この春、ダイソンからコードレススティック掃除機の待望の新シリーズ、「Dyson Cyclone V10 (ダイソン サイクロン ブイテン )コードレスクリーナー」が発売されました。今度のモデルはモーター、サイクロン、バッテリーという掃除機の中核パーツがすべて進化。集じん性能ではコード式キャニスター掃除機をも凌ぐとダイソン社は豪語しています。さらに「コンセントの抜き差しや収納が面倒なコード式キャニスターはもう必要ない」と宣言し、ダイソン社はキャニスター型掃除機の開発をやめてしまいました。
「コード式掃除機に引導を渡した」最新モデルの実力を検証!
さて、同社に「コード付き掃除機の開発が不要」と決意させる契機となったDyson Cyclone V10 コードレスクリーナー。実際のところ、実力はどれほどのものなのか……? その疑問に答えるべく、今回は同シリーズのスタンダードモデル「Dyson Cyclone V10 Fluffy」(ダイソン サイクロン ブイテン フラフィ・以降V10)の徹底テストを実施。基本の「フローリングの集じん力」「カーペットの集じん力」に加え、「操作性」「ゴミ捨てしやすさ/メンテナンス性」「設置性」「独自機能」「拡張性」で7項目で検証していきたいと思います。
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パワーも連続運転時間も向上し、ダイソンの掃除機はネクストレベルへ
ダイソン
Dyson Cyclone V10 Fluffy
実売価格7万5384円
コード式掃除機を超える集じん性能を実現したコードレススティック掃除機。従来モデル(Dyson V8 Fluffy)のモーターに比べ約半分の質量ながら、毎分最大12万5000回転(V8は11万回転)を誇るダイソン デジタルモーター V10を搭載。サイクロン内に発生する7万9000Gもの遠心力で、微細なゴミまで効率よく分離集じんします。また、モーターの小型化などにより、ヘッドからパイプ、モーター、クリアビンを直線上に配置することが可能になり、ロスが減って吸引力がアップしました。さらに、バッテリーのセルの数が6つから7つに増えたことで最長運転時間もこれまでの40分から60分に延長。ゴミの捨てやすさや収納のしやすさも向上しています。
SPEC●サイクロン技術:Radial Root(ラジアルルート) サイクロンテクノロジー(14気筒)●ノズル:ソフトローラークリーナーヘッド●充電時間:約3.5時間●運転時間:約60分(モード1)、約30分(モード2)、約8分(MAXモード)●サイズ/質量:W250×H1232×D245mm/2.58kg
【テストその1 フローリングでの集じん力は?】
フローリングでは弱運転でも十分な集じん力を発揮
集じん力はフローリングとカーペットの2つの場所で検証を行いました。それぞれに、粒ゴミとしてペットのトイレ用砂(おから砂)20g、粉ゴミとして重曹を20gを撒くとともに、長さ5cm×幅1~2mmに切った紙ゴミ1gを幅30cm×長さ70cmの範囲に撒いて1ストロークだけ走行。各ゴミがどれだけ取れたかを視認しました。
ちなみに、本機は「パワーモード1(弱モード)」「パワーモード2(通常モード)」「MAXモード(強モード)」の3段階で吸引力を切り替えられます。ダイソンの新製品発表会時に「フローリングはパワーモード1、カーペットはパワーモード2で十分」との説明があったので、今回のテストでもまずはそれに準じてテストしました。
フローリングでの走行では、パワーモード1で猫砂と紙ゴミは完全に集じんできましたが、ヘッドの右端部にわずかに重曹の筋が残りました。また、フローリングの目地の中にもところどころに重曹が残っていました。ちなみに、これをパワーモード2で集じんすると、フローリング上の集じんは完璧でしたが、目地にわずかに重曹が残りました。とはいえ、ネコ砂と紙ゴミの集じんはほぼ完璧。重曹に関しても、通常これだけの粉を掃除することはありませんし、残った重曹もパワーモード1でも2ストロークでキレイに吸引することができました。通常の掃除なら十分すぎる集じん力といえるでしょう。
【テストその2 カーペットでの集じん力は?】
紙ゴミがやや残るも、従来モデルより集じん率はアップ
