ここ数年で冷蔵庫がますます進化を遂げている。もう省エネ性能の向上にも“上げ止まり感”があるエアコンに比べて、まだまだ伸びしろがあるのが冷蔵庫だ。省エネ性能だけでなく、キッチンの中心的な存在として、調理をサポートする機能を搭載したモデルも出てきている。
このようにハイエンドなファミリー向けモデルの機能が進化する一方で、コンパクトな単身・少人数世帯向けモデルも別の方向性で進化をし始めた。従来は各メーカーもファミリー向けの大容量モデルにしか機能やデザインに注力していなかったが、機能面はさておき、コンパクトモデルにもデザイン性を追求する流れが出てきたのだ。今回は、そんな冷蔵庫の新潮流を生み出す旗手となる冷蔵庫を紹介しよう。
ハイエンド調理サポートモデル その1
音声で献立相談ができる“AIoT冷蔵庫”
シャープ
SJ-TF49C(485Lモデル)
実売価格37万3670円
献立や買物のお悩みに冷蔵庫が答えてくれる「COCORO KITCHEN(ココロキッチン)」に対応する“AIoT(AI+IoT)冷蔵庫”。Wi-Fi機能を内蔵し、自宅のWi-Fiルーター経由でクラウドサーバーに接続することで、音声を使った献立相談や買い物メモといった機能を利用できる。冷蔵庫の中にある食材と作りたいカテゴリーなどを指定することで、毎日のお悩みである献立を決められるのがうれしいポイント。レシピを決定したらスマホやタブレットに転送してくれるので、そのまま買い物リストとしても使える。
シャープならではの「メガフリーザー」(小分け収納しやすい構造になっている大容量冷凍庫)を採用していないなど、物足りない部分もある。とはいえ、来たるべき「AIoT時代」に向けて着実な一歩を踏み出しており、今後の進化も楽しみなシリーズだ。
ハイエンド調理サポートモデル その2
冷凍食品の劣化を抑えつつ手軽に解凍できる
三菱電機
置けるスマート大容量 MR-WX47A(470Lモデル)
実売価格21万7920円
「過冷却現象」を使って約-7℃で食品を瞬間的に凍らせる「切れちゃう瞬冷凍」機能を搭載する冷蔵庫。同じ過冷却現象を応用することで、約-3℃~0℃の氷点下でも食品を凍らせずに保存できる「氷点下ストッカーD」も搭載している。切れちゃう瞬冷凍の魅力の一つは、凍った食材をそのまま包丁で切ったりスプーンですくったりできるという点にある。ひじきの煮物などの常備菜を凍らせておけば、お弁当やおかず用に少しだけすくって使うといった使い方ができる。
もう1つ魅力なのが、氷点下ストッカーDの「解凍機能」だ。冷凍した食材を氷点下ストッカールームに入れ、タッチパネルで「解凍モード」を選択すると、解凍開始から約90分で包丁で切れる硬さまで解凍してくれるというもの。これまで冷凍した食品の解凍というと電子レンジの解凍機能を利用したり、流水解凍したり、常温もしくは冷蔵室内で解凍したりと、それぞれさまざまな工夫をこらしてきたと思う。その点、本機ではボタンを押すだけで、食品の劣化を抑えつつ解凍できるのが大きなメリット。ある意味、冷蔵の機能にプラスして、調理家電の1機能を搭載しているといっても過言ではないだろう。
また、近年は野菜から出るニオイ成分などを触媒で炭酸ガスに分解する機能を搭載するモデルが増えている。野菜室内の炭酸ガス濃度がアップすることで、野菜の呼吸を抑制……つまり野菜の活動を抑えて“スリープ状態”にすることで劣化を防ぐというものだ。本機の場合はLEDによって葉物野菜の光合成を促進し、ビタミンCなどを増やす効果をうたっているが、こうした野菜の鮮度を保つ仕組みにも注目したいところだ。
少人数世帯向けハイデザインモデル その1
引っ越しても安心の「どっちもドア」採用
シャープ SJ-GD14C(137Lモデル)
実売価格4万6490円
