやすいコンピューターではなく、人間のプレイヤーが対戦相手となるため、試合運びには無限のバリエーションが生じます。戦いの舞台は“ストリート”や“渓谷”、“造船所”など十数種類が存在し、一本道な通路で相手からの猛攻を防いだり、巨大な障害物を生かして戦ったりと、その局面を考えて自分の動きを決めていく必要があります。テンポ感の良いアクションゲームでありつつ、将棋のような戦略性も求められるのがスプラトゥーンの楽しさです。

 

●インクをまき散らすイカのプレイヤー

プレイヤーが操作する「インクリング」は、「ヒト」と「イカ」の2つの操作を持っています。2つの姿はボタン操作で瞬時に切り替えられます。ヒトの姿でインクを塗り広げて、その跡をイカの姿で素早く泳ぐといったように、ヒトとイカの姿を切り替えながら戦うことになります。

↑スプラトゥーンのキャラクターは「ヒト」と「イカ」の2つの姿を持つ不思議な生き物です(「タコ」もいます)

 

ヒトの姿ではブキを手に持って、インクを塗り広げることができます。対戦相手のキャラクターにインクで攻撃することもできますが、動きが遅く、隠れるのは苦手です。イカの姿ではインクに潜って素早く泳いだり、壁に登ったりできるようになります。イカの姿では対戦相手から見えづらくなり、インクの残量を回復できるという特徴もあります。

 

インクを塗り広げると移動範囲が広がり、試合展開が有利になるため、3分間の試合中はずっと撃ちっぱなしで戦うことになります。インクを塗るというアクションは分かりやすく、素朴な面白さもあります。

 

自分の操作で画面いっぱいにインクが広がっていく様子には、えもいわれぬ愉快さを感じます。初心者のうちは相手との撃ち合いになると負けてしまうこともありますが、負けたとしても楽しさが残るようになっています。何度も挑戦して、練度が上がっていくと、次第に相手に勝てるようになってきます。アクションが上達して相手を出し抜けるようになったときの喜びはひとしおです。

↑画面いっぱいにインクを塗り広げていくのは、素朴な楽しさがあります

 

スプラトゥーン3はなぜ「面白い」のか?

本作の魅力を筆者なりに読み解くと、「遊び方の幅広さ」と「協力プレイの楽しさ」、それに「独特の世界観」が織りなすものであると考えられます。

 

●ブキも戦法も多彩

本作には60種類以上の「ブキセット」があります。ブキセットはメインウェポンと、ボムのようなサブウェポン、必殺技のスペシャルウェポンの組み合わせになっています。

 

ガンガン攻め入って戦うのに適したブキがあれば、インクをひたすら塗り広げていくのに特化したブキもありと、ブキはそれぞれに個性があります。その形もユニークで、水鉄砲のようなものもあれば、絵筆や洗剤のボトル、風呂おけをモチーフにしたものまであります。

↑ブキは60種類以上あり、使い込んでいく過程も楽しめます

 

戦い方はブキによって大きく異なります。例えば、初心者でも扱いやすい「シューター」は、水鉄砲のようにインクを撃ち続けることができます。「チャージャー」は、射程が長く、スナイパーライフルのように遠くの相手を狙って打ち抜きます。「フデ」のように、ステージを自在に移動して相手を翻弄させるブキも存在します。

 

自分の戦い方にあったブキを発掘して、相棒として使い込んでいくのも本作の楽しさ。使い慣れたブキから持ち替えると、まるで別のゲームを遊んでいるかのような新鮮さで楽しめます。

↑「パラシェルター」は傘型で防御しながら戦うトリッキーなブキです

 

↑事務製品のような形の「ジムワイパー」。本作で追加された新しいブキで、大刀のように振って戦います

 

↑スペシャルウェポンは試合を決める必殺技、ド派手な演出で

 

●少ないコミュニケーションで連携を取る楽しさ

本作の対戦・協力モードはいずれも4人1組でのチーム戦。このチームで協力して戦うという要素は、スプラトゥーンの難しさであり、楽しさでもあります。

 

チーム編成は基本的に、そのとき遊んでいるプレイヤーから実力が近い人が編成される仕組みです。チームメイトが手にしているブキはその時々によってさまざま。戦う相手のブキについても、味方と似通っていることもあれば全くバラバラの布陣ということもあります。

 

そして、チームメイトと連携する手段は限られています。フレンド以外のユーザーとチームを組むときは、「カモン!」と「やられた!」、そして「ナイス!」という3つのメッセージしか送れません。

 

自分が撃ち合いでどれほど強くとも、味方と上手に連携できないと負けてしまうのがスプラトゥーン。他のプレイヤーとうまく連携して勝った時の楽しさは格別のものです。

 

●自分の個性で世界を彩る

スプラトゥーンの世界は、独特なグラフィティで彩られています。プレイヤーが集まる「広場」やステージは、至る所に独特の落書きや不思議なステッカーが貼られており、まさに“カオス”。ステージや街中の見慣れた場所でも、細部を見渡すと意外な発見があります。