カーペットでの走行では、パワーモード2で猫砂と重曹は集じんできましたが、紙ゴミが少しだけ、カーペットの起毛部分に固まるように残りました。V8で検証したときもそうだったのですが、ダイソン独自のソフトローラークリーナーヘッドでカーペット上を掃除すると、細長い紙くずはローラーヘッドの周りをくるっと周回して前のゴミと固まった状態でカーペットにくっつく場合があるようです。ただ、残った紙くずの量は、従来モデルのDyson V8 Fluffy(以降V8)をテストしたときよりかなり少なくなった印象です。なお、試しにカーペット上をMAXモードで掃除したところ、猫砂と重曹はしっかり集じん。紙くずはわずかに残ったとはいえ、その量はパワーモード2に比べて格段に少なくなりました。
【テストその3 操作性は?】
前後の動きはスムーズで、軸が安定していて首振りがしやすい
ヘッドの前後の動かしやすさ、左右の首振りのしやすさ、細かく動かせるかなどをチェック。掃除中の手首への負担も検証しました。さらに、パソコン台など高さのない場所の掃除のしやすさも確認しました。
ヘッドの前後の移動は、ソフトローラークリーナーヘッドの回転力の助けもあって極めてスムーズ。左右への方向転換も容易でした。ただ、ソフトローラークリーナーヘッド自体は他社モデルと比べると重い部類に入るため、例えばテーブルの足回りなどを細かく掃除するのはやや苦手。ヘッドの幅の広さを活かして、ある程度大きな動きで掃除するのに向いています。また、軽めのカーペットを掃除する際は、ヘッドが生地に密着してやや掃除しにくい点は、従来モデルと同様です。
ダイソン氏から聞いた「方向転換の際はトリガーを切る」という技に目からウロコ
ちなみに、本機はトリガースイッチを採用しており、この特性を利用して手首に負担をかけずに使う方法があります。具体的には、方向転換する際にトリガーを一度切り、方向が定まったら再びトリガーを引くという使い方。単純ですが、こうすることで指に力を込めながら動かす必要がなく、身体ごと方向転換ができるので、手首に余分な負担がかからないというわけです。これは、トリガーを引いた瞬間にモーター回転数がMAXになるからこそ、ストレスなく実行できること。実はこの方法、ダイソンの創業者ジェームズ・ダイソン氏に取材した際、ダイソン氏本人から直接教えてもらったもの。実際にやってみると、その快適さに「なるほど、これがダイソンの使い方なのか!」と目からウロコが落ちる思いでした。
また、本機から「吸い込み口~サイクロン~クリアビン」の配置が一直線上に変更となり、これが操作性にもいい影響を与えていると感じました。配置が一直線になることで軸に安定感が出て、左右に首を振るときの重心がこれまでより安定している印象です。
また、高さのない場所の掃除についても問題なし。筆者の自宅のパソコンデスクの下は高さが約10.5cm、奥行きが40cmほどありますが、デスクの奥までヘッドがしっかり届いて掃除できました。一方、少し高さのある場所はやはり本体の重みが手首にかかり、軽さを追求したモデルと比べると、ラクラク掃除できる、とまではいきませんでした。その点はアタッチメントを活用すればよさそうです。
また「設置性」の項でも触れますが、新モデルのハンドル下部にゴム製の滑り止めが付いたのもポイント。掃除中に物を動かしたいとき、掃除機を壁や棚の側面に立てかけられるようになったのが便利でした。
耳障りな音の成分が抑えられ、運転音はさらに静かになった印象
充電時間はV8の5時間から大幅に短縮され3.5時間に。連続運転時間もV8の最大40分から、V10では最長60分(※)と1.5倍に伸びました。これにより、一般的な戸建て住宅も1回のフル充電で掃除できるとのこと。体力のない筆者の場合は20~30分掃除するのが限界なので、十分な運転時間といえます。
※ソフトローラークリーナーヘッド使用時は最長40分
ちなみに「操作性」からは若干外れますが、夜遅くの掃除などのしやすさに関係する「運転音」(静音性)についても触れておきます。ダイソンの掃除機は、集じん性能が高い一方、かつては「音がうるさい」というイメージがありました。これは前機種のV8で大幅に改善されましたが、新モデルではさらに静かになったイメージです。従来モデルのV8で感じた、運転音の中の「耳障りに感じる成分」が減った印象が本機でも感じられました。
