ダイソンは1998年の日本法人設立から25周年を記念し、2023年5月23日に「Dyson Japan 25th anniversary Press conference」を開催。プレスカンファレンスにはダイソン創業者兼チーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏とチーフエンジニアのジェイク・ダイソン氏が登壇し、ロボット掃除機「Dyson 360 Vis Nav」や空気清浄ヘッドホン「Dyson Zone 空気清浄ヘッドホン」などを発表しました。本記事ではその様子をレポートします。
冒頭に登壇したジェームズ・ダイソン氏は、同氏が初めて手がけた掃除機「G-Force」(日本のApex社が発売)が日本で発売されてから日本との縁が始まり、「1998年にはApex社からライセンスを買い戻してダイソン日本法人を設立しました」と語りました。
また、「製品を開発する中で、テクノロジーを駆使して小型化するだけでなく、日本の家庭にぴったりな製品を作ったものが、実は世界的に受ける」(ジェームズ・ダイソン氏)ことがわかったとのこと。
【Dyson 360 Vis Nav】独自モーターと10個のサイクロンで強力な吸引力
新製品として登場したDyson 360 Vis Navは2015年10月発売の「Dyson 360 eye」、2019年3月発売の「Dyson 360 Heurist」に続く3世代目のロボット掃除機です。
毎分最大11万回転する独自開発のDyson Hyperdymiumモーターに、約10万Gの遠心力を生み出す10個のサイクロンのほか、魚眼レンズを用いた「360°ビジョンシステム」で部屋のマッピングや自己位置推定を同時に行ないながら、くまなく部屋を掃除するナビゲーションシステムを搭載しています。
Dyson 360シリーズは本体最前面にブラシバーを搭載する「D型シェイプ」に近いスタイルが特徴ですが、Dyson 360 Vis NavではさらにD型シェイプに近付いています。そのブラシバーは、フローリングから大きなゴミを取り除く柔らかいナイロンブラシ、静電気の発生を抑えて床の溝からホコリをかき集めるカーボンファイバーブラシ、カーペットの奥からゴミをかき取る硬いナイロンブラシの3つを組み合わせた「トリプルアクションブラシバー」を、シリーズで初めて搭載しました。
ルンバのようなサイドブラシ非搭載。でも自動で出てくる「エッジノズル」を搭載
さらに特徴的なのが新搭載の「エッジノズル」です。アイロボットの「ルンバ」シリーズをはじめとして、多くのロボット掃除機は片側面もしくは両側面にサイドブラシを搭載し、壁際などにあるゴミやホコリをかき集める機構を採用しています。しかしDyson 360シリーズは「サイドブラシを横で回転させるとホコリが舞い上がってしまう」(ジェームズ・ダイソン氏)という理由でサイドブラシを搭載していませんでした。
とはいえ、メインブラシバーだけでは壁際のゴミやホコリを取りきれないというのが実情でした。そこで新たに搭載したエッジノズルは、壁を検知すると自動で飛び出し、壁際のゴミやホコリを吸引できるようになっています。
「壁を検知するとエッジノズルが自動的に出てきて、壁の隅までしっかり集じんします。まさに本当のインテリジェントな掃除機です」とジェームズ・ダイソン氏は自信を見せていました。
微細な粒子を1秒間に最大1万5000回計測する「ピエゾセンサー」を搭載し、ゴミの量が多いと検知すると自動的に吸引力を高める機能も備えています。
“ルンバブル”の条件を突破。三度目の正直に期待したいところ
本体はDyson 360シリーズ最薄となり、高さ9.9cmの場所まで掃除できるようになりました。また、デュアルリンクサスペンションを搭載し、最大2.1cmの段差を乗り越えることも可能です。
Dyson 360 eyeは高さ120mm(幅242×奥行き230mm)、Dyson 360 Heuristは高さ120mm(幅230×奥行き240mm)と、コンパクトながら高さがあるため、“ルンバブル”(ルンバが入れる高さ)の家具の下には入れないという弱点がありました。しかしDyson 360 Vis Navは高さ97mm(幅330×奥行き345mm)になったことで、ルンバブルの条件とも言える「高さ10cm」の壁をギリギリ越えています。