↑本作の舞台となる「バンカラ街」。至る所にグラフィティがある混沌とした空間です

 

このカオスな世界の中で、プレイヤーが自分のこだわりを表現することもできます。本作で追加された「ロッカー」では、ゲーム内の随所を彩るアイテムを収集して、自分だけのロッカーに飾ることができます。モノを整理整頓して並べる人がいれば、詰め込むだけ詰め込んだような人もいたりと、ロッカーの作り込みは人それぞれ。プレイの合間のちょっとした時間に楽しませてくれます。

↑「どうぶつの森」の部屋のように、自分だけの空間を作れるロッカー

 

戦う時のファッションでも、自分らしさを表現できます。ファッションアイテムはアタマ、フク、クツという3つの種類があり、ゲーム内で稼いだおカネを使って、お店で買うことができます。オーソドックスなものロゴ入りシャツから、アヴァンギャルドなものまで多数存在しますが、いずれもどこか個性的な作りになっており、制作者のこだわりを感じます。ファッションアイテムには「ギアパワー」というゲームに関わる要素もあり、ギアパワーを付けると少し動きやすくなったり、塗っている時のインクの減りを抑えられるといった効果もあります。

↑アタマ、フク、クツは日替わりでお店に並ぶ

 

「イラスト投稿」機能では、ドット絵を投稿することができます。人気のあるイラストは広場に登場したり、ステージの随所に掲示されたりして、ゲームの世界の一部になります。秀逸なイラストは眺めているだけでも楽しく、プレイ中に目にした投稿イラストにホンワカしたり、笑ってしまうこともあります。

 

このほか、本作では「ネームプレート」も追加されました。プレートのデザインが変更できるほか、ユニークな「二つ名」を設定したり、経験を積むともらえる「バッジ」をつけてアピールできるようになっています。

↑本作から追加された「ネームプレート」。二つ名は上の句と下の句があり、上下を組み合わせて設定する

 

多彩なモードを遊びつくせ!

本作には、基本モードの「ナワバリバトル」以外にも多くの遊び方があります。以下、本作の各モードをさっくりと紹介します。

 

●ガチとガチのぶつかり合い「バンカラマッチ」

バトルを真剣に遊びたい人向けには、「バンカラマッチ」という対戦モードが用意されています。バンカラマッチでは動くヤグラに乗ってゴールを目指す「ガチヤグラ」や、アサリを集めてゴールにシュートする「ガチアサリ」など4つのルールがあり、いずれも基本モードのナワバリバトルよりも撃ち合いが発生しやすいルールになっています。

↑ナワバリバトルよりもストイックな戦いが楽しめる「バンカラマッチ」

 

バンカラマッチでは、プレイヤーのプレイスキルを「ウデマエ」というレートで表現されており、遊んでいくうちに強い相手と対戦できるようになります。

↑バンカラマッチの「ガチヤグラ」ルール。動くヤグラを取り合いゴールを目指す

 

バンカラマッチでは、チームメイトや対戦相手のブキ編成や、その場その場での動きをみて、勝敗を決めるアイテムをどのタイミングで動かすか、常に状況判断が求められます。ナワバリバトルよりも戦略性が高く、シビアな戦いが求められるモードと言えます。

 

12月からはさらに上級者向けの「Xマッチ」が遊べるようになりました。ウデマエを上げた上級者向けの対戦モードで、プレイスキルを数値化するレート制を採用しています。自分の実力をストイックに追求したい人には適した遊び方になっています。

 

●危険なバイトに挑む協力モード「サーモンラン」

対人戦が苦手な人にも楽しめるモードも用意されています。協力型モードの「サーモンラン」(通称バイト)もそのひとつ。サーモンランでは、ランダムで支給されるブキを手にして、次々に襲来する「シャケ」を4人で退治します。オオモノシャケと呼ばれる強いキャラクターを倒して、「金イクラ」を回収するのがゲームの目標です。

↑怪しい雰囲気が漂う「バイト(サーモンラン)」の受付所

 

↑サーモンランのミッションは、襲い来るシャケ(敵キャラ)を撃退し、金イクラを回収すること

 

コンピューターが相手とはいえ、侮ることはできません。実力が上がっていくにつれて、大量に迫り来るシャケをいかに捌いていけるかという、緊迫感のある戦いになっていきます。特に最上位クラスの難易度は今作で格段に向上しており、裏を返せば、長く楽しめるようになっています。

 

また。本作のサーモンランでは新要素として、数回遊ぶごとにボーナスステージとして、強大なボスキャラ「オカシラシャケ」が登場するようになりました。オカシラシャケの1つ「ヨコヅナ」が、大怪獣かと思わせる巨体で攻撃をしかけてくる様は圧巻。なかなか倒せませんが、与えたダメージに応じて報酬がもらえます。