特に、新モデルでの「パワーモード1」(弱モード)はとても静かで、家族がテレビを見ている中で掃除してもまったく問題なし。「MAXモード」(強モード)はさすがにうるさいですが(それでもV6以前のモデルと比べるとかなり静か)、このモードは「ここぞ!」というときしか使わないので、筆者はそれほど気になりません。ただし、防音性があまり高くない集合住宅に住んでいる場合は、深夜の「MAXモード」での使用は控えたほうがいいかもしれません。
【テストその4 ゴミ捨てしやすさ/メンテナンス性は?】
パーツの配置が変わったことで「ゴミ捨てが圧倒的に快適」になった
実は筆者が、V10で最も便利なったと感じたのがゴミ捨てです。ダイソンのコードレススティック掃除機はゴミ捨てがワンタッチでできるのがウリで、これまでは片手で掃除機を水平に持ちながら、クリアビン(ダストカップ)の底ぶたをゴミ箱の真上にくるように調整し、もう一方の手で開放レバーを引く必要があり、少なからず腕や手首に負担がかかっていました。一方、新製品のV10ではサイクロンの向きが水平方向になったため、掃除機の向きを真下に向けて、クリアビンをゴミ箱に突っ込んでゴミを捨てする方式になりました。
これにより、手首や腕の負担が大幅に減り、まさにワンタッチでゴミ捨て可能に。掃除が終わったらサッとゴミを捨ててすぐ収納、という流れが実にスムーズで、こまめなゴミ捨ても面倒に感じることがなくなりました。また、これまでゴミ捨て時に気になっていたホコリの舞い上がりも、ゴミ箱の奥までクリアビンを突っ込めるようになったことで、ホコリの舞い上がりがまったく気にならなくなりました。
ローラーは取り外しが可能でメンテナンスがラク
メンテナンス面では、クリアビンとヘッドを定期的に掃除する必要があります。クリアビンは透明なぶん、ハウスダストなどの微細な汚れが気になるものですが、微細ゴミのクリアビン内側への吸着が弱くなっており、従来機種ほど掃除に手間取らなくなった印象があります。ただし、底ブタのパッキン部分などは汚れが取りにくいので、気になる人はクリアビンを外して水洗いするのがいいでしょう。
一方、ヘッドはソフトなナイロンフェルトを使っているため、一般的なブラシヘッドのように髪の毛やペットの毛がほとんど絡まないのが魅力。もし長い糸や毛が絡んでも簡単にローラーを外して取り除けます。ヘッドが汚れたら簡単に水洗いできるのもうれしいポイント。
さらに、V8ではフィルターがサイクロンの真ん中と、本体後方の2か所に付いていましたが、V10ではそれが本体後方のポストフィルターのみになり、手入れの手間が半減しました。
【テストその5 設置性は?】
収納ブラケットなしの立てかけ収納がついに可能になった
従来モデルの収納は、付属の「収納用ブラケット」を壁などにネジ止めし、そこに掃除機本体をセットすることで収納と充電を同時にできる、というものでした。最新モデルでは収納用ブラケットに掛けることもできますが、「壁にネジ穴を開けたくない」という人のために、本体のみで壁に立てかけて収納することも可能になりました。V10の本体ハンドル部の底に新たにゴム製の滑り止めが付いたためです。また、滑り止めが付いたことで、掃除中にちょっと壁に本体を立てかけて別の作業をする、ということも可能になりました。いままではいちいち下に本体を置く必要があったので、これは助かります。
とはいえ、収納用ブラケットが付けられる家なら、やはりこれに掛けて収納するのが、同時に充電もできて便利です。新モデルの収納用ブラケットでは、掃除機を取り外す際に下部が浮くため、よりスムーズに取り出せることができるようになりました。
【テストその6 独自機能は?】
ソフトローラークリーナーヘッドに加え、アラーム表示機能を新搭載
ダイソンのコードレススティック独自の機能、装備で、まず挙げられるのはソフトローラークリーナーヘッド。ナイロンフェルトが床にピッタリ付くことでヘッド内の吸気口を負圧の状態にキープし、ゴミをパワフルに吸引できます。また、ナイロンフェルトの間に施した黒いカーボンファイバーブラシがフローリングに張り付いた細かいホコリをかき取ります。また、フェルトが負圧状態を維持できるのでヘッド前面を大きく開放でき、大きなゴミも小さなゴミもしっかり捕集できるのも魅力です。
