家電
2016/8/29 17:00

結局のところ、シャープの「蚊取空清」とは何だったのか? 残念ながらゴッソリ獲れたのは蚊ではなく……

夏の夜の風物詩といえば、夜中に鳴り響く「プゥーン」という甲高い音。そう、蚊です。最近は、シュッとスプレーをするだけで室内に蚊を寄せ付けない製品もありますが、正直なところ老犬がいる我が家では強い薬剤は使いたくありません。同じように、子どもがいる家なら「薬は使いたくない」という家庭も多いでしょう。

 

そんな家庭に向けて、シャープが今年の4月に発売したのがプラズマクラスター空気清浄機「蚊取空清 FU-GK50」(実売価格4万240円・以下、蚊取空清)。なんと空気清浄機に蚊取り機能を搭載した製品です。今回は、これを蚊の最盛期に試してみることで、「実際どうだったのか?」という答え合わせをしてみようと思います!

 

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↑蚊をおびき寄せて捕獲できる蚊取空清「蚊取空清 FU-GK50」。コロンと丸みを帯びたデザインが特徴です

 

紫外線と蚊が隠れたがる小窓で蚊を誘う

蚊取空清の一番のポイントは、なんといっても蚊の捕集に薬を使わないことです。本体に近づいた蚊を空気の力でシュッと引き込み、本体内に内蔵されている粘着シールタイプの「蚊取りシート」で蚊を捕まえます。かなり原始的な方法ですが、万が一電源が外れても影響がない点は安心。
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↑製品横から背面にかけてのスリットに蚊を引き込む仕組み(上)。背面の蚊のようなシマシマデザイン(下)は好みが分かれそう……

 

 

 

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↑粘着タイプの「蚊取りシート」は、本体背面のパネルに装着します

 

ただし、そうなると気になるのが「蚊がうまく蚊取空清に近づくか?」ということ。蚊取空清は運転モードが「強」の場合で5.1㎥/分の風量があるのですが、これはあくまでも「吹き出し口」の風量。部屋の空気や虫を取り込む吸気口側は、風量はだいたい半分の2.5㎥/分で、吸気口から7cmほど離れると風量を計測できないレベルの風量になってしまいました(いずれも筆者実測値)。つまり、蚊をうまくキャッチするには、蚊に「吸気口の7cm以内」に近づいてもらわないといけないのです。

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↑風量計で空気の吸い込み口の風量を計測。吸い込み口から7cmほど離れると、簡易的な風量計では計測できないレベルの弱風になりました

 

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↑蚊が隠れたくなる「スリット」形状と、スリット内に蚊が寄ってくるという波長のLEDライトを搭載することで蚊をおびき寄せます

 

蚊取空清はこの点も考えられており、本体裏面にLEDライトを搭載。このライトが蚊を誘引する360nmの波長を含む紫外線を放射するのだそう。また、LEDの明かりが漏れるスリットは「蚊が隠れたがる小窓」の形状。さらに、本体の「黒色」も、蚊が好む色なのだそうです。これらの複合的な要素で本体に近づいた蚊を、空気清浄機の気流で本体内に誘導します。

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↑本体色が黒色なのも蚊が好む色だから。ただし、黒いためにホコリは目立ちます

 

もともと蚊が少ない家で試した結果は……

原理はわかりますが、実際のところ蚊は誘引されるのでしょうか?  まず寝室で一週間寝室で使用しましたが、結果捕獲できた蚊はゼロ。とはいえ、我が家は光化学スモッグ警報が鳴り響く地域なので、寝室の窓はほぼ閉めっぱなし。もともと「夜に蚊で起こされる」被害は月に1~2度程度のものでした。

 

そこで、今度は夜風を通す窓の横に設置したところ一晩で2匹の蚊をゲット!  この「2匹」というのが多いのか少ないのかはわかりませんが、蚊が獲れることはわかりました。ちなみに、同じ場所に置いていても昼間は捕獲数ゼロ。実は、朝に窓を開けたときに一匹の蚊が家に侵入したのを確認したのですが、この蚊は残念ながらその日には捕獲できていませんでした。今回はたまたまかもしれませんが、LEDの効果がより高くなる夜のほうが捕獲率は高いのかもしれません。

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↑風通しの良い窓際に1日おいたあとの粘着シートには、蚊が2匹捕集されていました!