ちなみにルンバシリーズの最新モデルの「ルンバ コンボ j7+」は高さ87mm(幅339mm×奥行き339mm)。Dyson 360 Vis Navは、ほぼ双璧レベルにまで仕上がっています。
吸引力の違いや細かい使い勝手について比較することはできませんでしたが、エッジノズルを携えて“三度目の正直”に挑む、ダイソンのチャレンジには期待したいと思います。
【Dyson Zone】高域から低域まで解像感が高く、ANC効きもかなり良好なヘッドホン
ダイソン初のウェアラブル製品となるDyson Zoneは、付属のシールドを取り付けることでパーソナル空気清浄機として使えるオーバーヘッドタイプのBluetoothヘッドホンです。
開発をスタートした経緯についてチーフエンジニアのジェイク・ダイソン氏は次のように語りました。
「センサーを搭載したバックパックを背負って都市部を歩き回る調査をしたところ、大気汚染が大きな問題で、外でもきれいな空気を提供する必要があると気付いたのです。そこで高音質のヘッドホンに空気清浄機能を搭載しました」(ジェイク・ダイソン氏)
ヘッドホンの性能としては、内蔵する11個のマイクのうち8個を使って集音することで周囲の音を打ち消すアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載。マイクは1秒間に38万4000回周囲の音をモニタリングし、最大38dBまで低減できるとのことです。
Φ40mmのネオジムスピーカードライバーを搭載し、周波数帯域は6Hz~21kHz。内蔵バッテリーで最大50時間の再生が可能です。
発表会で試聴してみましたが、高域から低域まで解像度が高く、低域の無駄な突き上げ感のない自然な音作りにとても好感が持てました。ANCの効きもよく、イヤーカップを2回タップすることでANC機能をオン・オフできるのですが、オンにした途端に周囲の音がスーッと消えるのを感じられました。会場のスタッフから「音楽が聞こえますか?」という質問が投げかけられたようですが、その声がほとんど聞こえないほど良好な効き具合でした。
シールドはきれいな空気を吸えるかもしれないけど、においと収納が気になる
付属の取り外し可能なシールドは、ワンタッチで本体前面にマグネットで取り付けられるようになっています。装着するとイヤーカップからフィルターを通して清浄化された空気が口元に流れ込む仕組みです。フィルターは0.1μmの微粒子を約99%捕集する静電フィルターと、酸性ガスなどを捕らえるカーボンフィルターを組み合わせています。
「汚れた空気がイヤーカップ内のフィルターを通して、シールドから99.9%のきれいな空気を直接ユーザーの口や鼻に届けます。外出先でも、公共交通機関や飛行機でも素晴らしい音を聞きながらきれいな空気を吸えるというわけです」(ジェイク・ダイソン氏)
装着してみると、製造されたばかりだからか、新車のようなにおいが感じられました。しばらく使い続けるとにおいを感じなくなるのかもしれませんが、同じにおいがし続けるのは気になるところです。
また、シールドは人の顔の凹凸に合わせてデザインされていることもあり、コンパクトに収納できるような仕組みもありません。ワンタッチで着脱できるのはいいのですが、飛行機などに乗る際にはどのように収納できるのかについても気になるところでした。
空気清浄ヘッドホンとしてはマイナス面も少し気になりました。しかし「空気清浄機をウェアラブルにするためにヘッドホンに付けた」というコンセプトの割に、音質面では高域や低域の無理な協調感のないかなり真面目な音作りをしているのには好感が持てるところです。
ダイソンらしいビビッドなカラーリングにも賛否はありそうですが、かなりチャレンジングでユニークなものづくりもダイソンならではという印象でした。
そのほか、限定カラーのヘアケア製品「Ceramic Pop」シリーズも発表されました。ジェームズ・ダイソン氏いわく「3製品のどれも『G-Force』をオマージュし、G-Forceで使っていたカラーをあしらった」製品とのこと。
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