アラジンブランドを手掛ける千石は、同社初のコーヒーメーカーとなる新製品、「アラジン コーヒーブリュワー」(3万3300円・税込)を発表しました。大人気製品・グラファイトトースターで焼いたトーストとともに楽しめる、おいしいコーヒーをテーマに開発したという本機。コーヒー本来の旨味をしっかり抽出しつつ、“雑味のない1杯”を淹れられるといいます。その発表会の模様を取材しました。
トースターのヒットが開発のきっかけに
1953年に創業された千石は、当初プレス加工業を生業としていました。その後、1977年から家電市場に本格進出。現在では、ヒーターやトースターのメーカーとして知られています。そんな同社の製品でも特にいま人気なのが、2015年に発売されたグラファイトトースターです。0.2秒で発熱し、短時間・高温での調理によって外はカリカリ、中はふっくらのトーストを焼く本機は、累計260万台を売り上げる大ヒット商品になっています。
今回発表されたコーヒーブリュワーは、そのトースターの系譜で開発された製品です。というのも、トースターのヒット後、トーストと一緒に楽しめるコーヒーメーカーを開発したいという声が社内から出たうえ、同社によるユーザーアンケートでも「次はコーヒーメーカーを開発してほしい」という要望が多かったというのです。
そういった経緯のもと開発されたコーヒーブリュワーは、当然ながら、トーストと一緒にコーヒーを楽しむというシーンを念頭に開発されています。製品の企画を行なった高橋弘真さんによれば、パンに合うコーヒーを研究した結果「雑味のないコーヒーがベスト」との結論に至ったそうです。
コーヒーの旨味成分だけを抽出し、あとは白湯を注ぐ
コーヒーを淹れるとき、初めのうちは旨味が多く抽出されますが、後半になるとその成分が薄れ、最後ともなると雑味ばかりが出てきてしまいます。そこでコーヒーブリュワーでは抽出初期の旨味成分だけをカップに入れ、その後は白湯を注ぐ“差し湯”によって、その問題を解決しました。
コーヒーの濃さの好みは個人によって異なりますが、本機ではそれに対応するため、コーヒーと白湯のバランスを変えて濃さを4段階で調整できるようになっています。それぞれの配合の比率は、コーヒー30%・白湯70%のクリア、コーヒーと白湯がそれぞれ50%のマイルド、コーヒー70%・白湯30%のストロング、コーヒー100%・差し湯なしのデミタスです。
本機のこだわりは、差し湯だけではありません。そもそも本機がコーヒーを淹れるまでには、予熱→蒸らし→抽出→差し湯の4段階があり、差し湯が行われるのは最後です。予熱段階では、本体内部で作ったスチームにより、配管やコーヒー粉を一定温度に温めます。これにより、周囲の温度環境に左右されることなく、安定した味を実現できるそうです。
予熱が終わると、60秒間かけてコーヒー粉を蒸らします。いきなり湯を注いでしまうと、コーヒーからガスが出て、コーヒー粉への湯の浸透を阻害してしまいます。ですが蒸らしの工程を挟むことで、抽出前にガスを排出させられるため、コーヒー粉の内部に湯を行き渡らせ、旨味成分をしっかり引き出せるというわけです。
抽出時に注ぐ湯の温度は80度に設定されています。温度が高すぎると雑味成分が増してしまい、一方で温度が低いと抽出が非効率になります。80度というのは、コーヒー抽出時の最適温だそうです。また滴下した湯がコーヒー粉全体に行き渡るよう、9つの穴からまんべんなく、ドリッパーに湯を注いでいるといいます。
一度にドリップする量は、130mlのレギュラーと、250mlのマグカップの2種類から選べます。所要時間は、レギュラーが約4分、マグカップが4分30秒となっています。
濃い味派の筆者も満足した、しっかりした旨味
コーヒーブリュワーで淹れたコーヒーのお味はどうかというと、全体的に濃い印象です。差し湯をすることによって味が薄まっているのではないかと思われる読者もいらっしゃるでしょう。しかしそんなことはなく、マイルドで注いでも、苦味や酸味はかなりしっかりしています。ストロングともなると“コーヒーを飲んだ感”が強烈に残るので、濃い味派の筆者も十分に満足。また、本機のこだわりのポイントである雑味のなさも体感できる差があり、ストロングを飲んでも、後味はスッキリでした。
ちなみにデミタスも試飲しましたが、某コーヒー味のサポートドリンクを連想するほどの味の濃さ。これはストレートでいただくにはさすがに濃厚すぎるので、氷を溶かしてアイスコーヒーにしたり、ミルクを注ぐなど、何かしらを加えたほうがよさそうです。
なお、本機はドリップマシンであり、豆を引くことはできず、コーヒーミルも付属していません。別売りで販売されているものを買う必要があります。また、別売りのコーヒーサーバーもありますが、一度にドリップできる量が最大250mlに限られているのも注意点です。
とはいえ筆者が試飲した限り、本機が淹れるコーヒーの味わいは、明らかに格別なものでした。コーヒーの味にこだわりのある方に対して、おすすめできるポテンシャルを十分に備えた一台といえそうです。