ライフスタイル
2018/3/16 21:00

俳優・井浦新がこだわる、オンとオフを同時に充実させる方法【前編】

我々働く世代にとって、家庭と同じぐらい大切なのが「仕事」。家族を支えるためにも、毎日仕事がんばるぞ! と言っても、オフの時間もやっぱり大切ですよね。子どもと過ごしたり、趣味に没頭したりする時間があるからこそ、日々に充実感を感じられる。でも実際は、仕事をがんばるとオフの時間が削られ、オフを充実させると仕事が犠牲になりがちで……。

 

そこで今回は、ドラマ「アンナチュラル」など、話題のドラマや映画で活躍しながら、私生活ではカメラをはじめ数々の趣味を満喫しているという、俳優の井浦新さんに話を聞きました。仕事も趣味も充実しているのはまさに理想の生き方。いろいろお話を聞いて参考にさせてもらいましょう。

俳優 井浦 新さん
1974年東京都生まれ。1998年に映画「ワンダフルライフ」に初主演。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。京都国立博物館の文化大使や、「SAVE THE ENERGY PROJECT」のアンバサダー、そしてアパレルブランド「ELNEST CREATIVE ACTIVITY」のディレクターを務めるなど、フィールドは多岐にわたる。現在、TBS1月期連続ドラマ「アンナチュラル」に出演中。今後も映画「赤い雪 RED SNOW」「菊とギロチンー女相撲とアナキストー」など公開が控えている。
[インスタグラム]@el_arata_nest

 

仕事とプライベートの境界線を作らない、という考え方

「井浦さんは、俳優としていろいろな作品に出演されていますが、役者というのは大変なお仕事でしょうね! 映画『ニワトリ★スター』(3月17日公開)では関西弁を話す役どころということですが、撮影前から具体的にやっていたことはありますか?」

 

「今作の場合は、監督のかなた狼さんが吹き込んでくれた音声データを、約2ヶ月間ずっと聞き続けました。今回僕が演じたのは関西弁の役どころだったので、意識せずとも自然に関西弁で話せるところまでいこうということで、大阪出身の監督が自身が延々としゃべる音声データを作ってくれたんです。だから撮影が始まる前の約2ヶ月間は、常にイヤホンをつけ続ける毎日でした。一見音楽を聴いているように見えるけれど、実は監督の声をひたすら聴いている、という」

 

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「それはなかなか大変ですね……。関西弁をマスターするどころか、「もうイヤ!」というふうにはならなかったんですか?」

「夜寝るときも寝落ちるまでずっと聴いていたので、朝ふと目覚めると監督の声が耳から流れ続けている。最悪な目覚めですね(笑)。でも、その声と毎日付き合っているうちに、途中から変な愛着が湧いてきました。その期間は文字とか映画とか音楽とか、自分が好きなものを体が全て拒否してしまって、逆に監督の関西弁が精神安定剤みたいになっていました(笑)。これを聞いてないと呼吸できない、みたいな状況までいってました」

 

comment-father
「壮絶ですね(笑)。いやあ〜役者さんって、そこまでやるものなんですね……」

 

「実は、監督からははじめに「今までの井浦新を1ミリでも見せたら許さんぞ」という言葉をかけられました。要は素の自分、普段の自分の生理的な反応なんかもすべて捨て去って、役になりきれ、と。監督はそう言った後に「わっはっは」と笑っていましたが、その言葉が本気なことは痛いほど伝わってきました。「あ、これは僕を“刺しに”きたんだな」と(笑)」

 

comment-father
「わわわわ、穏やかではないですね(笑)。そもそも、普段の自分をすべて消し去るなんて、常人にはそうそうできることではないです。いったいどうされたんですか?」

「もう本当に『ニワトリ★スター』の住人になるしかなかったですね。芝居ではあるんだけど、その世界の中で生きるというのをどこまで突き詰められるかっていう。要は日常生活を全部捨て、いかにこの作品しか見ていない状況までいけるか。だからこのときばかりは、僕が憧れる昭和の大先輩の俳優さんたちのように生活をするチャンスだと思いました。それというのは、家庭も顧みず、私生活の全てを捨てて作品のためだけに没頭する数ヶ月間。まあ現実的には、なかなかそこまでいくのは難しいですが、いつ監督から刺されるかわからないので、脅されながらやっていました(笑)」

