5.5合炊き高級炊飯器の主要5モデルの性能や使い勝手を徹底チェックする検証連載。今回は、各炊飯器の「独自機能」と「設置性」を見ていきたいと思います。
高級炊飯器の個性的な機能と設置のしやすさを徹底的に比較!
高級炊飯器は、おいしいごはんの炊き上がりを実現する様々な機能はもちろん、白米だけでなく玄米や麦飯などをおいしく炊き上げる炊飯モードの多彩さも魅力。またこれらの機種は、使い勝手の良さにつながる便利機能を搭載しています。それらの「独自機能」のなかに生活スタイルに合っているものがあれば、購入のメリットはより高まります。
一方で、様々な機構を搭載し、内釜も素材にこだわった結果、サイズ・重量が大型化傾向に。キッチンのサイズによっては置きづらい機種も出てきます。そこで今回は、各機種の大きさや重量のほか、設置場所を左右する蒸気の量などを比較し、「設置性」を吟味していきます。
【関連記事】
【徹底比較】ついに「炊飯器の結論」が見えた! 主要5モデル・10項目詳細テストを総まとめ
炊飯器徹底比較 検証する機種はコチラ
エントリーその1
発熱性・蓄熱性に優れた南部鉄器の羽釜を採用し大火力で炊き上げる
↑画像クリックで楽天のサイトにジャンプします
象印
圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』
“南部鉄器 極め羽釜” NW-AT10
実売価格12万9600円
発熱性・蓄熱性に優れた南部鉄器の羽釜を内釜に使用した炊飯器。大きく伸びた羽根で側面ヒーターの熱を釜内に伝え、最大1450Wの大火力と1.5気圧の圧力炊飯でごはんをふっくらモチモチに炊き上げる。また、前回炊いたごはんの感想を入力することで、121通りのなかから好みの食感に近づける機能「わが家炊き」の炊き分け範囲を拡大。従来機種より固めに、よりモチモチに炊けるなど、幅広い食感に炊き分けられる。
SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:151wh●保温1時間あたりの消費電力量:17.1Wh●加熱方式:プレミアム対流●内釜:南部鉄器 極め羽釜●サイズ/質量:約W305×H245×D400mm/約11.5kg
エントリーその2
「Wおどり炊き」に「加圧追い炊き」を加え、甘みとモチモチ感がアップ
↑画像クリックで楽天のサイトにジャンプします
パナソニック
スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器
Wおどり炊き SR-SPX107
実売価格9万7980円
IHの通電切り替えで激しい熱対流を生み出す「大火力おどり炊き」と、釜内を加圧状態から一気に減圧し激しい対流を生み出す「可変圧力おどり炊き」を組み合わせた「Wおどり炊き」を搭載。熱と水分を米に均一に行き渡らせ、ふっくらモチモチの銀シャリに炊き上げる。炊飯工程の終盤にさらに加圧して釜内を高温にする「加圧追い炊き」機能を新たに採用し、ごはんの甘みとモチモチ感がさらにアップした。50銘柄の銘柄炊き分け機能を搭載するほか、釜内を高温洗浄できる「お手入れ機能」も新採用。
SPEC●炊飯容量:0.5〜5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:160wh●保温1時間あたりの消費電力量:14.4Wh●加熱方式:6段全面IH●内釜:ダイヤモンド竃(かまど)釜●サイズ/質量:W266×H233×D338mm/7.0kg
エントリーその3
発熱効率が高い「本炭釜」と連続沸騰技術でかまど炊きの味を再現
↑画像クリックで楽天のサイトにジャンプします
三菱電機
実売価格11万9760円
IHの発熱効率が高い純度99.9%の炭素材を使った「本炭釜」採用モデル。内釜全体の発熱と噴きこぼれのない連続沸騰技術により、粒感のいいふっくらとしたかまど炊きの味を再現する。沸騰力の向上と高断熱構造の強化で火力をさらにアップ。蒸気口に新搭載した密封弁が蒸らし時の蒸気の流出を抑え、潤いたっぷりのごはんに仕上げる。15通りの食感炊き分け機能「炊分け名人」に加え、35銘柄に対応する「銘柄芳潤炊き」機能も持つ。
SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:162wh●保温1時間あたりの消費電力量:17.2Wh●加熱方式:7重全面加熱+連続沸騰●内釜:本炭釜●サイズ/質量:W285×H249×D320mm/約5.7kg
エントリーその4
高温で炊き上げて高温で蒸らし、甘みと弾力の強いごはんに仕上げる
↑画像クリックで楽天のサイトにジャンプします
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
THE炊きたて JPX-102X
実売価格7万9800円
内釜に遠赤効果の高い釉薬を塗った土鍋を採用し、さらに本物の土のかまど「遠赤大土かまど」を本体内に装備。土鍋と土かまどの二重発熱構造と可変圧力によって高温で炊き上げ、200℃以上の「高温蒸らし」で、甘みと弾力の強いご飯に仕上げる。しゃっきりからモチモチまで、好みの粘り加減に調整できるほか、土鍋のおこげが味わえる3段階の火加減調節も可能。「押麦メニュー」と「もち麦メニュー」の2種類の麦めしメニューも搭載する。
