2017年も各社からさまざまな家電製品が登場しました。なかでも、家電のプロの目から見て、いったいどんなアイテムが印象に残ったのでしょうか。業界の流れや展望といった部分も含めて、IT・家電ジャーナリスト、安蔵靖志氏に存分に語っていただきました!
安蔵靖志(あんぞう・やすし)
IT・家電ジャーナリスト。家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)。AllAbout 家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」に出演中。その他ラジオ番組の家電製品リサーチや構成などにも携わっています。
「バーミキュラ ライスポット」が「圧倒的にいい」と思った
――早速ですが、2017年に最も注目した家電は何でしょうか。特にご自身で愛用しているものなどあれば、使い勝手などいろいろうかがいたいのですが。
安蔵 1つ挙げるなら、愛知ドビーの「バーミキュラ ライスポット」です。発売は2016年の暮れで、年が明けて購入して以来、愛用していて。税込みで8万円台で販売していますが、「圧倒的にいい」と思っています。
――どのあたりが良かったのでしょうか?
安蔵 とにかく汎用性が高いんです。たとえば最近、鍋に水を張って食材を入れると、温度を低温にキープしてくれる1~2万円の低温調理機が出ていますよね。ライスポットは、その低温調理機能を備えていて、最上位モデルの炊飯器に負けない炊飯機能があって、さらに炒め調理も無水調理もできる。そう考えると、ものすごくお買い得なんです。
あとは、「おまかせ」ではなく、「道具」としてコントロールできる感覚が気に入っています。自動調理家電とは違い、食材も含めてレシピ通りじゃなくても作れるから、レシピがないと操作できない……なんてこともありません。圧力鍋と同じ感覚で使えるので、普段調理をする人ほど扱いやすいと思いますよ。
――なるほど。料理好きの安蔵さんならではのご意見ですね。逆に本機の課題は何ですか?
安蔵 お手入れが少し面倒なんです。フタの接合部にはホーロー加工がないので、そこは磨かないとすぐ錆びてしまうんですよ。あとは一般的な炊飯器のお釜に比べると、ご飯が鍋にくっつきやすい点ですね。
愛知ドビー
バーミキュラ ライスポット(写真はソリッドシルバー)
実売価格8万6184円(バーミキュラ直販価格)
鋳物ホーロー鍋の人気ブランド、バーミキュラの提案する炊飯器。IHヒーターを搭載し、炊飯だけでなく無水調理や低温調理などにも使えます。2017年11月には新しいカラーバリエーションとしてシーソルトホワイトとトリュフグレーも登場しました。
「ロティサリーグリル&スモーク」は1台4役と考えると、この価格も納得
――今年は個性的なグリルが数多く登場しましたが、その点はいかがでしょうか。
安蔵 グリルといえば、パナソニックの「ロティサリーグリル&スモーク」が面白い。ロティサリー(鶏の丸焼き)のみの調理器だったら5万円は高いと感じるかもしれませんが、本機はグリル・燻製・オーブン・トースターの一台四役。特に燻製機能がいい。パナソニックは「けむらん亭」という、スモーク&ロースターも出していますが、こちらは庫内の高さがないので、普通の卵を燻製することができなかった。うずらの卵はできましたが、それでは……ね。
その点、ロティサリーグリル&スモークは、気になったものが何でも燻製にできてしまいます。うまい燻製ができるものだから、もう、酒が進んで進んで仕方がない(笑)。こうした点も含めると、この価格は決して悪くはないし、もう少し安くなったらむしろお買い得ですね。もし、「ちょっといいトースターが欲しい」と思ったときなどは、本機を選ぶのもオススメです。
パナソニック
ロティサリーグリル&スモーク NB-RDX100
実売価格5万1230円
オーブンの中で塊肉をぐるぐる回転させながら近火と遠火でゆっくりジューシーに焼き上げられる、家庭で本格的な肉料理を楽しみたいなら注目の一品。煙やニオイ対策も施されています。
安蔵 グリルといえば、アラジンの「グラファイトグリラー」も面白そう。実は未だに実際に使ったことはないのですが、いま一番使ってみたい商品の一つです。
――煙を抑えて脂も落とすので、自宅でニオイを気にせず焼肉をしたい人にも良さそうですね。
安蔵 これなら、一人暮らしでもバーベキューができますし、面白いグリルが出てきたなと。カラーリングも親しみやすく、飽きが来ないデザインなのも好印象です。
日本エー・アイ・シー
アラジン グラファイトグリラー CAG-G13A
実売価格税込3万4560円(ダイレクトショップ価格)
上部から遠赤グラファイトの輻射熱で加熱することで、本格炭火のような焼き上げが楽しめるグラファイトグリラー。煙の元になる脂を網の下に落とすので煙が出ません。また、脂が抜けるのでカロリーもカットできます。
デザインでいえば「BALMUDA The Range」が際立っている
――デザインの良い調理家電も増えましたね。
安蔵 特に、バルミューダの「BALMUDA The Range」がいい。電子レンジで4万円超は高いと感じるかもしれませんが、こちらはデザインだけで「買い」と言ってもいいでしょう。「デザインがもうひとつ」といったトースターやレンジが増えるなか、本機のデザインは際立っています。毎日使っていて気持ちがいいという、所有感を満たすアイテム。プレゼントにもいいですね。
バルミューダ
BALMUDA The Range
実売価格4万6980円(ホワイト、ブラック)、5万8860円(ステンレス)
「レストラン」をイメージしたというコンパクトで美しい佇まいが魅力。本体のレバーを回すとギターの音色が鳴り、取っ手から手元に柔らかな灯りが落ちるのが特徴です。
「アイスデリ プラス」の「本物の味」に感動!
安蔵 少し変わったところでは、ハイアールの「Ice Deli Plus(アイスデリ プラス)」が良かったです。夏には随分お世話になりました(笑)。とにかく美味しいんですよ。本物のアイスクリームは味がまったく違う。久しぶりに本物に触れると、やっぱり感動しますよね。だから、もっと作り置きできるくらい大きいサイズが欲しくなります。一回ぶんの容量700mlでは、私一人でペロッと食べてしまうので(笑)。あと、レシピの砂糖の量を調整するなど、自分でアレンジできるのもいい。実際、砂糖は3分の2に減らして作っていました。
ハイアール
Ice Deli Plus(アイスデリ プラス) JL-ICM720A
実売価格1万1080円
ペルチェ式の小型冷却装置を搭載し、材料を入れるだけで手軽にアイスクリームが作れるアイスクリームメーカー。アイスクリームのほか、シャーベット、フローズン、ジュレ、冷スープなども作れます。容量は700ml。
――さきほどのバーミキュラ ライスポットと同様、アイスデリ プラスも「道具」として使えるということですか。
安蔵 はい。道具は、自分のスタイルや作りたいものに合わせて、自分で調整して使える。これに対し、自動調理家電は簡単で便利ですが、材料も分量もレシピ通りでなくてはダメですし、レシピ自体がわかりづらかったらもうお手上げ。普段あまり調理をしない人には良くても、自分であれこれ工夫したい人には、必ずしも使い勝手が良くないんですね。
2017年に登場した調理家電を振り返ると、「道具として使うことを想定した製品」と、「全自動だけれどレシピ通りのみ」という製品と、二極化が進んだように感じます。自分の調理スキルや、スタイルに合わせて選ぶと良いですね。
――次回は調理家電以外の家電について振り返っていただきます。お楽しみに!