 

comment-father
「井浦さんは、今年でちょうど役者になって20周年を迎えますよね。20年といえば、会社では新入社員が管理職になるくらいの年月です。この長い間に、役者という仕事に対する向き合い方は変わりましたか?」

 

「実は始めた頃は、とくに芝居をやりたいという気持ちは持ち合わせていませんでした。好きでやっている洋服作りというものが別にあって、役者の方はいってみれば思い出づくりのために飛び込んだようなものでした。だから自分の方からこんな役がやりたいとか、こんな監督に出会いたいとか、そういう気持ちはありませんでした。洋服作りと役者の二足のわらじでやっていることに対する後ろめたさみたいなのも感じていて、このまま続けていいのかなと、一時期俳優業から身を引いたこともありました」

 

comment-father
「今のご活躍からすると意外な感じがします。でも確かに、若い頃って仕事で迷うことが多々あるし、“自分がやりたいのはこれじゃない”と違う道を選ぶ人も多いですよね。そんななか井浦さんの場合は俳優業を続けるという選択肢をとったわけですが、なにか転機があったんですか?」

「だんだん芝居、というより映画作りというものが楽しくなってきたんです。現場で難しいことに対して何十人もの人たちが一丸となって取り組んでいく楽しさや充実感。そういう“ものづくりの現場”に対する喜びみたいなものを感じていきました。芝居をする難しさや大変さを真の意味で感じることからくる楽しさがわかるまで、10年くらいかかりました。その辺からなんですよね、なんか自分はすごく面白いことをやっているんじゃないかなって、きちんと言葉にして言えるようになったのは。そこからの10年は、芝居をする楽しさというものを噛みしめながらやってこれた10年だったと思います」

 

comment-father
「なるほど、やっぱり始めた頃とは向き合い方が大きく変わったんですね。今の井浦さんの軸となっているものはなんでしょうか?」

 

「自分にはライフワークと呼べるものがいくつかあるんですが、その軸になっているのが『旅』です。たとえば映画やドラマの撮影現場でも、ちょっと山の方に行くとか、海の方に行くとなれば、自分にとってはそれも旅になってきます。だからロケにはたいてい旅のセットを持っていきます。カメラやノート、ペンなど。カメラは通常コンパクトカメラですが、中判カメラを持っていくこともあります。オンとオフという感覚がもはや崩壊している感じですね」

 

comment-father
「井浦さんの持つ趣味の世界、かなり深そうですね。それにしても、『オンとオフが崩壊している』という気になる言葉……。いったいどういうことでしょう? 後編で、その辺りをじっくり掘り下げて聞かせてください!」

 

ときには私生活のすべてを投げ打ってまで、全身全霊で仕事にのめり込む井浦さん。仕事にのめり込むというのは男として憧れる生き方だけど、その気合いの入り方は半端ではなかった。そんな井浦さんにも仕事で迷う時期があり、それを乗り越え、やり続けてきたからこそ今の楽しさがある、というから勇気付けられる。

後編では、井浦さんの持つ「オフ」の面に迫ってみよう。

 

【出演作品情報】

「ニワトリ★スター」

2018年3月17日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
出演:井浦新、成田凌、紗羅マリー、阿部亮平、LiLiCo、鳥肌 実、津田寛治、奥田瑛二
(C)映画「ニワトリ★スター」製作委員会

 

参ったなぁ……と、いつも困っている「参田家(まいたけ)」の面々。きょうはお父さんがなにやら悩んでいたようです。

参田家の人々
maitake_family
ちょっと気弱なお父さん、元気でしっかり者のお母さん、もうすぐ小学生の娘、甘えん坊の赤ちゃん、家族を見守るオスの柴犬の4人と1匹家族。年中困ったことが発生しては、宅配便で届いた便利グッズや、ご近所の専門家からの回覧板に書かれたハウツー、知り合いの著名なお客さんに頼って解決策を伝授してもらい、日々を乗り切っている。