普段から冷え性(冷え症)に悩む人はもちろんのこと、寒い季節になると「手足が冷えて夜うまく眠れない」「肩こりがひどくなった」など、不調を感じる人は多いのではないでしょうか? 体が冷えることで、血流や免疫機能、代謝の低下などが起こります。昔から「冷えは万病のもと」と言われるように、身体を理想的な温度に保つことは、健やかに過ごすうえで欠かせません。
その解決方法のひとつが「温活(おんかつ)」。温活に関する正しい知識を伝えている「日本温活協会」で温活指導士をつとめる川崎真澄さんに、日常生活でできる温活を教えていただきました。
免疫力を維持し、健康な体に導く「温活」
温活とは「 “適正な体温” まで上げてその体温を維持すること」をいいます。
10年ほど前から広まり始め、新型コロナ流行の影響を受け、免疫力や健康に対する意識の高まりによって、昨今はさらに注目を集めています。
「本来、人が健康を保つ適正体温は36.5℃から37℃といわれています。しかし、現代の日本人は36℃前半や35℃台の人もめずらしくありません。適正体温を保つことで、免疫力を維持し病気になりにくい体が作られます。そのためにも温活はとても効果的です」(日本温活協会本部指導員・川崎真澄先生、以下同)
アンチエイジングにも効果的! 女性の体にとって大切な「温活」とは
一般的に、筋肉量が少ないことや、周期的なホルモンバランスの変化を受けやすい女性の方が、男性より “冷え” を感じやすいのだとか。
「冷えることにより体の機能が低下していきます。また、血液の流れが悪くなることで、卵巣の働きも悪化。その結果、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、生理不順、不妊など女性の体にさまざまな悪影響を及ぼすのです。
血液の巡りがよくなると、免疫機能が高まるだけではなく、リンパの流れも良くなり、余分な水分や老廃物をスムーズに回収できます。また、新鮮な血液が細胞に届きやすくなります。細胞も生まれ変わることでお肌の調子が良くなり、代謝が上がるのでダイエットにも効果的です」
まずは「冷え」タイプをチェック
「自身が冷えているかどうかをチェックするには、まずはご自身の体に意識を向け、どう感じるかを指標にしてください。例えば、手足が冷える、お腹が冷えやすいなど。そこに改善策があります。また、朝起きたタイミングで体温を測ることもおすすめします。一般的な体温計でももちろん測れますが、基礎体温計を使用した方がより細かく測れるのでおすすめです」
■「冷え」タイプをチェック!
“冷え” にもさまざまなタイプがあるという川崎さん。改善策も、人によって異なります。そこで、自分がどの “冷え” タイプなのかをチェックしてみましょう。チェックが多いところが、あなたのタイプです。
タイプA
□ 疲れやすくだるい
□ 風邪をひきやすい
□ 平熱が35℃台
□ 舌の色が淡く、舌が分厚い
□ 汗をかきづらい
□ いつもまわりから「大丈夫?」と聞かれる
□ 厚着をしてもなかなか温まらない
タイプB
□ お通じが悪く便秘気味
□ いつもお腹が冷えている
□ 肌荒れすることが多い
□ 舌の色が赤紫色
□ 時々めまいを起こす
□ 生理痛がひどい
□ 肩こり
タイプC
□ なんとなくイライラすることが多い
□ 時々動悸が激しくなる
□ 急にお腹が痛くなることがある
□ 舌の色が赤黒い
□ 顔や頭からよく汗をかく
□ のぼせを感じる
□ 生理不順
タイプD
□ 頻尿、もしくは下痢気味
□ 手足がむくむ
□ よく頭痛がする
□ 舌の色が白っぽくブヨブヨしている
□ 耳鳴りがすることがある
□ 夏でも靴下が手放せない
□ 下半身太りしやすい
