家電は日々進化していますが、なかでも高機能ドラム式洗濯機は機能・使い勝手ともに10年前と大きく変わりました。洗浄力についても、従来までは「乾燥はドラム、汚れ落ちなら縦型」などと言われていましたが、最近はあまりにも激しい泥汚れを除いて洗浄力でもドラム式洗濯機は負けていません。
そこで、GetNavi webでは気になるメーカーの最新高機能ドラム式洗濯機を連続レビュー。それぞれの汚れ落ちや特徴、使い勝手を実際に使ってチェックしていきます。気になる最初の製品は日立グローバルライフソリューションズのビッグドラム「BD-SX120H」。最初に本製品をレビューする理由は、なんといっても約1か月メンテナンスフリーだという「らくメンテ」の存在が気になるからです。
今年の日立は大きく進化! 気になるらくメンテの実力は?
そもそも、今回「最新のドラム式洗濯乾燥機をレビューしたい」と思わせた理由が、2022年に発売した日立のビッグドラムの存在。日立のビッグドラムシリーズといえば、乾燥時にシワが少ない「風アイロン」の認知度が高い製品です。風アイロンとは、乾燥時にシワを伸ばすことでアイロンがいらない手軽さを謳ったもの。これが、忙しい家庭にとくに人気となりました。
そんなビッグドラムシリーズが、2022年に大きく進化。最大の注目ポイントが「乾燥フィルター」の排除です。一般的な洗濯乾燥機は、洗濯乾燥ごとに「糸くずフィルター」と「乾燥フィルター」の掃除が必要になります。個人的にも毎回のフィルター掃除を負担に感じていました。
そこで、新ビッグドラムが導入したのが「らくメンテ」という一連のメンテナンスフリー機能です。最大の特徴が、乾燥時にでる衣類のホコリをキャッチする乾燥フィルターの排除。なんと、乾燥ホコリを水で流して、糸くずフィルターで一括して捕集するという目からウロコの構造になっています。さらに、糸くずフィルターを一般的なものより大きくすることで、なんと「1ヶ月フィルター掃除いらず」になったのです。これが、実際に使ってみると本当にラク! しかも、一般的に乾燥フィルターは本体上面にありますが、乾燥フィルターがなくなったことで上面にモノが置きやすくなりました。我が家では脱衣カゴ置き場として利用しています。
ただし、気になったのが「本当に1か月メンテナンスフリーなのか?」という点。いままで毎日掃除していた場所が、30日間手間いらずということがにわかには信じられません。そこで、1か月使ってみた結果……。
残念ながら3回ほどフィルター掃除が必要になりました。ただし、これは我が家の特殊な事情が大きく関係しています。というのも、我が家は完全介護中の犬がおり、犬の抜け毛が多いこと、介護の関係で毛布を頻繁に洗うため、一般的な家庭よりも洗濯環境がタフ。一方で、6kgの衣類を洗濯乾燥させたあとのゴミはかなり少なかったので、衣類だけならたしかに30回の洗濯乾燥に耐えてくれるかもしれません。
個人的に気になっていたのが「濡れたフィルターを長期間密閉空間に放置して臭くならないのか?」という点なのですが、3日ごとに洗濯をして2週間放置したフィルターは無臭でした。定期的に洗剤液が通過するからか、臭くはならないようです。
ところで、筆者は5年前にもビッグドラムを利用していたのですが、そのときに気になったのがドアパッキン周りに付着するホコリ汚れ。日立は高速の風で衣類を乾燥させるからか、毎回パッキン裏側にフェルトのようなホコリ汚れがビシーッとへばりついていたのです。フェルト状になっているので掃除は簡単なのですが、毎回ちょっと面倒だとは感じていました。こういった声が多かったのか、らくメンテではドアのパッキン部分に水を流すことでドア周りの汚れをかなり軽減。もちろん汚れはゼロにはなりませんが「毎回かならず掃除」から「月に1度くらい拭けばあとは放置できる」という汚れ方になりました。
とうとう日立も搭載したぞ、60℃熱湯除菌機能!
