しかし、未来のベビーカーを考えるうえで大切なのは、モノの進化だけではありません。IoTやAIは便利な反面、それらに頼りすぎると危険です。この点をきちんと指摘したのが千葉工業大学のチーム。IoTの導入によって感情が希薄化する恐れがあると言います。
例えば、ベビーカーを使って散歩に出かけるとき、AIの分析だけでルートや予定を立てると、その分達成感が薄くなることが考えられます。その理由は、親が子どもの好きなものや興味をきちんと考えないで、機械任せに散歩コースを決めたから。このような考えから、千葉工業大は「親が子どもとの一体感を感じられる形」を提案しました。そのなかでは親が子どもの視点に立って考えることがポイントになっています。
千葉工業大の指摘は、今回のコンテストで「自動運転」が出てこなかった理由のひとつかもしれません。クルマ業界の大きなトレンドのひとつである自動運転。劇的な変化を起こすなら、そんな機能を搭載するベビーカーのことを想像してみたっていいかもしれません。大切な子どもを乗せたベビーカーから手を離すなんて危険だと誰もが思いますが、クルマは明らかにその方向に向かっています。では、ベビーカーは?
テクノロジーの進化は、いつも新しいものに対する不安や拒否感を伴います。例えば、クルマのシートベルトが1950年代後半に義務化されたとき、当時の人々はそれに反対しました。しかし、今日ではシートベルトを着けることに誰も反対しません。シートベルトの安全性が社会で広く理解されたからです。クルマとの比較は少し強引かもしれませんが、このような歴史はベビーカーの技術革新にとっても示唆的でしょう。
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会場にいた人たちにいろいろな気付きを与えた今回のコンテスト。ピジョン開発本部の主任研究員である加藤義之さんは、ベビーカソンで「忘れていたものに気がついた」と述べていました。最先端テクノロジーを搭載した革新的なベビーカーが誕生するのは、まだ先のことかもしれません。しかし、ベビーカーにも地殻変動が起きる予感がします。