どこにチェックが多くついたでしょうか? チェックがもっとも多くついたところが、あなたの「冷え」タイプです。ただし、タイプは1つとは限らないので、他にチェックがついたところもあわせて確認するようにしてください。
あなたの「冷え」タイプ診断結果
タイプA ……
とにかく全身が冷えていて、いつも寒いタイプ
前提として疲れている人が多いので、運動するよりもまずは休んで体を温めるためのエネルギーを蓄えることが大切です。睡眠がきちんととれているかがポイントになります。
タイプB……
首から上は火照るように暑いのに、下半身が冷えているタイプ
ストレスを溜めがちで、気のめぐりが悪いことが原因で冷えているこのタイプの特徴は、足は冷えているのに、顔だけがなぜか汗をかいているという状態。汗をかいていることにフォーカスしてしまうと、自分が冷えていることに気づかないこともあるので注意が必要です。
タイプC……
気付きにくいけれど、実は内臓が冷えているタイプ
このタイプの人は、血液の流れが滞っているため、内臓が冷えているのが特徴です。具体的な対策としては、まずはお腹や腰まわり、そしてお尻を温めて。お腹は意識して腹巻きをしている人が多い反面、脂肪の多いお尻は意外と冷えています。
タイプD……
いつも手足が冷えているタイプ
水分のめぐりが悪いので、ぜひ運動を取り入れて汗をかくようにしましょう。有酸素運動や筋トレ、何でも構いません。サウナやホットヨガで汗をかくという方法もありますが、体質改善や自律神経を整えるためには、なるべく自分で動いて発汗したほうが効果的です。
出典:『ズボラさんでもこれなら無理なく続く はじめての温活』(宝島社)
体を温める食べ物と冷やす食べ物とは?
「温活フード」「温活レシピ」といった言葉を目にするようになった昨今。温活と食べ物には密接な関係があります。体を温める食材としてイメージしやすいのがしょうが、唐辛子ですが、体を温める食材を摂ればそれでいいということではないようです。
「薬膳の考えでは食材を、体を強く温めるモノ(熱性)、緩やかに温めるモノ(温性)、温めも冷やしもしないモノ(平性)、さましやすいモノ(涼性)、冷やすモノ(寒性)と5つに分類しています。この5つの食材をバランス良く食べることが大切です。体に熱がこもりやすい夏場は冷房で外側から冷やすのではなく、トマトなどの夏野菜を食べ内側から体を冷ますといいように、季節によってもどんな食材を摂るとベストであるのかということも変わってきます。
気温が下がり、体が冷えやすくなる冬には、根菜を入れた鍋がおすすめです。鍋は野菜を多く食べられることもメリットの一つ。発酵食品も体を温めてくれますので味噌やチーズをトッピングするとより効果的ですね。
ただ食事を取る上で注意していただきたいのが、いくら体を温めたいからといって、温める食材だけを摂らないことです。温めることだけに意識を向けると、体に熱がこもりがちに。ご自身の体調を見ながら旬の食材を上手に取り入れて、バランスよい食事を心がけましょう」
続いて、すべての「冷え」タイプの人が実践できる、温活習慣の取り入れ方を解説していただきました。
日々の生活に取り入れたい、「温活」を意識した1日の過ごし方
温活習慣を取り入れた過ごし方とは、どのような暮らしなのでしょうか? ここでは会社に出勤している女性の1日をモデルケースとして、解説していただきました。
【起床】朝日を浴びて、白湯を飲む
「朝起きたらまずはカーテンを開けましょう。太陽の光を浴びることで目覚めやすくなるとともに体内時計もリセットされます。これによって夜の睡眠の質も高まります。続いて、食べ物や飲み物を体内に取り入れる前に、まずは歯磨きを! 夜寝ている間に増えた細菌を体の外に出してから、飲食をすることが大切です。そして、白湯をいただき体を温めて1日をスタートしましょう」
【朝シャワー】熱めのシャワーで血流を良くする