SPEC●炊飯容量:1.0~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:148wh●保温1時間あたりの消費電力量:18.3Wh●加熱方式:土鍋圧力IH + 可変W圧力IH●内釜:プレミアム本土鍋(四日市萬古焼)●サイズ/質量:約W265×H233×D309mm/約7.4kg
エントリーその5
内釜の底に鉄の粒子を打ち込み効率的な発熱と高い伝熱性を両立
↑画像クリックで楽天のサイトにジャンプします
日立
圧力スチーム炊き
ふっくら御膳 RZ-AW3000M
実売価格10万6790円
水温を60℃以下で米にしっかり吸水させる「高温浸し」と独自の圧力スチーム技術を搭載。ふっくら艶やかで甘み豊かなごはんに炊き上げる。アルミ合金の内釜の底に発熱性の高い鉄の粒子を打ち込むことで効率的な発熱と高い伝熱性を両立し、内釜全体に素早く熱を伝えることで炊きムラを抑える。0.5合でもおいしく炊き上げる「少量炊き」機能も特徴。「蒸気カット」機能付きで、キッチン棚の中で使っても棚の天面が濡れず、設置場所の自由度が高い。
SPEC●炊飯容量:0.5~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:145wh●保温1時間あたりの消費電力量:13.7Wh●加熱方式:圧力スチーム炊き●内釜:高伝熱 打込鉄・釜●サイズ/質量:約W268×H237×D352mm/約6.6kg
炊飯器徹底比較 検証内容はコチラ
「独自機能」は各炊飯器に搭載されている、ごはんのおいしさにつながる独自の機能や技術、炊飯のバリエーションを広げる機能などをチェックします。また、使い勝手向上やお手入れの省手間につながる便利機能も見ていきます。
「設置性」に関しては、各製品の横幅と奥行き、重さを確認します。また、炊飯中の蒸気の出方もチェック。さらに、設置性を高める独自の工夫があれば、それもチェックしていきます。
炊飯器徹底比較 検証結果はコチラ
象印
圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』
“南部鉄器 極め羽釜” NW-AT10
実売価格12万9600円
<独自機能>
121種類から“わが家の好み”に合う食感に調整できる機能が唯一無二!
本機で最もユニークな機能は、炊飯器がその家庭の好みの食感を学習し、121通りのなかから最適な食感にチューニングする「わが家炊き」機能です。最新モデルでは食感炊き分けできるパターンは121通りと従来機種通りながら、よりもちもちやよりやわらかなど、炊き分けできる範囲が拡大しました。
また、炊飯メニューでの「しゃっきり」から「もちもち」までの5通りの食感に満足できない場合は、「しゃっきり」度合いをもう一段階上げたり、「もちもち」度合いをもう一段階上げる設定に変更することもできます。
本機に搭載の玄米メニューは、1.5気圧の高圧力、112℃の高温で加熱し、玄米が柔らかくもっちりした食感に炊き上がります。また、時間をかけた吸水で米のうまみを引き出す「熟成」メニューが「白米」だけでなく「玄米」でも利用可能。「熟成」メニューでは、玄米を活性化させ、アミノ酸の一種、ギャバ(ガンマ-アミノ酪酸)の量が約1.4倍に増加します。さらに、冷めてもごはんが硬くなりにくい「お弁当」モードも搭載しています。
内釜には蓄熱性と発熱性の高い南部鉄器を採用。釜底だけでなく側面、ふたからも加熱し、広くて浅い釜の形状との組み合わせで、大火力が内釜全体にムラなく伝わります。鉄器ならではの「鉄器おこげ」や「湯の子」(おこげのおかゆ)も楽しめます。
また、前回の「操作性」チェックでも触れましたが、本機の外ぶたを手動で閉める際に、「カチッ」とロックがかかるまで押し込むのには、やや力が必要。しかし、本機はボタンを押すと自動で外ぶたが閉まる「スマートクローズ」機能が付いているので、年配の方が使う場合にはとても有用だと思います。
<設置性>
本体が大型でずしりと重いため設置場所の固定はマスト
本機の横幅は約30.5cmで奥行きは約40cmと他機種に比べてやや大型。本体重量も約11.5kgと最も重く、次に重いタイガーと比べても約4.1kgの差があります。実際に持ってみると、男性でも軽々とは持ち運べません。置き場所をしょっちゅう変えるのは、非力な女性や高齢者には難しそうです。
また、炊飯中の最も火力が強い時間帯は、蒸気口から水蒸気が大量に噴出します。設置する際は上部に十分な空間がある場所を選ぶ必要があります(ちなみに、蒸気量を約80%カットする「蒸気セーブ」モードも搭載しています)。
エントリーその2
パナソニック
スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器
Wおどり炊き SR-SPX107
実売価格9万7980円
<独自機能>
50種類もの銘柄に対応する炊き分け機能が魅力!
