ドウシシャ「電動ふわふわとろ雪かき氷器」 vs ハイアール「アイスデリ プラス」 第3回
夏の“納涼家電”対決として前回はドウシシャのかき氷メーカー「ふわふわとろ雪かき氷 DTY-17BK」を紹介した。今回は、5月に発売されたハイアールのアイスクリームメーカー「アイスデリ プラス」を紹介したい。
【メリット1】 事前冷却が不要でアイスが作り続けられる!
アイスデリ プラスはこれまでの家庭向けアイスクリームメーカーにはない特徴を持った画期的な製品だ。その最大の特徴は「事前冷却が不要」な点にある。
アイスクリームメーカーの仕組みは、冷却容器の中にアイスクリームやシャーベットの素を入れ、ヘラなどでかき混ぜて冷やし固めていくというもの。一般的なアイスクリームメーカーは、冷却容器を事前に冷凍庫で冷やしておき、食材の冷却に用いる。氷に塩を入れて温度を下げることで(氷に塩を入れると「凝固点降下」作用によって-21.3℃まで温度が下がる)アイスクリーム作りに利用するという、昔ながらの作り方に近い。誤解を恐れずに言えば、現状のアイスデリシリーズ以外の家庭用アイスクリームメーカーは、大昔からのやり方をそのまま踏襲しただけの製品と言える。
アイスデリシリーズが事前冷却不要なのは、ペルチェ式冷却器によって容器内の食材をその都度冷却できるためだ。事前冷却式の場合は、事前に約8時間ほど冷却容器を冷凍庫内で冷却しておかなければならない。さらに一度アイスクリーム作りに使うと、次に使うまでまた8時間ほど待たなければならないのだ。その点、アイスデリシリーズは冷却器を内蔵しているため、事前冷却なしにアイスクリームやシャーベットを作り続けることができる。これは真夏の暑い日に、子供のたくさんいる家庭ではうれしいポイントではないだろうか。
【メリット2】 材料を入れてスタートしたらあとは待つだけ
使い方はとてもシンプルだ。本体にACアダプターを接続して電源をオンにし、食材を冷却容器の中に入れてフタをしてメニューを選択。スタートすると回転ブレードが容器内の食材をかき混ぜ、冷やし固めていくとできあがる。できあがり時間は食材の量や室温によって異なるが、約40分~2時間ほどだ。
アイスデリシリーズは、エントリーモデルの「アイスデリ」と、メニュー(仕上がり温度)が豊富な上位モデルの「アイスデリ プラス」、大容量モデルの「アイスデリ グランデ」の3モデルをラインアップ。アイスデリとアイスデリ グランデはアイスクリーム向きの「かため」とソフトクリーム、シャーベットなどに向く「やわらか」の2メニューだが、アイスデリ プラスのみ氷点下メニューの「シャーベット」、「フローズン」、0℃以上の「ジュレ」、「冷スープ」を加えた全6メニューを用意しているのが特徴だ。
まずはアイスクリームを作ってみよう。レシピはとてもシンプルだが、材料を火にかけたり泡立てたりと、それなりに手間がかかる。
まず卵黄3個とグラニュー糖大さじ4をしっかり混ぜ合わせた後に牛乳100mlを入れてさらに混ぜ、小鍋に入れて弱火にかけてとろみが付くまで温める。とろみが付いたらボウルに移し替え、ボウルの底を氷水に当てて冷やす。
続いて別のボウルで生クリーム200mlを角が立つくらいまで泡立て、先ほど作った卵液と混ぜ、バニラエッセンス1滴を加えてアイスデリ プラスにセット。メニューから「01:かため」を選んでスタートしたら、あとは待つだけだ。
1時間ほど経つとできあがった。最初に口にしたときの感想は「めちゃくちゃクリーミーでおいしい!……でも甘い」という印象だった。スーパーなどで売られている製品はさまざまな添加物が入っているため、混じりけのない本物のアイスクリームを食べる機会というのはなかなかないと思う。その意味で、本機の味は鮮烈だった。小学生のころ、初めて作ったアイスクリームの感動がよみがえったようなイメージだ。
さらに、これにチョコレートクッキーを混ぜれば「クッキー&クリーム」になるし、チョコスプレーを振りかけるのも楽しい。シリアルなどを混ぜるのもオススメだ。レシピ通りに作ったアイスクリームは筆者にとって甘すぎたが、好みに合わせてグラニュー糖の分量を変えるだけで好きな甘さに調節できるのも、手作りならではの楽しみだろう。