「温度は42℃程度の少し熱めの設定で、顔からではなく首の後ろにシャワーをあててください。首の後ろには大椎(だいつい)という体温調節に関わるツボがあります。大椎を刺激することにより体が温められ、血流を良くし交感神経を高められるので、快適に目覚めることができます」
【朝食】体を温めるには和食が理想的
最近では朝食にスムージーを飲む方が増えています。野菜をたっぷり摂れるというメリットはありますが、温活の観点からは、避けたいメニューのようです。
「スムージーが悪いというわけではありません。これから活動していく朝の時間帯に、冷たい食事を摂ることは避けたいところです。朝食には野菜の入った温かいスープやお味噌汁がおすすめです。また主食は、体を冷やす小麦粉を使ったパンよりもお米が理想的ですね。和食は温活の観点から、とても優秀な朝食と言えます」
これから体を動かしていきたいタイミングにいただく朝食に、和食は最適です。
【出勤】3首を冷やさない服装に
「『3首(首、手首、足首)とお腹、腰』を意識し保温してください」
1.首もと
「首を冷やすと、風邪を引きやすくなってしまいます。冬はハイネックの洋服や、マフラーを着用しましょう。春さきや夏場でも軽めのストールを身に付けていると良いでしょう」
2.手首
「特に指先が冷えるという方には手袋をおすすめします。室内では手首を覆うことができる長袖で手首を温めましょう」
3.足首
「底冷えも気になる足元は足首まで覆われる靴下を履くことが効果的です。夏場でも体温が低い人は、靴下を履き、体温を上げることを心がけましょう」
4.お腹と腰
「お腹と腰を同時に温められる腹巻を着用しましょう。体の中心を温めることで体全体への血の巡りを改善する働きがあります。脂肪の多いお尻も冷えやすくなりがちな部位です。その場合は毛糸のパンツで下腹部全体を温めると良いでしょう。また、スタイルをよく見せるためにと過度に体を締め付ける服装や下着もおすすめできません。締め付けることにより、血流の巡りが悪くなり結果として体を冷やしてしまうからです」
【通勤とデスクワーク】適度な運動を心がける
「通勤中は運動不足を解消する良いタイミングです。エレベーターは使わず階段を上る、1駅分手前で下車して会社まで歩いてみるなど、運動する機会を増やしましょう。体を動かすことで筋肉量が増え、体温上昇に効果的です。デスクワーク中心の人は、足元が冷えるためひざ掛けを活用して下半身を温めてください。夏もしっかりとエアコン対策をしましょう。また、1時間ごとに一度席を立ち、軽いストレッチをするだけでも血流の流れを促進するのに効果的です。
最近ではテレワークをする人も増え、運動量が極端に減っている人も多く、不調を訴える人も多くいます。そんな場合には、1日40分から1時間くらいの軽いウォーキングがおすすめです。外気を受けることで気分もリフレッシュし、ストレス軽減にもなります。外出がむずかしい人は、ネットでできる短時間のエクササイズをしてみるのはいかがでしょうか? とくに効果的なのがスクワットです。スクワットは、体の中でももっとも大きな筋肉である太ももの筋肉に効くため、筋肉量を増やすのに最適です。筋肉量が増えることにより熱の生産量を増やし冷えにくい体になります。無理はせず、毎日少しの時間でも続けて習慣にしていけるといいですね」
【ランチタイム】冷えが気になるときは温かい蕎麦がベスト
「パスタにサラダ、お蕎麦など外食で食べるランチは冷える食べ物が多くなります。ただ日中は脳も体もフル稼働しているので、クールダウンすることを考えると、必ずしもNGというわけではありません。体が冷えていると感じる場合は、かけ蕎麦など温かいメニューを選んでください」
【午後のオフィスタイム】体を温める飲み物を選ぶ
疲れも出てきて眠くなりがちなお昼すぎ、ついコーヒーを多く摂りすぎていませんか?