シャープでは300Lクラスから400Lクラスで左開きと右開きのどちらにも対応する「どっちもドア」を採用している。が、こちらのモデルはマイナスドライバー1本でユーザーが自らドアの開閉方向を変えられる「つけかえどっちもドア」対応の容量137Lの小型冷蔵庫だ。転居時に冷蔵庫の配置が変わっても安心して使えるのがうれしい。
一人暮らし向けのコンパクトモデルながら、ドアにはガラストップを採用し、ハンドル形状の細部にまでこだわっている。カラーはピュアブラック、メタリックベージュ、クリアホワイトの3色を用意している。
少人数世帯向けハイデザインモデル その2
ステンレス扉を採用した海外モデルのようなデザインが魅力
アクア AQR-S27F(272Lモデル)
実売価格12万6940円
スタイリッシュなステンレスドアを採用した「COOL Stainlessシリーズ」(現行では4モデルをラインアップ)のうちの1モデル。単身者から夫婦、ファミリーでも使える272Lモデルのほか、コンパクトな容量157Lの「AQR-U16F」(実売価格5万990円)と184Lの「AQR-U18F」(実売価格6万4490円)、ファミリー向けの355Lモデル「AQR-S36F」(実売価格11万5640円)までそろえている。
AQR-S36Fを除く3モデルは本格派オーブンレンジも置ける「ワイド52.5cm耐熱トップテーブル」を採用。天面が100℃耐熱テーブルになっているため、各社の本格派オーブンレンジも安心して設置できる。自動製氷機能を搭載するうえ、給水経路をすべて洗えるのも注目したいポイントの一つだ。
少人数世帯向けハイデザインモデル その3
欧米スタイルのデザインと冷凍室の大きさが魅力
ハイアール
JR-NF468A(468Lモデル)
実売価格11万880円
一般の家電量販店で購入できる冷蔵庫の中では、ハイアールの「JR-NF468A」はかなり“とがった”デザインのモデルだ。国内では5ドアや6ドアなどドア数が多いモデルが中心になっているが、欧米などでは500L、600Lクラスでも2ドアなどのシンプルなモデルが少なくない。左ドアはすべて冷凍室、右ドアはすべて冷蔵室といった具合だ。
JR-NF468Aの場合、一般的な日本の冷蔵庫と同様に「上が冷蔵室、下が冷凍室」という配置になっているが、扉はそれぞれ観音開き(フレンチドア)の4ドアを採用。海外モデルの多くが採用しているステンレストップではなくガラストップだが、国内メーカー製品とはひと味違うデザインを求める人にオススメだ。
ただし外形寸法は幅833×奥行き678mmと結構なスペースが必要になる。マンションなどではエントランスからエレベーター、外廊下、自宅の玄関や廊下などの搬入経路を通れない場合があることだけ注意したい。
番外編
中容量だけど機能はハイエンド! を狙うならこれ
日立
真空チルド R-S2700GV(265Lモデル)
実売価格9万2420円
1人暮らしや夫婦2人暮らし世帯の場合、物理的に大容量冷蔵庫を置けるスペースがないという場合も少なくない。でも「切れちゃう瞬冷凍」や「微凍結パーシャル」などの食品が長持ちする機能を活用したいという人は多いのではないだろうか。
残念ながら、上記のような機能は、401L以上の大容量モデルに搭載することが多く、それ以下の中容量モデルにはほとんど搭載されていないのが実情だ。そんななか、R-S2700GVは、400Lを切る中容量モデルながら、うれしいことに、日立が最大の売りとしている「真空チルド」機能を搭載している。真空チルドは約0.8気圧まで減圧して庫内の空気(酸素)を減らすことで、食品の酸化を防ぐチルドルームのこと。0℃付近のチルド温度帯(このモデルの設定温度は1℃)で肉や魚などの食品を長持ちさせたいという人にオススメの機能だ。
なお、ここで紹介しているR-S2700GVは2016年6月発売モデルで在庫限りとなっているので、「コンパクトだけど高機能なモデルがほしい」という人は急いだ方がよさそうだ。