ただし、ひとつ問題になるのが、ソフトローラークリーナーヘッドで壁際を掃除した場合。壁にヘッドが密着したとき、ヘッドと壁、床の間にわずかに三角形の隙間ができます。通常の掃除機はヘッドと床面の間に隙間があり、吸引気流で軽いゴミならある程度吸い込み可能。ですがソフトローラークリーナーヘッドはナイロンフェルトが床に密着するため、三角形の隙間にあるゴミが集じんできません。これは付属の隙間ノズルなどで掃除する必要があります。
先述したワンタッチのゴミ捨て機能もダイソンならではの機能で、V10になってゴミ捨てがより簡単になったのもうれしいポイントです。さらに、V10になってLED表示を新たに装備。バッテリー残量が4段階で確認できるほか、延長パイプなどにモノが詰まったときの表示や、フィルター洗浄などを促すランプ表示も新たに追加されました。
【テストその7 拡張性は?】
付属アタッチメントにミニソフトブラシが加わり全4種類に
本機は、ミニモーターヘッド、コンビネーションノズル、隙間ノズル、ミニソフトブラシの4個のアタッチメントを付属しています。ミニモーターヘッドは内部にブラシ駆動用モーターを搭載した幅約145mmの小型ヘッドで、ベッドのマットレスやクルマのソファ、カーペットなどの掃除に最適。コンビネーションノズルは先端のブラシを出し入れすることで、机の上や棚などを快適に掃除できます。
隙間ノズルはソファの溝や家具の隙間を掃除するのに便利。ミニソフトブラシは毛が柔らかいので、テレビやパソコンの画面や障子などの掃除に適しています。なお、Dyson Cyclone V10 コードレスクリーナーでは、6種類のアタッチメントがセットになった「Dyson Cyclone V10 Fluffy+」(実売価格8万6184円)や、7種類のアタッチメントとダイレクトドライブクリーナーヘッドが付属する「Dyson Cyclone V10 Absolutepro」(実売価格9万9144円)など、より付属品を充実させたモデルもあります。
【検証のまとめ】
基本性能から細かい配慮に至るまで、進化を実感できるオススメの1台
V10を検証した結果、集じん力からバッテリーのスタミナ、操作性、ゴミの捨てやすさやメンテナンス性、収納性とすべての面で進化を遂げているのがわかりました。特にこまめに掃除をする身としては、ゴミ捨てがしやすくなったのと、掃除中に本体を壁に立てかけられるようになったのは、非常に大きなメリットだと感じました。
ただし、家具やモノが多い部屋で細々と掃除したい場合は、他社が出している質量1kg台の軽量モデルと比べるとやや不利。本機には大きなゴミも小さなゴミもまとめて集じんできるソフトローラークリーナーヘッドがあるので、1ストロークを大きめに取って掃除するのが向いています。その意味では、ある程度の広さがある戸建てやマンションに向いているといえそうです。
設置性では、収納用ブラケットをネジ止めしたくない人向けに、ハンドル下部に滑り止めが付いたのがポイント。もちろんブラケットを使う人も、掃除中に壁にちょっと立てかけられ、滑り止めの恩恵は十分受けられます。唯一、ソフトローラークリーナーヘッドの特性上、壁際のゴミが取りづらいのが惜しい点。
ともあれ、今回の検証で、集じん力の向上からハンドル下部の滑り止め、ランプ表示の追加に至るまで、本機があらゆる面で進化を遂げたのが実感できました。特に、これまでコード式キャニスター掃除機を使っていて、コードレススティックの吸引力とバッテリーの持ちに不安を感じていた人、本機に乗り換えると、多くの面でその快適さを体感できると思います。ダイソンユーザーで買い替えを考えている人、他のコードレススティック掃除機に物足りなさを感じる人にも、間違いなく本機がオススメ。「コード式キャニスターはもう必要ない」と同社が豪語するのも納得の性能でした。
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協力:楽天市場
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