連載:里崎智也の「下克上人生相談」
強打の捕手として千葉ロッテマリーンズで16年間プレーし、2度の日本一に貢献。2006年のWBCでは正捕手として世界一&大会ベストナインも受賞した里崎智也さんが、読者の悩みをズバッと解決する。第5回目はケガや病気で離脱したときの心構えを伝授!
【今回のお悩み】
入社して早々に交通事故に遭ってしまい3か月の入院生活を送ることになりました。病院内でどのように過ごすべきでしょうか?
今年の4月に入社したばかりの新入社員ですが、先日交通事故で大きなケガを負い、3か月間も入院することになってしまいました。会社の先輩は焦らずに治せと言ってくれますが、その間に同期の仲間がバリバリ仕事を覚えていると思うと落ち着きません。体調は良いだけに、病院で何かできることはないでしょうか。
(20代・女性・会社員)
「10年後」を考えれば3か月の離脱はささいなこと
会社員でもプロ野球選手でも、「10年後にどうなっているか」という視点を持つことが大切。目先の利益にこだわる人は成長しません。短期・中期・長期のビジョンを描いて、それに応じて自分をマネジメントしていくかを考えている人にだけ、成功するチャンスが与えられます。もちろん、今回の交通事故のように不測の事態が起こることもあるでしょう。そんなときでも、ビジョンさえしっかりしていれば、「いま何をすべきか」が見えてくるはずです。どうあがいたところでケガをしたという事実は変わらないので、できることをするしかありません。
相談者さんは入院したといっても体調が良いということなので、スキルアップのためにできることはたくさんあります。例えば語学。英語でも中国語でも、3か月間、毎日死ぬ気でやればかなり上達するはずです。それ以外で仕事に役立つ資格を取るための勉強をしても良いし、仕事に直接関わらなくても自分の武器になるようなスキルを身に付けることはできるはず。目標と意欲さえあれば、やることはいくらでもありますよ。
たった3か月離脱しただけで、同期の社員に仕事で差をつけられることはないので安心してください。「10年後」までは120か月もあるんですよ。そのうちのわずか40分の1を気にするのはナンセンスでしょう。
離脱した野球選手の多くが「ケガして良かった」と言う
「回り道をしたからこそ見える景色がある」という言葉があります。たとえ遠回りになったとしても、いつもと違う道を通ることで「ああ、ここにこんなものがあったんだ」と気づくことがあるわけです。もっとも、ボケッと歩いていては、時間がかかるだけで何の意味もありません。やるべきことをやっているからこそ見えてくるのです。
僕が現役のころにケガで戦列を離れたときは、ケガをした部位を使わないトレーニングをしたり、対戦相手のデータを勉強したりしていました。復帰するときに「最低でも休む前より成長する」ことを自身に課していたので、のんきに過ごすということはありえませんでした。だからといって、他人のことを考えて焦っても仕方がないので、自分の能力を伸ばすことだけを考えましょう。
大ケガで離脱したことのあるプロ野球選手の多くが、「あのときケガをして良かった」と言います。もちろん、そのときにきっちりとやるべきことをやり、復帰したあとに思うような成績を残したからこそ、そう思えるわけです。遠回りしたことをいい経験だったと思えるように、10年後の自分を思い描きながら、いまやるべきことに焦らず励んでほしいと思います。
【これで下克上せよ!】
「他人のことはあれこれ考えず自身の能力を伸ばすことに専念!」
今月の野球“知っ得”ネタ!!
大ケガからの復帰後にキャリアハイをマーク
1999年の左手首骨折、04年の左半月板損傷など、里崎さんは現役時代にケガによる手術を4度も行った。復帰後の06年には、WBCでのベストナイン受賞に加えて、ペナントレースでも活躍。ゴールデングラブ賞とベストナインに輝いた。
【PROFILE】
里崎智也さん
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工、帝京大を経て98年ドラフト2位でロッテに入団。05~10年まで6年連続2桁本塁打を放つなど、強打の捕手として活躍した。現在は野球解説、講演活動、執筆などマルチに活躍中。
里崎さんに聞いてもらいたいお悩み大募集!
人生、仕事、恋愛、お金など、里崎さんに聞いてもらいたいお悩みを募集しています! 詳しいお悩みを次のアドレスまでお送りください。getnavi@gakken.co.jp
文/山西英希 撮影/佐坂和也 ヘアメイク/宮田裕香子 スタイリング/佐々木誠 題字/道口久美子
衣装協力/ザ・スーツカンパニー 新宿本店