「予期せぬ病気で働けなくなったらどうしよう……」「退職するまでに、老後資金を貯められるのだろうか?」━━不測の事態や大きな出費に備える“保険”はたくさんありますが、当然、保障が手厚いものほど、月々に支払う保険料は高額になります。「人生100年時代」と言われる超長寿社会を生きていく中で、どんな保険を契約し、いくら掛けるべきなのでしょうか。
ただし、保険には専門用語が多く、形のない商品でありながらシステムが複雑でややこしいところがあります。そこでアットリビング編集部では、『「保険に入ろうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)の著者で、ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに、自分にぴったりの保険を見つける方法を、教えていただきました。
そもそも「保険」とはどういうもの?
まず、保険とはどういう目的で利用するものなのか、その役割と注意点を整理しておきましょう。「保険とは、大きな資金が必要となる事態に対して、公的保障だけでは足りないお金を用意するための合理的な手段です。そのため、年齢や家族構成、ライフスタイルの変化により、必要となる保険内容が変わってきます。一度入れば安心というのではなく、定期的に契約内容の見直しをしていくことが大切です」(ファイナンシャルプランナー・竹下さくらさん、以下同)
いくらまで掛けるべき?
保険のメリットは、少額の掛け金で、いざというときに高額の保障を受けられることです。一方、あくまで“もしも”の事態に備えるものなので、掛け捨ての場合は、“もしも”が起きなければコストがムダになる、というデメリットも。
「掛け捨て型なのか貯蓄型なのか、保険の内容にもよるので一概には言えませんが、月々の保険料の支払いは、保険料の合計で手取りの1割程度におさめておくのが妥当です。保険料が高額で貯蓄ができない、ということに陥らない範囲で選ぶようにしましょう」
どんな種類・内容があるの?
保険には、目的によってさまざまな種類があります。そこで、主な商品例をピックアップしていただきました。「主な商品例では、20〜30代後半世代の保険料が比較的安価で、保障内容が充実しているものを挙げています。年齢や掛け金、契約期間などで保障内容は変わってきますので、気になる商品はウェブサイトで内容をチェックしたり、資料請求をしたりしてみることをおすすめします」
【1】人の命に関わる保険
生活費を補うために掛ける保険です。被保険者(保険を掛けられている人)が亡くなったときに支払われるものと、被保険者が生きている場合に支払われるもの、どちらの場合にも給付されるものがあります。
■死亡保険(①終身保険、②定期保険、③収入保障保険)
■生存保険(④個人年金保険)
■生死混合保険(⑤学資保険など)
【主な商品例】
①終身保険
「終身保険は、中途解約をすると損をするタイプになるので、月々の支払額に無理のない範囲での契約が賢明です。そのため、数千万円もの高額な保障を期待するよりも、お葬式代の確保や学資保険代わりに数百万円程度の保険金額で活用するのが好ましいですね」
・オリックス生命「RISE(ライズ)」
・マニュライフ生命「こだわり終身保険V2」
・FWD富士生命「Eー終身」
②定期保険
「一定期間の間に亡くなった際に、死亡保険金が支払われるものです。お子さんが成人するまでや、働き盛りの収入が途絶えるのを防ぐ目的で活用します。勤め先に団体定期保険がある場合、そちらの保障内容と比較して検討をしましょう」
・メットライフ生命「スーパー割引定期」
・チューリッヒ生命「定期保険プレミアムDX」
・オリックス生命「ファインセーブ」
③収入保障保険
「『毎月○万円』『毎年○万円』など、死亡した時点から満期まで、家族が保険金を年金として受け取れます。死亡保険金をまとまった形で受け取るのではなく、小分けにして支給してほしい場合におすすめです」
・三井住友海上あいおい生命「&LIFE新収入保障」