「Wおどり炊き」や「220℃IHスチーム」、新技術の「加圧追い炊き」でごはんの甘みを引き出し、柔らかく弾力ある食感に仕上げる本機は、充実した炊き分け機能も大きな特徴。銘柄炊き分けは50銘柄に対応し、全国各地の銘柄を食べ比べしたい人には極めて魅力的な1台といえます。
また、「銀シャリ」モードでの食感炊き分けは、圧力をかける時間や投入するスチームの温度などの調整により、10種類の炊き分けが可能です。銘柄炊き分けを選んだ際も、「おすすめ」「かため」「やわらか」の3種の食感に炊き分けられます。
「銀シャリ」モードには、0.5〜1.5合の少ない量をおいしく炊く「少量」モードも搭載されています。ひとり暮らしや夫婦二人暮らしなどで、炊飯量の少ない家庭には便利な機能。ちなみに、筆者は1合を「少量モード」と「銘柄炊き分け/おすすめ」で炊飯しましたが、「銘柄炊き分け/おすすめ」のほうがよりもちもち・柔らかな食感に仕上がりました。様々なモードで試してみて、自分の好みに合った食感を見つけるのも本機の楽しみのひとつです。
そのほか、玄米や雑穀米、発芽米、分づき米の炊飯にも対応。特に玄米は、食感をよりもちもちに炊き上げるモードも搭載しています。ちなみに、パナソニック「Wおどり炊き」シリーズで評価が高いのが、保温中に蒸気を供給してごはんのパサつきを抑える「スチーム保温」機能です。
お手入れの面では、釜内を煮沸するだけでなく「Wおどり炊き」の加圧・減圧の技術を使ってニオイを除去する新機能を搭載。ニオイの低減効果が従来より約28%アップしたそうです。
内釜には軽くて丈夫な「ダイヤモンド竃釜」を採用。釜を構成する素材の中に中空セラミックスの添加量を約30%アップし、断熱性が約10%向上しました。
<設置性>
比較的コンパクトだが蒸気をそれなりに放出するため設置場所を選ぶ
横幅26.6cm、奥行き33.8cmと多機能にしては比較的コンパクトな設計。重量は7.0kgと、5機種のなかでは中間の重さです。ただし、炊飯中の蒸気はそれなりに出るので、レンジ棚など狭い空間や、梁が低い対面式キッチンのカウンターなどに置くと、炊飯器の真上が濡れてしまうので、注意しましょう。
取っ手の軸の部分にしゃもじをセットするポケットが付いているのも、意外に便利です。
エントリーその3
三菱電機
IHジャー炊飯器本炭釜
KAMADO NJ-AW108
実売価格11万9760円
<独自機能>
35種類の銘柄炊き分けと玄米の豊富なモードが目を引く
三菱電機KAMADOは、純度99.9%の炭釜と圧力をかけない炊飯にこだわった機種。そのしゃっきりとした食感は、今回検証したモデルのなかでは極めて独自性が強いです。
また、新モデルから蒸気口下に「密封弁」を新採用。これはかまど炊きで使う重い木ぶたの役割をするそうで、沸騰時は弁が開き、蒸気を逃がして高火力沸騰を持続。蒸らし時は弁が閉じて、みずみずしく潤いのあるごはんに仕上げます。
炊き分け機能では、硬さ5段階×粘り3段階の15通りの食感を選ぶことができます。ちなみにここで「やわらか・もちもち」に炊飯しても、ふっくらもちもちした食感のなかに粒感を残しているのが、同社のこだわりを感じさせます。
銘柄炊き分け機能の「銘柄芳潤炊き」モードでは35の銘柄に対応。さらにそれぞれの銘柄で、硬さ3段階×粘り3段階の計9通りの炊き分けができるのも、ごはんの味にこだわる人にはうれしいポイントです。
そのほか独自機能としては、「麦飯」モードよりじっくり吸水させてふっくら柔らかく炊き上げる「麦飯(芳潤炊き)」モードを搭載。麦飯のパサパサ食感が苦手な人も食べやすい炊き上がりになります。玄米の炊飯メニューも豊富で、柔らかく食べやすい食感に炊き上げる「芳潤炊き(玄米)」モード、ビタミンB1の残存量を増やす「美容玄米」のほか、玄米の「炊込み」も搭載しています。使い勝手の面では、「音声ナビ」機能が付いて、初心者でも安心して使えます。
<設置性>
流線型デザインがインテリアに映えるが蒸気対策は必要!