 

オカシラシャケを目標として定めると、「今のチームなら勝てそうだから、オカシラシャケが出てくるまで遊ぼう」と毎日のプレイのモチベーションを保てるようになっています。

↑本作では強大なボスキャラ「オカシラシャケ」も登場するように

 

●一人でも楽しめる「ヒーローモード」

オフラインで遊べる一人用モード「ヒーローモード」も存在します。本作に登場するブキを使う本格的な3Dアクションゲームです。多くのステージを攻略していく中で、新しいブキやバトルで必要な動き方を自然と学べるようになっているため、初めてプレイする人には特におすすめのモードです。

 

敵の強さはほどほどですが、ボリュームは十分。遊びごたえはばっちりです。前作スプラトゥーン2をそこそこやり込んだ筆者でも苦戦するほど難しいステージもいくつかあり、隠しモードを含めて一通りクリアするのに10時間ほどかかりました。難しいステージは飛ばしてもクリアできるため、まずは簡単なステージだけをプレイしていくと良いでしょう。

↑一人用モード「ヒーローモード」はスプラトゥーン3の仕組みを使った3Dアクションゲーム

 

●2日だけのお祭り「フェス」

スプラトゥーンシリーズには、「フェス」というイベントが存在します。フェス期間中は、町やステージの雰囲気が一変。バトル中もフェス専用の音楽になるなど、お祭り感に包まれます。

 

プレイヤーは3つの陣営に分かれて戦い、2日間の戦いで獲得した「コウケン度」の量で陣営の勝敗を競います。フェスマッチのルールはナワバリバトルと同じ。自陣営が勝利しても負けても同じくらいの報酬がもらえます。参加してゲームを楽しんだものが勝ちという気軽なイベントとなっています。

↑「フェス」はスプラトゥーンのお祭り。期間中は町の雰囲気も一変する

 

フェス後半には、本作から追加された特別なルール「トリカラバトル」がプレイできるようになります。トリカラバトルは、3つの陣営が4人×2人×2人のチームを組んで、三つどもえで戦います。トリカラバトルの勝敗を決めるのは「スーパーシグナル」というアイテム。4人のチームはシグナルを防御して、2人のチームは協力してシグナル奪取を目指します。

 

トリカラバトルはライバル陣営同士が協力して攻撃するという特殊なルールですが、攻める側の2人チームは裏切ることもできます。2人チームが裏切り続けると4人チームを利してしまうため、攻める側は協力しつつ戦うことになりますが、アイテムの奪取が陣営全体の勝敗を決める要素になるため、タイミング良く裏切って実績を稼ぐという戦略もアリと、戦略性が求められるルールになっています。

↑3チームが防衛側と攻撃側に分かれて戦う「トリカラバトル」。2チームで挑む攻撃側チームには時に裏切り合うことも

 

●意外と侮れないおまけ要素「ナワバトラー」

前作スプラトゥーン2では、“おまけ”要素として、簡単なリズムゲームが遊べるようになっていました。本作では「ナワバトラー」というボリュームたっぷりな“おまけ”が遊べます。

 

ナワバトラーはナワバリバトルを平面にしたような陣取りパズルゲーム。マス目の形が描かれたカードを順番に出し合って、なるべく広いマス目を確保した方が勝ちというシンプルなルールです。ステージの形や相手の動きによって出せるカードが制限されるため、カードデッキの構成が勝敗の鍵を握ります。

 

バンカラマッチやサーモンランの合間の息抜きとして遊べますが、ついついハマってしまう中毒性の高さもナワバリバトルと同じです。ゲームの中のイカ達も同じようで、バンカラ街を歩いてみると、そこら中にナワバトラーのデッキが置いてあります。

 

発売時の仕様では対コンピューター戦しかできませんが、強いコンピューター相手に勝てずに気付けば数時間経つこともしばしば。ナワバトラーで強いデッキを作るために、ナワバリバトルを遊んでいるという人もいるかもしれません。

↑カードを出し合う陣取りゲーム「ナワバトラー」

 

●進化していく対戦環境

任天堂は本作において、発売から2年間、アップデートが定期的に配信すると予告されています。本作には“シーズン”という概念があります。シーズンは約3か月で移り変わり、そのタイミングでアップデートが提供されるようです。

 

最初のシーズンは11月で終わり、2022年12月からは2つ目のシーズン「2022冬 Chill Season」がスタートしました。この変わり目には、新たなブキとして「スペースシューター」など3種類が追加され、前作までに登場したマイナーチェンジ版のブキも10種類が登場しました。サーモンランの特別なモード「ビッグラン」という大型イベントや上級者向けの「Xマッチ」が解禁となります。

 

新シーズンを迎えて、ますます盛り上がりを見せるスプラトゥーン3の世界。まだ遊んだことがない人も、ぜひ飛び込んでみてはイカがでしょうか。

 

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