・FWD富士生命「無解約返戻金型収入保障保険Ⅱ」
・ネオファースト生命「ネオdeしゅうほ」
④個人年金保険
「払い込んだ保険料を保険会社が運用して増やした原資を、年金の形で受け取るものです。JA共済の商品は農林水産省管轄の商品で、基本的に農業従事者を対象としていますが、員外利用の枠が空いていれば会社員でも契約できる上に、お得な利回りなので狙い目です」
・JA共済「ライフロード」
・明治安田生命「年金かけはし」
・住友生命「たのしみ未来」
⑤学資保険
「学資保険はお子さんの教育資金を確実に確保する目的で支持されています。払い込んだ額からそれほど増えるものではありませんが、お子さんのための資金だと思うと、途中解約せずに続けられるという方が多いようです」
・日本生命「ニッセイ学資保険こども祝金なし型」
・ソニー生命「学資保険Ⅲ型」
・住友生命「スミセイのたのしみキャンパス」
【2】人の身体に関わる保険
病気やケガなどにより発生した高額な医療費を補うためのものや、働けなくなってしまった場合に、生活費として毎月一定額の給付金を得られるものがあります。
⑥医療保険・がん保険
⑦就業不能保険・所得補償保険など
【主な商品例】
⑥医療保険・がん保険
「医療保険の中には、がんと診断されたときでも治療費が支給されるタイプが増えています。また、がん保険に医療保険の特約が付いているものも多くなりました。がんの治療は費用がかかるので、がんを患ったときのために備えておきたい方は、がん治療のみに絞ったタイプを選ぶと合理的です」
【医療保険】
・はなさく生命「はなさく医療」
・三井住友海上あいおい生命「進医療保険Aプレミア」
・日本生命「NEWin1(ニューインワン)」
【がん保険】
・ライフネット生命「がん保険ダブルエール」
・チューリッヒ生命「終身ガン治療保険プレミアムDX」
・メットライフ生命「ガードエックス」
⑦就業不能保険・所得補償保険
「病気やけがにより働けなくなった場合の収入を確保するための保険です。勤め先の保険で長期団体所得補償保険がある場合、この保険では網羅されないメンタル系の疾患が手厚い傾向が見られます。保障内容を比較して検討しましょう」
・アクサダイレクト生命「働けないときの安心」
・ライフネット生命「働く人への保険2」
・日本生命「もしものときの・・・生活費」
【3】物に関わる保険
自動車や家などの財産が、事故や自然災害でダメージを受けた際に、修理や修復費用として支給されます。
⑧自動車保険
⑨火災保険・地震保険
【主な商品例】
⑧自動車保険
・イーデザイン損保「自動車保険」
・ソニー損保「自動車保険」
・SBI損保「自動車保険」
⑨火災保険
・ソニー損保「新ネット火災保険」
・セゾン自動車火災「じぶんでえらべる火災保険」
・三井住友海上「GKすまいの保険」
「思わぬ事故や火災などで高額な損害賠償責任を負ったときや車や家財が損害を受けたときにお金を受け取るものです。どちらの場合も、数千万円もの多額の損害賠償を求められるケースがあるため、必ず入っておくべき保険です」
【4】賠償責任に関わる保険
日常生活の中で他人の物を壊してしまったり、ケガを負わせてしまったりなどの損害賠償が発生したときに役立ちます。
⑩個人賠償責任保険
【主な商品例】
⑩個人賠償責任保険
「一般的には特約の形で付けられるものを選ぶといいでしょう。日本生命の『まるごとまもる』は独立しためずらしいタイプの商品です。こちらは、電車を止めてしまった場合の補償が付いていることが大きな特徴になります」
・日本生命「まるごとマモル」
※自動車保険や火災保険、傷害保険の特約として付いていることが多い。
※子どもの園・学校などで入る総合保険についていることが多い。
※賃貸暮らしをしている人は、家の賃貸契約時に加入する火災保険に特約で付いているのが一般的。
以上、どんな保険が用意されているのか、種類と内容をピックアップしてもらいました。つづいて、ライフスタイルによって、どんな保険に優先的に入っておくべきか解説していただきましょう。