本体幅は28.5cmで奥行きは32cm、旬の果実など「実りの形」をイメージしたという流線型デザインが斬新です。重さは約5.7kgと5機種中最も軽量。取っ手が付いておらず、持ち運びには両手で持つ必要がありますが、取っ手を省略してすっきりさせたのはデザイン面では正解でしょう。
炊飯中は、やはり蒸気がかなり出ます。レンジ棚のなかなどには置かず、上部に十分な高さがある空間やレンジフード(換気扇)付近で炊飯したほうがいいでしょう。
エントリーその4
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
THE炊きたて JPX-102X
実売価格7万9800円
<独自機能>
おこげのつき方をカンタン調整&モーションセンサーでスタイリッシュに操作!
内釜に土鍋を採用するだけでなく、炊飯器の本体にも土を使ったかまどを内蔵し、高い発熱性と蓄熱性で香り高いごはんに仕上げるのが本機の特徴。「火かげん」キーを使っておこげの程度を調整することができるほか、「仕上り」キーでごはんの粘り調整もできます。
「火かげん」キーを最弱にしてもおこげが付きすぎたり、最強にしてもつかなかったりする場合は、より弱めや強めに設定をシフトすることも可能です。
さらに「麦めし」モードは押麦ともち麦の2種類に対応。それぞれの麦に合わせたプログラムでニオイを抑えて炊飯します。
ちなみに、本機が採用する内釜(土鍋)は三重県四日市市の萬古焼を使用。土鍋ふたも付属し、土鍋をおひつとして使うこともできます。また、人が近づくとタッチパネルを点灯させるモーションセンサーを搭載するのはタイガーのみ。未来的でスタイリッシュなイメージに貢献しています。「音声ガイド」で操作の確認ができるのも便利。
<設置性>
コンパクトかつ落ち着いたデザインだが蒸気量は多く設置場所を選ぶ
本体の横幅は26.5cm、奥行きは30.9cmで、象印を除くとわずかの差ですが、最もコンパクトサイズになっています。一方重さは土鍋、土かまどを採用しているせいか、約7.4kgとやや重め。また、取っ手がないため、移動するときは両手で持つ必要があります。
炊き上がりのおいしさを最優先に考えているため、本機も水蒸気をかなり放出します。本機も上に十分な空間がある場所か、レンジフード(換気扇)の近くでの炊飯がオススメです。
エントリーその5
日立
圧力スチーム炊き
ふっくら御膳 RZ-AW3000M
実売価格10万6790円
<独自機能>
玄米の3通りの食感炊き分けができ、「少量炊飯」モードも便利
本機は内ぶたに「給水レス オートスチーマー」を搭載。炊飯中の蒸気を水に戻して回収し、蒸らしや保温時に再びスチームにしてごはんに潤いを与えます。またこれにより、外に出る蒸気の量を少なくしているのも特徴です。
食感炊き分けは3種類と少なめですが、玄米も3種類の食感に炊き分けられるのはメリット。玄米の「おかゆ」のほか、玄米の「炊込み」メニューを搭載しているのも特徴です。
さらに、少量炊き専用のボタンを搭載し、ボタンを押すだけで少量炊飯に適した炊き方に変えられる点は、1〜2人世帯にはうれしい機能です。
ちなみに、内釜の白米(無洗米・雑穀米・発芽玄米)用の水位線には、「やわらかめ」「かため」に炊くための水位線も表示されていて、ユニークです。
<設置性>
「蒸気カット」機能搭載で設置場所の自由度が圧倒的に高い!
