ライフスタイル
2018/6/11 16:30

落水洋介さん、テクノロジーは人を「幸せ」にしてくれますか?

GetNavi webでは不定期で「テクノロジーは人を幸せにするのか?」をテーマにした記事を発信している。

 

今回取り上げるのは、原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis/以下PLS)と闘う落水洋介さんだ。落水さんは2013年にPLSを発症。PLSは100万人に1人罹るとされる病気で、身体・手足・口が徐々に動かなくなっていく。筋萎縮性側索硬化症(ALS)に比べると進行は緩やかと言われているが、現在のところ効果的な治療法が見つかっていない難病である。

 

発症当初は絶望に打ちひしがれていた落水さんだが、現在は「いまがいちばん幸せ」と語る。そんな落水さんを支えてくれたのがまず、仲間たち。同時に、テクノロジーの力も大きく、特にブログを含む「SNS」と電動車いす「WHILL」の存在だ。こうしたテクノロジーは落水さんをどう幸せにしてくれたのか、彼と馴染みの深い福岡・今泉の美容室「ドゥースモン」で話を聞いた。


↑電動車いす「WHILL」に乗る落水さん。奥の建物の2F部分が「ドゥースモン」

 

【プロフィール】

落水洋介(おちみず・ようすけ)さん。1982年北九州生まれ、在住。大学卒業後、オーガニック素材の化粧品メーカーで営業・商品開発の職に就く。2013年にPLSを発症し、少しずつ身体・手足・口が動かなくなり、電動車いすにて生活。現在は、北九州などの学校へ行き、地域の職業人と一緒にキャリア教育の講師や、ユニバーサルマナー講師などを務める。また、学校や企業での講演活動やライブイベントへの出演なども精力的に行っている。

 

優れたテクノロジーとデザインは「車いす=かわいそう」を「車いす=かっこいい」に変える

――PLSを発症後、落水さんは電動車いす「WHILL」に乗られています。やはり、落水さんにとって「WHILL」の存在は大きいですか?

 

「ひとりで外出するには車いす、特にWHILLがどうしても必要だったんです。そうじゃないと、家に閉じこもって、ふさぎ込んで、孤独になってしまう。僕は今後症状が進行していくと、自分だけでできることが少なくなっていきます。だから動けるいまのうちに、自分ひとりで外出して、色々な人に会って仲間を増やさないと、と思っていました。

一般的な車いすだと、4.5センチ程度の段差も乗り越えられないんです。4.5センチっていうと、本当にちょっとの段差も乗り越えられない。でもWHILLだと公式では7.5センチと言っているけど、実際は10センチ近くまで越えられて、行動できる範囲が一気に広がります。あと、小回りもきいて、あまり考えずに移動ができるんです。10センチという性能的な数字以上に、「行きたい場所に行ける」とテクノロジーが自信を与えてくれる――これは僕にとって非常に心強いです。

 

あと、WHILLはデザインも優れているんです。

 

WHILLを手に入れる前まで、車いすで外出しても、街行く人は目を合わせてくれてなかったんです。「かわいそう」「大変そう」「手伝ったほうがいいかな」というのが、びっくりするぐらい伝わる。でも、WHILLになってからはそれがない。「車いす=かわいそう」の目線で見られていたのが、「この車いす=かっこいい」になって、街に溶け込める。かっこいい自転車、かっこいいクルマに乗るのと同じ感覚で、まわりの人が見てくれるようになり、この乗り物で外に出かけたいという気持ちにさせてくれたんです」

 

――WHILLを手に入れるまでも七転八倒の苦しみがあったとお聞きしています。

 

「症状が出始めて、車いすが必要になったのですが、病名がわからなくて助成金が受けられませんでした。病院や役所にいっても『無理無理』とたらい回しにされて。『なにくそ、絶対に手に入れてやる』と意気込んでいたんですが、だんだんと病院や役所の対応に笑えてきて、それをSNSで面白おかしく発信するようになりました。そうしたら、SNSの投稿を見た友たちがシェアして、またその友だちがシェアして、それがどんどんと広がっていったんです。純粋に僕は勇気づけられたし、ありがたいことにアドバイスをくれる人もいて、申請や必要書類のサポートまでしてもらうことができました」

↑2016年1月に最初の申請を出して、実際に助成が下りてWHILLを手に入れたのが2016年の8月。助成に関しては、子ども時代にサッカーを一緒にプレーした大久保嘉人選手(川崎フロンターレ)のゴールパフォーマンスの存在も大きかったという
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