ここまでメンテナンスのしやすさに注目しましたが「洗濯機なんだから洗浄力はどうなの?」と感じる人も多いでしょう。ビッグドラムは従来製品から勢いのよいシャワーの「ナイアガラ洗浄/すすぎ」機能で洗剤残りが気になるユーザーに注目されている製品でした。しかも、汚れが残っている場合はAIが自動で洗浄を延長する「AIお洗濯」機能も搭載しています。そこで、まずは標準コース(AI洗濯機能ON)で乾燥できる最大容量である6kgの衣類を洗濯。そのなかに汚れたガーゼを混ぜて汚れ落ちをチェックしてみました。
標準コースでの洗濯結果は、完璧ではありませんがそれなりに優秀です。
ところで、ビッグドラム上位機種の新モデルは新機能として「60℃までの温水機能」を搭載しました。ヨーロッパをはじめとする海外の洗濯機では、当たり前のように搭載されている熱湯機能ですが、日本においては60℃まで加熱できる国産洗濯機といえば、パナソニックか東芝の上位モデルくらいでした。今回、日立が熱湯機能を搭載したことで選択肢が大きく増えたことになります。熱湯洗いは油汚れ落ちが良くなるほか、洗剤残りをさせたくない台所フキンや、子供や肌が弱い家族がいる家庭での肌着の除菌などに力を発揮してくれます。
個人的に、手洗いした後の雑巾の除菌などに熱湯洗浄はぜひほしい機能。このため、今回日立が熱湯機能を搭載してくれたのは本当に嬉しい進化でした。
やっぱり風アイロンは断トツの対シワ性能
新機能ではありませんが、ビッグドラムで外せないのが「風アイロン」乾燥。時速300kmという強風で衣類を乾燥させることで、シワを伸ばしながらの乾燥ができるという機能です。とはいえ、さすがに最大乾燥容量である6kgを乾燥させるとシワシワに。我が家で試した印象だと、2kg以内ならそのまま着られるくらいのシワに乾燥できました。我が家は夫婦2人暮らしなので、2kgというとだいたい2日分くらいの洗濯量です。
2kg以内で洗濯した衣類は、乾燥機にかけたとは思えないレベルのシワの少なさ。とくに綿100%素材のシャツはシワが伸びにくいのですが、かなりキレイに仕上がっています。このあたりは、さすが風アイロンです。
ちなみに、本製品は洗わずに風アイロンだけをかけるスチームアイロンコースも搭載。シャツ2枚程度なら約15分で自動的にシワを伸ばしてくれます。ビシッとプレスしたシャツにはなりませんが、スーツ派の筆者にとっては朝の忙しい時間の救世主となってくれました。
ただし、乾燥に関しては良いところばかりではありません。日立は従来まで乾燥にヒートリサイクル方式を採用し、余った熱も利用することで省エネ性を高めていました。一方、新モデルは低温ヒート式の水冷除湿式を採用。省エネ性は従来より落ちてしまいます。一方、ヒートリサイクル方式をやめたことで、従来一部の環境で発生していた「日立のドラム式はニオイがする」という問題はなくなりました。
乾燥方式は気になるが、トータルで見てとにかくイイ!
1か月じっくり試用してみてわかったのは、いままでフィルター掃除がストレスだったということ。主要メーカーの最新式高機能洗濯乾燥機は「液体洗剤・柔軟剤自動投入機能」「汚れにあわせて洗濯・乾燥時間を自動調整する機能」などを搭載し、いずれもボタン一つで乾燥まで終了する手軽さを謳っています。しかし、フィルター掃除(毎回2か所も!)という手順を必要とするので、ちょっとしたストレスになっていました。大きな負担ではないのですが、この「軽い負担」が積み重なって大きなストレスとなるのが日々の家事です。
新ビッグドラムはらくメンテと洗剤の投入が必要ない洗剤・柔軟剤の自動投入機能、(少々のシワを気にしないなら)アイロンなしで着られる風アイロンとあわせて忙しい家庭にとっての救世主になるかもしれません。