「コーヒーに含まれるカフェインは体を冷やしてしまいます。代わりにルイボスティーやシナモンティーをおすすめします。会社のデスクにシナモンパウダーを常備しておいて、温かい紅茶にかけていただくといいですよ。白砂糖も冷える食材です。おやつをいただく場合、小麦とお砂糖たっぷりのパンケーキやクッキーなどは控えたいですね。ナッツ類が理想です」
【夕食】体を労わりながら食事を楽しむ
仕事上がりにビールを一杯飲んで緩みたい方も多いでしょう。しかし、キンキンに冷えたビールはやはり体を冷やします。
「何杯も飲まずに最初の一杯にとどめ、その後は熱燗をたしなむ程度にいただくのがおすすめです。日本酒は体を温める米と米麹で作られているため血流が促進します。おつまみや食事は肉類や鍋がおすすめです。冷たい飲み物だけではなく温かいお食事とセットにするといいですね。アルコールは、体を労わりながらほどほどに楽しみましょう」
【入浴】心と体をリラックス
「最近ではシャワーですませる人も多いですが、温活習慣を意識するのであれば、湯船に入っていただきたいですね。湯船に浸かることは、以下の効果があります」
・温熱作用
「体温を上げることで毛細血管が広がり、血流が良くなります。体中に酸素が行き渡ります。それにより新陳代謝が高まり老廃物が排出され体のこりなども軽減されます」
・静水圧作用
「湯船に首まで使った場合に、体にかかる水圧は1トンとも言われています。水圧がかかることで血流が促進され、血の巡りが良くなり、むくみの解消になります」
・浮力作用
「水中での体重は、普段の10分の1程度になります。日中に疲れた筋肉や関節への負担を減らすことによりリラックスするのです」
「入浴は寝る60分から90分前に、15分程度入りましょう。温度は38℃から40℃位がちょうど良いです。熱すぎないお湯につかることで副交感神経が優位に働き、よく眠れるようになります。もしもぬるいと感じる場合は炭酸入りの入浴剤を入れてみてください。炭酸は血管を広げて血流を良くしてくれますので、内側から温まりますよ」
【就寝】睡眠で一日をリセット
「寝る前には激しい運動は避けて、軽くストレッチしましょう。ストレッチをすることで筋肉を緩め血流をよくするとともに、リラックス効果も得られるので睡眠の質が良くなります。睡眠時の衣服は、ゆったりとして締め付けのないものを選びましょう。また、寝ている間に手足から熱を放熱するので、靴下を履いて寝ることはおすすめしません。どうしても体が冷えてしまう場合は、足首を温めるレッグウォーマーを着用しましょう。
入浴で温まった深部体温が下がるタイミングで就寝することが睡眠の質を高めます。このために、就寝60分から90分前に入浴することが大事なのです」
「温活」はバランスが大切
温活というと体温を上げることや、体を温める事に着目しがちですが、川崎さんは温めることだけに偏らないようにと、バランスをとても大切にしています。
「例えば、真夏の炎天下にもかかわらず体を冷やさないようにと我慢して冷房器具を一切使わないと熱中症を引き起こします。また、身体を温める食材ばかりを摂り続けると、皮膚が乾燥してしまいます。体を冷ます食材は、潤いを与えてくれる食材でもあるのです。就寝時も電気毛布で温め続けるのではなく、入浴により温めた体を冷ましていくことにより、日中働き続けた脳と体を休めてあげる事がとても大切なのです。体を温めること、冷やさないことに目を向けすぎては不調をきたすこともあるため、適正な温度を保つ正しい知識を持つことが大切です。まずは、ご紹介した『温活』を意識した1日の過ごし方より、『これなら取り入れていけるかも』と思えるものから少しずつ初めてみてはいかがでしょうか」
「温活」は、無理せず気持ちよく続けていけることがとても大切です。温活指導士直伝の「温活」の知識が、生活習慣を見直すきっかけにしていきましょう。
プロフィール
温活指導士 / 川崎真澄
日本温活協会の本部指導員として「温活士」の育成を努めるとともに、メディアへの情報提供を通し温活の啓蒙に取り組む。鍼灸院「グラン横浜スパイアス院」院長、鍼灸師、医薬品登録販売者、認定フェムテックエキスパート。日本鍼灸協会の代表理事を務め、世界初の “浴びるお灸” を開発、鍼灸の新たな活用方法を研究する。また大学、専門学校、企業公演をはじめ国内のみならず海外の技術者にも指導を行う。
『冷え知らず先生が教える 温活百科』川崎真澄 共著(ワン・パブリッシング)
『ズボラさんでもこれなら無理なく続く はじめての温活』日本温活協会監修(宝島社)