 

年間で考えると粘着シートのランニングコストは気にならない

「虫が嫌い」という人にとって気になるのが、虫が付いた粘着シートの処理」ではないでしょうか? 粘着シートは本体裏のフィルターカバーに装着されているため、シート取り外し時はどうしても虫と対面することになります。とはいえ、このシートは粘着部分を隠すように半分に折ることができます。このため、一度シートを折ってしまえば虫を目にすることはありませんし、捨てるときに不用意に虫を触ってしまうこともありません。

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↑シートは裏面にミシン目があり、粘着面を内側にして2つに折りたためるようになっています。折ったあとは虫を見ないで捨てることができます

 

ちなみに、粘着シートは虫やゴミも吸着するので、定期的な交換が必要です。基本的には2か月で1回の交換が目安。1枚が1400円ほどかかるため、1か月に700円のランニングコストがかかることになります。とはいえ、蚊が出る季節は梅雨が終わる6月末から9月あたりまで、と考えると1年で使用する回数は約4か月ほど。これなら年間約2800円の出費で済みます。個人的には「犬や子どものいる家庭で薬剤を使わない」安心料として、そこまで高いとは思いませんでした。

 

なお、蚊の出ない時期は蚊取りシートを外せば、自動的に蚊取り機能をカット。普通の空気清浄機として使用でき、蚊取りシートなどの余計なランニングコストはかかりません。また、操作パネルの「蚊取りUVライト」で蚊取り用UVライトを一時的に消灯することも可能です。

 

恐ろしいほどホコリが取れて犬用ベッドのニオイが減った

蚊取空清は「プラズマクラスター空気清浄機」を発売しているシャープの製品だけあり、空気清浄機としてもなかなか優秀です。この製品は背面から空気を吸い込み、後ろ斜めから風を出すことで、本体背面にある壁を伝って部屋全体に風を循環させる「スピード循環気流」とよばれる送風方法を採用しています。

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↑部屋の壁際に蚊取空清を設置した様子。風を背面側に送風しているにもかかわらず、反対側の壁に取り付けた紙が揺れていました。部屋の広い範囲の空気を循環させているのがわかります

 

試しに6畳間の仕事部屋に設置したところ、風を背面側に送風しているにもかかわらず、なんと対面の壁に垂らした紙がソヨソヨと風でなびいていました!  風は体感ではわからない弱さですが、微細な花粉やPM2.5、ホコリなどは十分引き寄せてくれそうです。

 

我が家では主に寝室で稼働させていましたが、ベッドカバーなどのファブリックからホコリがでるためか、1週間でプレフィルターに恐ろしいほどのホコリがついていました。また、フィルターにはホコリをカットするプレフィルターや、花粉や微細な粒子をキャッチする静電HEPAフィルターのほか、匂いや有毒ガスまで低減するという脱臭フィルターも搭載されています。この脱臭フィルターのおかげか、寝室においている犬用ベッドのニオイもほとんどしなくなりました。ちなみに、これらの空気清浄機のフィルターは約10年交換不要。汚れを掃除機などで吸引すればOKです。

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↑右から蚊取りシート(パネル装着時)、プレフィルター、脱臭フィルター、静電HEPAフィルター。蚊取りシート以外は約10年取り換え不要

 

↑1週間の使用でプレフィルターにこれだけホコリと犬の抜け毛がゴッソリ! 空気清浄機能の性能の高さを実感させられました
↑1週間の使用でプレフィルターにこれだけホコリと犬の抜け毛がゴッソリ! 空気清浄機能の性能の高さを実感させられました。なお、プレフィルターや脱臭フィルター、静電HEPAフィルターのホコリは、掃除機で吸えばOK

 

また、本体前面には、空気の汚れに応じて光る色が変化する「きれいモニター」も搭載。部屋の空気のキレイ度が一目でわかるようになっています。このきれいモニターはかなり明るいため、視認性も良好。反面、寝室に使用すると部屋が豆電灯をつけたレベルで明るくなります。とはいえ、こんな場合は「花粉」ボタンの長押しで、きれいモニターだけ消灯することも可能。細かな点でも使いやすさを感じます。

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↑部屋の汚れが目に見える「きれいモニター」。空気がキレイだと緑、汚れているとオレンジから赤色に変化します。青いライトは高濃度プラズマクラスターイオンのサイン

 

あくまでもメインは「空清」で「蚊取」はサブ的な位置づけ

今回はレビューのため1週間ほど蚊取空清を使ってみましたが、最初は「蚊取り機能」ばかりに注目していたのに、いまは空気清浄機としての高い性能が気に入っています。メインの設置場所が犬のいる寝室ということもあり、とにかくホコリや犬の抜け毛の取れる量が尋常ではありません。本製品使用時は、掃除の際に吸い込むゴミの量も減ったような気がします。

 

というわけで、本機はむしろ「空清」のほうに目を向けるべき。「蚊取」のほうは、「家に入ってきた蚊を、根こそぎ捕獲!」というイメージではありませんが、夜はそこそこの蚊を捕獲してくれたので、蚊が少ない家ならこれで十分でしょう。蚊がいない季節は、蚊の誘引機能をOFFにして、空気清浄機として年中無駄なく使えるのもうれしいところ。あくまで本機は優秀な空気清浄機として便利に使い、サブ的な機能として蚊の数も減らすこともできる、という考え方でいいのではないでしょうか。

 

【SPEC】

本体外形サイズ/質量:約W391×H540×D281mm(突起部含むW394×D281×H540)/約5.9kg

空気清浄適用床面積(目安):~23畳(38㎡)

高濃度プラズマクラスター 適用床面積(目安):約14畳(約23㎡)

清浄時間:8畳/12分