本体幅は26.8cmで奥行きは35.2cmというサイズは、今回検証した中ではパナソニックに近い大きさ。重量は約6.6kgで、三菱電機に次ぐ軽さです。本体に取り付けた「しゃもじ受け」にしゃもじを挿しておけるのも便利です。
他の機種にない設置性での優位点は「蒸気カット」機能を持っていること。これで設置の自由度が圧倒的に高くなります。
炊飯器徹底比較 今回の検証のまとめ
<独自機能>
象印は「わが家の味」を追求でき、パナは「銘柄のおいしさ」を追求できる
今回の検証項目である「独自機能」は、まさに“独自”であるため、それぞれを比較するのは難しいのですが、それでも各メーカーが最上位機種で取り組む“軸”が見えてきました。
そのひとつは「炊き分け」機能。象印は「わが家炊き」機能により、自分の家庭の好みの食感に調整することを可能にしています。また、食事の直後に感想を入力するので、より正確に好みの食感に近づけていけます。デメリットは炊飯器まかせなので、米の銘柄が変わると調整をやり直しする必要があることです。例えば「わが家炊き」でチューニングした結果を何パターンかメモリーできれば、最適なプログラムを呼び戻せて便利かもしれません。
これに対し、パナソニックと三菱電機は「銘柄炊き分け」機能で、様々な米の銘柄を楽しみたい人にアピール。パナソニックは対応する銘柄が多い代わりに、銘柄選択後の食感炊き分けは3通り。一方、三菱電機は、対応銘柄はパナソニックより少ないですが、その銘柄のなかで9通りの炊き分けが可能です。銘柄を指定しない炊飯なら、パナソニックが10通り、三菱電機は15通りの「食感炊き分け」ができます。またタイガーは、3通りの食感調整だけでなく、おこげの具合を3通り(設定を変えれば5通り)に変えられるのが独自の長所。香ばしいごはんが好みなら、選ぶ価値があるモデルです。
「白米以外」では多彩な玄米モードを持つ三菱電機に注目!
「独自機能」でもうひとつの軸は玄米の炊飯。実はとある五つ星お米マイスターが教えてくれたのですが、最上位機種で炊いた玄米は、中位以下のモデルとの味や食感の差が大きく出るそうです。
象印は玄米を通常より柔らかく、栄養価を高めて炊く「熟成メニュー」を搭載。パナソニックは玄米をもちもち食感に炊き上げるメニューを搭載しています。三菱電機は玄米の「芳潤炊き」「美容玄米」など、多彩な玄米炊飯メニューを揃えるほか、「麦飯芳潤」も用意。日立は玄米での食感炊き分けが可能なのがメリットです。
さらに、栄養価の高い麦飯の炊飯には、三菱電機、タイガー、日立が対応。特にタイガーは、押麦ともち麦の2種類に対応しています。
少人数家族にとっては、少量炊飯モードの有無も気になるところ。専用ボタンを搭載した日立が一歩リードで、パナソニックも「銀シャリ」モード内の「少量」メニューで対応しています。
便利機能では、音声アシストとモーションセンサー採用のタイガーが印象的
便利機能では、三菱電機とタイガーの音声アシスト機能は実用的。タイガーはさらに「モーションセンサー」とタッチパネルで新たな操作感をアピールしています。一方象印は、圧力炊飯器のふたを閉める際の使い勝手の悪さを解消する「スマートクローズ」機能を新搭載。パナソニックは、「Wおどり炊き」の加圧・減圧技術を使って内釜などについたニオイの除去効率を高めた「お手入れ」機能を新採用しました。日立は「設置性」の項目で触れた「蒸気カット」が独自機能としても光っています。
<設置性>
設置性では「蒸気カット」機能を持つ日立が一歩リード
設置性を判断する基本要素のサイズ・重量は、象印が他機種よりひと回り大きく重い、という結果に。設置する際は、設置場所をこまごま変えるより、決まった場所に据え付けることになるでしょう。一方、ほかの4モデルはサイズはほぼ同クラス、重量は三菱電機が比較的軽いという結果でした。とはいえ、中級モデル以下の炊飯器と比べると、今回検証した5モデルはおしなべて軽いとは言いがたく、高級炊飯器は移動させずに使うのが賢明といえそうです。
また、同じく設置性を左右する蒸気の放出量については、「蒸気カット」機能を搭載した日立が圧倒的に少なく、そのぶん設置の自由度はもっとも高いといえます。とはいえ、基本的に高級炊飯器は、コンパクト化や軽量化、蒸気量の低減といったことよりも、ご飯のおいしさを優先して開発されているので、その点にはある程度目をつぶる必要がありそうです。そして、「おいしいご飯を炊くこと」に特化した高級機種が、売れ続けている理由もその点にあるわけです。
さて、次回はいよいよ最終回。これまで6回の検証をもとに、各モデルがどんなユーザーに最適かを考えていきたいと思います。
【コチラの記事もオススメ!】
【おすすめ炊飯器5モデル濃厚比較】味だけで選んで本当にいいの? 「操作性/メンテナンス性」を徹底チェック!