ライフスタイル
2018/8/1 17:00

電気自動車(EV)で尾瀬と再生可能エネルギーの源を巡るエコな旅

そして尾瀬探索へ――元はダム建設の計画もあった!?

翌朝8時過ぎ、ツアーの一行は尾瀬探索へと向かった。実はここに今回の旅の狙いが隠されていた。というのも、実は尾瀬の約4割が東京電力の所有地なのだ。もともと水力発電のためにこの一帯を取得したとのことだが、観光客の増加や住民の反対などもあり、ダム建設は計画を断念。さらに国立公園特別保護地区に指定され、開発は事実上不可能となった。それでも、東京電力は土地を手放すのではなく、尾瀬の自然を保全するという立場で尾瀬の土地を守り続けてきたというわけだ。

 

ここで意外な話を聞いた。中高年の世代にとって尾瀬と言えば自然の宝庫として知らない人はいない。そう思っていたが、最近の若い人たちはこの尾瀬そのものをよく知らないのだという。というのも、筆者が音楽の授業で習った「夏の思い出」には水芭蕉を含む尾瀬の光景が歌われているが、最近の音楽の授業ではこの歌が歌われなくなってきているというのだ。つまり、尾瀬そのものを特に意識することがなくなれば、その知名度はどんどん下がる。最盛期には70万人が訪れていたが、いまでは30万人程まで減ってしまっているのもこうした背景があったのだ。

 

しかし、尾瀬ヶ原に入るとその風景は想像していた以上に素晴らしかった。広大な湿原のなかに木でできた遊歩道が延び、前後に燧ケ岳(ひうちがだけ)と至仏山(しぶつさん)がそびえる。周囲には池や白樺も点在し、時折吹く風が池の水面でさざ波や木々の揺れを作り出す。聞こえるのは風の音と鳥の囀りぐらい。その静けさは話す声もつい控えてしまうほどだ。この日はすでに尾瀬のシンボルとも言える水芭蕉は葉っぱが広がってしまい、本来のシーズンは終わってしまっていた。とはいえ、「ニッコウキスゲ」や「ヒオウギアヤメ」など、数々の花が咲いていたのは収穫だった。

↑尾瀬ヶ原から燧ケ岳を望む。標高は2356mで東北一の高さを誇る。燧ケ岳の噴火によって川がせき止められ、尾瀬湿原を作り出したと言われる

 

↑南に立つ至仏山。標高は2228mで山頂から眼下に見る尾瀬ヶ原は特に素晴らしいという

 

↑尾瀬ヶ原は湿地帯であるだけに小さな沼も数多く点在。これが尾瀬の風景を映し出して広がりを感じさせていた

 

↑7月ともなると水芭蕉の見頃はとうに過ぎていて、大きな葉っぱに育ってしまっていた。見頃は6月初旬だという

 

↑ニッコウキスゲ

 

↑ノアザミ

 

↑コオニユリ

 

↑カキツバタ

 

遊歩道に見る、自然環境への配慮

自然風景以外で注目したいのが、遊歩道に使われている木材だ。よく見ると1枚の木材ごとに、東京電力や群馬県、福島県、新潟県など設置した団体名と、設置年が刻印されている。木材である以上、一定期間が経てばやがては朽ちてくるのだが、長持ちさせるためのニスなどの化学薬品は一切使わない。環境に影響を与えないよう、最大限の配慮が徹底されているのだ。もし、尾瀬を訪れることがあれば、遊歩道の木材を確認してみるといい。

↑尾瀬ヶ原のなかを走る遊歩道はすべて天然木を無加工で使う

 

↑遊歩道に使われる板には1枚ずつ、東京電力や群馬県、福島県、新潟県など設置した団体名と、設置年が刻印されている

 

↑遊歩道のところどころには熊に存在を知らせるため、鐘を鳴らす設備が設置されている

 

↑遊歩道の途中には、パワースポットを思わせる自然の岩も見られた
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