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2019/9/12 19:30

ウソ、自己判断でエアコンが「気流を壁当て」する…? 「根本的な課題」を解決した三菱電機「霧ヶ峰」のブレイクスルー

昨今のルームエアコンはセンサーの性能とAI技術の向上により、快適性が大きくアップしています。三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」はすでに、室内の温度変化を予測して最適な運転をする「先読み運転」機能と、室内の温度・湿度から最適な運転モードを自動選択する「おまかせA.I.自動」を搭載。リモコンを操作することなく、暑さ、寒さを感じる前に快適な住空間を実現しています。

 

「重大な課題」をクリアするために開発された「FZシリーズ」「Zシリーズ」

↑左右独立駆動のプロペラファンを搭載した「FZシリーズ」(左)とクロスフローファン搭載の「Zシリーズ」

 

つまり、もはや人は何もしなくても常に快適……なはずでした。しかし実は、ある重大な課題が残されていたのです。そこで三菱電機は、課題を解消すべく、人工衛星にも搭載したという赤外線センサー技術を活用した新モデル「FZシリーズ」(実売予想価格33万8000円~45万8000円・税抜)、「Zシリーズ」(同22万8000円~40万8000円)を開発。11月1日より順次発売します。様々な課題を「総合電機メーカーの英知を結集して解決した」という新機能とはいかなるものか? 新製品発表会のレポートを通して、その全容を明らかにしていきます!

↑人工衛星のセンサー技術を活用した「ムーブアイmirA.I.+」が気流を検出して制御する新技術を搭載したルームエアコン「霧ヶ峰」。写真は「FZシリーズ」

 

重大課題「コントロールしたはずの気流が届いていなかった」

同社によると、エアコンが快適な空調を生み出すために制御すべき要素として挙げられるのは「温度」「湿度」「気流」の3要素。先述の通り、そのうち「温度」「湿度」においてはすでに技術的ブレイクスルーを果たし、従来モデルに搭載していますが「今年の新モデルはついに、”気流”においてもブレイクスルーを達成した」といいます。

↑「温度」「湿度」に加え、「気流」においてもブレイクスルーを実現

 

そもそも三菱電機のルームエアコンは以前より、独自の赤外線センサー「ムーブアイ」を搭載。このセンサーが「温度」と「湿度」をセンシングし、気流を制御することで、空間の快適性を実現してきました。ところが、せっかく制御した「気流」が十分に届いていないケースがあることがわかったのです。

 

必要な場所に必要な気流を送ったつもりなのに、届いていないとは一体……? その要因の1つが、ワイドリビングや窓の大型化による室外からの温度の影響です。「霧ヶ峰」にはそもそも、目標物に向かって気流を送る技術を搭載していましたが、例えば暖房時に、大きな窓があるとそこから冷気が侵入し、暖房の気流の到達点がずれてしまう場合があるのです。

 

さらに物理的な要因として、近年L字型リビングが増えたことから気流が届かないケース、アイランドキッチンやソファなどの家具が障害物となり、気流が妨げられるケースも多かったといいます。

↑目標に向かって気流を吹かせるも、冷気の侵入などでずれてしまうことも

人工衛星に搭載されたセンサー技術で、気流の検知が可能に

この課題をクリアするためには、ただ気流を送るだけでなく、実際に気流が届いているのか、「気流の到達度を見る技術」が必要だと考えたという同社。そこで新モデルには、人工衛星にも採用されたセンサー技術を活用して開発した「サーマルダイオード赤外線センサー」とAI技術を活用した「ムーブアイmirA.I.+(ミライプラス)」を搭載し、世界で初めて気流の検知を可能にしました。

↑陸域観測技術衛星2号「だいち2号」にも採用された「サーマルダイオード赤外線センサー」を搭載

 

実は、従来のセンサーでは、気流の到達地点で熱を検知したとしても、温度変化まで細かく検知できないため、それが気流の熱か、そのほかの熱源なのか、そこまで判断できませんでした。

 

