覗けば深い女のトンネルとは? 第1回「イケメンの撮影で女の妄想は大暴走」
突然ですが、みなさんに質問です。例えば、こんなシチュエーションがあったとします。
~とある場所で、イケメンモデルの撮影が行われていました。それを見学しにきた私(女子)~
さて、このあといったいなにが起こるでしょうか? 少し考えてみて下さい。ちなみにこの場合、女子が想像する展開はだいたい同じです。
はい、それではこれから答えをお伝えしますね。女子の妄想は、だいだいこんな風に展開していきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私が撮影を見学していると、プロデューサーのような女性がやってきて、
「彼女、可愛いわね。ちょっとこっちに来て」
と私の腕を引っ張りました。「えっ、どういうこと?」と思っていると、プロデューサーは私をイケメンの隣に立たせ、
「うん、やっぱりカップルの方が雰囲気出るわ。ねぇ、メイクしてあげて」
と言うのです。
「困ります、私、ただ撮影を見学してただけで……」
と辞退しようとすると、イケメンが私の肩を抱いて言うんです。
「ねえ、俺、早く撮影終わらせたいんだよ、大人しくしててくれない?」
それから、ヘアメイクさんがやってきて「やだー、お肌キレイ!」と言いながら私にメイクをしていきます。
わけがわからないまま、フラッシュを浴びる私。イケメンはまったくかまわずに、私に顔を寄せたり、肩を抱いたり。
(や、やだ……あまり近づかないで、顔が近い……!)
もう、恥ずかしくてたまりませんでした。
めくるめく撮影が終わり、私はプロデューサーに聞きました。
「これ……、何の撮影ですか?」
「ああ、ファッション誌の企画ページだよ、大丈夫、そんなに大きく使わないから」
その言葉に安心して、私は自宅に帰りました。ですが、本当の問題が起こるのは、これからだったのです。
(数日後)
とある朝、私は登校して教室の扉を開けると……(そう、私は高校生なのです)。クラスの女子が一斉に私のほうに振り向きました。
「ちょっと、○○○(私の名前)! あんた、これ見た?」
彼女たちが手にしているのは、いま一番人気のファッション雑誌「Z」。そしてその表紙は……、なんと、この前撮影したイケメンと私のツーショット写真だったのです!
「えっ……、やだ、どうして!?」
私は衝撃のあまり、うまく言葉を発することができませんでした。
クラスメイトたちは、
「撮影したなんて全然聞いてないよ、なんで黙ってたの?」
「このイケメンと知り合いなの?」
「あんた、自分がかわいいとでも思ってるの?」
と詰め寄ってきます。
「だって、その……」
しどろもどろになっていると、教室の扉が勢いよく開きました(ガラッ!!)。
なんとそこには、例のイケメンが立っているのです。しかもよく見てみると、うちの学校の制服を着ているではないですか。
「え……、あなた、うちの学校の生徒だったの?」
ざわつくクラスメートたち。その後「生意気だ」と私がいじめられているところに、イケメンが助けに来てくれました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と、まぁこんな感じで「イケメンの撮影風景を見に行く私」というだけで、だいたいここまでは一気に話を進めることができます。これが女子というもの。
「イケメンの撮影風景を見に行く私」だけでは、どんな想像すればいいかわからない女子でも、「そこにプロデューサーが近づいてきた」とヒントを与えればその先はピーンとくるはず。
なにしろこのシチュエーションは、少女マンガでは王道のストーリーなんです。すぐに思いつくタイトルは『花より男子』。このマンガでこの手のシーンを読んだときには、「またか」と思ってしまうほど、ほかにもジャラジャラ同様のシーンが描かれているのです。
今回の妄想のポイントは「決して自分から進んで雑誌に載ったのではない」ということ。「たいして美人でもないのにアイドルになりたがってる痛い人」なんて思われたら、女子の世界では生きていけません。
だけど実際は、イケメンにチヤホヤされたり、あわよくばモデルになってキレイな格好でメディアに載ったりしたいもの。「突然撮影されることになっちゃって困った私」妄想は、こうした女の欲求をなだらかに満たしてくれる素晴らしい展開なんです。
でもこれって、誰も傷つかないでしょ? しみじみ、女の妄想って罪がないけど豊かだわ。