とはいえ、実はアイスクリーム作りは小麦粉やバターを使わないだけで、生クリームを泡立てる、卵が固まらないように火を通すなど、菓子作りの基礎が必要になる点で、ハードルはやや高い。その手間を煩わしいと感じる人にオススメしたいのが、「シャーベット」作りだ。たとえば、「ポンジュース」や「ファンタ」、あるいはヨーグルトスムージーでもいい。好みのジュースを入れ、「03:シャーベット」メニューを選んで待つだけでできあがる。
アイスクリーム作りは卵から卵黄をより分けたり、泡立て器や複数のボウルを用意する必要があるため、洗い物も増えてしまう。しかし、シャーベット作りならジュースを注ぎ入れるだけで済むので、「洗い物をしたくない」というお父さんお母さんのニーズにも応えてくれる。より手抜きしたいときにはかなりオススメのメニューだ。
【メリット3】 工夫次第で「冷製調理」にも活躍する
筆者はアイスデリシリーズの発表会に出席し、フードスタイリストのマロンさん考案の冷製料理を試食する機会も得た。「01:かため」で作ったクリーミーソースを載せた「コブサラダ&クリーミーソース」と、「05:ジュレ」で作ったトマトとバジルのジュレ状ソースを添えた「冷製パスタトマトのジュレ添え」だ。このように、工夫次第でアイスクリームやシャーベットなどの冷製スイーツだけでなく、冷製調理にも活用できる。
実際に筆者も試してみることにした。前回はそうめんのつゆを凍らせてかき氷にしたものをゆでたそうめんに載せたので、今回は同じくそうめんのつゆを「04:フローズン」で冷やしてみた。
前回のかき氷器でつゆをかき氷にするというアイデアも悪くなかったが、本機でフローズンにするとさらにおいしく感じた。氷が溶けてもつゆが薄まらないだけでなく、口当たりもかき氷に比べてなめらかだ(もちろん、かき氷のシャリシャリした口当たりも楽しい)。かき氷そうめんのような新感覚というより、通常のそうめんのグレードアップ版という印象を受けた。
冷しゃぶサラダのドレッシングにも活用してみた。こちらはポン酢を使って手作りした「ポン酢ジュレ」を「03:シャーベット」で冷やしてみた。フローズンは想像よりも溶けている感じだったのだが、シャーベットにするとさすがに凍りすぎの印象あり。とはいえ、肉とレタスでポン酢シャーベットを巻くという感覚もなかなか新しい楽しさだった。
【デメリット】 調理時間の目安の表示がなく、手入れにコツが必要
アイスデリ プラスのデメリットの1つが、調理時間の目安が分からないことだ。大まかに「40分~2時間」とあるが、室温さえ分かれば残り時間の目安はある程度類推できるはず。もちろん液晶ディスプレイなどを別途搭載する必要があるのでコストアップにつながってしまうが、30分経過しても、1時間経過しても、いつ終わるのか分からないのは少しストレスに感じる。今後新モデルを出すときには、ぜひ残り時間表示を追加してほしい。
もう1点は、手入れにコツが必要になる点だ。アイスデリシリーズは本体と容器が一体化しているため、本体の機器部分を濡らさないようにしながら洗わなければならない。冷却器を取り外せる構造にするのは難しいと思うので仕方がないが、ここは注意してほしい点だ。もう1つ、回転ブレードを回すモーターがフタの方に付いているので、フタを洗う際にはモーター部を取り外してから洗わなければならない。フタもそのままでは丸洗いできないので、注意すべきだ。
【まとめ】メンテナンスさえ気をつければ夏を満喫できる!
筆者はさまざまな“一芸調理家電”を試してきたが、アイスデリシリーズはそのなかでもピカイチのモデルだと感じた。調理家電は「手軽に作れること」と「メンテナンスが容易なこと」の2つが重要になる。アイスクリームは作るのが面倒だし、洗う際にも少しコツがいるのも確かだ。とはいえ、一度慣れてしまえばメンテナンスは難しくないし、作るのが面倒なときには、ジュースやヨーグルトスムージーだけを投入してシャーベットにしても十分に楽しめる。
前回紹介したドウシシャ「電動ふわふわとろ雪かき氷器」はかき氷だけを楽しめる純粋な“一芸家電”だが、今回のアイスデリ プラスは冷製調理にも活用できるのがうれしい。毎日のように料理をしている人なら、想像力をかき立てられるのではないだろうか。夏の暑い日を楽しみながら涼しくできる製品として、かなりオススメだ。