しかし新センサーは、従来モデルに比べて画素数が80倍、感度が2.5倍と性能が飛躍的に向上。その結果、熱の温度変化を揺らぎとして感知できるようになり、気流が到達しているか否か、判断できるようになったのです。

↑新センサー(右)は温度変化を細かく検知し、揺らぎで気流と判断できるようになりました

 

寒い人には温風の気流の中心を、暖かい人には気流の端を当てる

到達地点が判断できるようになると、きめ細かな気流の制御が可能になります。例えば、室内にいる人の表面温度から温冷感を把握し、「まだ寒いと感じている」と分析した場合、もっとも暖かい「気流の中心」と、目標とする人の足元位置を合わせるよう、風向きを自動調整。逆に「暖かく感じている」と分析した場合、今度は温度が低めの「気流の端」を、目標の人の足元位置に合わせるよう、風向きを調整してくれます。なるほど、人の感じ方によって当てる気流の場所を変えるとは…これはすごい!

 

会場では、この「ムーブアイmirA.I.+」の動作を実際に体験できるコーナーも。エアコンの前に座ると、センサーが表面温度を検知し、「顔や身体は暖かいが足元は冷えている」と判断し、足元に暖かい気流を送り始めました。

 

続いて足の前に障害物を置いたところ、センサーが気流が届いていないことに気づいた模様。足元に届く向きを探した結果、なんと気流を壁に一度ぶつけ、跳ね返った気流を足元に送るというルートを見つけてくれました。これは賢すぎる!

↑センサーが足元が寒いと判断し、暖かい気流を足元に届け始めました

 

↑前に障害物を置いても、気流はその障害物を避けながら足元を目指しています!

 

ベストな風向きを見つけるとAIが学習して次回以降に役立てる

このように間取りや家具などの問題で気流が届かない場合、「ムーブアイmirA.I.+」が気流が届いていないことを検出。上下左右とリモコン操作では不可能なほど細かい調整を繰り返しながら、人に届く風向きを自動で探索し、最適な気流に調整してくれます。しかも、そのルートをAIが学習し、次回以降の運転に役立てるそう。つまり「この場所に気流を送るには、この風向きがベスト」というのを覚えてくれるのです。賢すぎる!

↑プロジェクションマッピングによる気流制御のイメージ。模様替えによってソファが障害となり、ソファに座っている人に温風が人に当たらなくなってしまいましたが……

 

↑「ムーブアイmirA,.I+」がきめ細かく探索し、足元に温風が届くルートを見つけました

 

これらの運転はすべて、リモコンの「おまかせA.I.自動」のボタンを押すだけ。体感温度や住宅性能に合わせた運転モードの切り替え、間取りやレイアウトに応じた気流制御による快適が、ワンボタンで叶います。

↑リモコンの「A.I.自動」を押すだけで、あとはお任せ!

スマホアプリに対応し、外出先から熱画像で部屋の様子をチェックできる

また従来は、外出先からスマートフォンで操作するには、別売の無線LANアダプターが必要でしたが、本モデルからエアコン本体に無線LANを内蔵。専用アプリ「霧ヶ峰REMOTE」をダウンロードしたスマートフォンでの遠隔操作が可能になりました。

 

さらに、業界で初めて、在宅中の家族やペットの様子が熱画像で確認できる「サーモでみまもり」機能を搭載。「ムーブアイmirA.I.+」のセンシングデータをネットワークサーバー上でサーモグラフィー化し、部屋の状況を熱画像としてスマートフォンから確認できます。

↑スマートフォンから遠隔操作できるほか、熱画像で留守中の家族やペットの様子も確認できます

 

三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」が目指すのは、「いつでも、どこでも、誰でも快適に」。そのコンセプトの通り、今回は、人工衛星搭載のセンサー技術を活かして気流のきめ細かな制御を実現。本機について同社が「オーダーメイドしたような我が家エアコン」と語った通り、各家庭のライフスタイルにぴったりな環境を提供することが可能となったのです。その進化を見るにつけ、エアコンもここまで来たか……と驚くほかありません。

↑新開発の「ムーブアイmirA.I.+」が温度、湿度、気流のブレイクスルーを果たし、さらなる快適性を実現