「レザーマン」はアウトドアを中心に高い人気を誇る機能的なマルチツールブランドです。その歴史は1983年、アメリカはオレゴン州ポートランドから始まります。創業者であるティム・レザーマン氏が新婚旅行中にクルマやホテルでのトラブルに遭遇し、その状況を克服できるプライヤーを備えたマルチツールの開発を思い立ったのがきっかけ。その後、数々の名作を世に送り出し、精密でありながらも屈強なツールたちによってトップブランドとしての地位を確立しています。
そして先日、新時代のレザーマンを予感させる新作モデル「TREAD」の発売に先駆け、ベン・リヴェラ社長が訪日。多忙なスケジュールの合間を縫って、GetNavi webのインタビューに対応してもらいました。
今回、日本国内での発売が決まったTREAD。既存のマルチツールとは一線を画するデザインは、ブレスレットを彷彿とさせるスタイルを持ち、連なるコマのひとつひとつがツールとして高い機能を発揮します。日本国内で発表されると同時に予約が殺到し、ファーストロットは完売。驚異的な人気を博するTREADは、どのような経緯で開発されたのでしょうか?
「家族とディズニーランドへ出かけたとき、入場のセキュリティで持っていたマルチツールが危険だということで入場を拒否され、ホテルへと強制的に帰されてしまいました。当時は9・11テロの影響で、セキュリティがナーバスになっていましたからね。仕方はないとは思うのですが、どんな場所でも携帯できるマルチツールがあれば……と考えるようになり、最終的に辿り着いたのがTREADです。TREADには数多くの工具が用意されていますが、ナイフはありません。ですから、飛行機の機内にも持ち込むことができるのです。もちろん、ディズニーランドにもね(笑)」
ブレスレットのようにデザインされたTREADですが、苦労されたポイントはどのようなところだったのでしょう。
「TREADは小さな工具をブレスレットのコマとして連結させています。すべてのコマに高い強度を与えることは当たり前ですが、コマをつなげるためにはひとつひとつを高い精度で作り込む必要があります。TREADのコマは射出成型という方法で作っているのですが、焼き入れなどを終えた完成品は21%ほど収縮してしまうので、10型あるパーツのサイズをキッチリと合わせるには高い技術力が必要になります。完成に辿り付くまでは、試行錯誤の繰り返しでした」
TREADはベン社長の発想から生まれた商品ですが、なぜブレスレット型になったのでしょうか?
「ブレスレット型ではあるのですが、開発のイメージはバイクや自転車のチェーン。ひとコマひとコマが動くことで素早く工具を変えて行けます。ブレスレットとして身に着けることで、素早くトラブルに対処することができるのは大きな魅力です。バイクや自転車など、収納場所が少ないものでも気軽に携帯できる工具がTREADなのです」
マルチツールとして大きな成功を収めているレザーマンですが、既存のモデルとは全く異なるデザインを採用したTREADとは、どんな存在なのでしょうか?
「例えばiPhoneはトラブルに対処する方法を教えてくれますが、TREADは現実に遭遇したトラブルを目の前で解決してくれる”ウエアラブルな工具”なのです。既存のツールは使える場所に制約がありましたが、TREADは飛行機の中にも持ち込めるので、ナッツの袋を開けたい……などの小さな欲求をその場で満たしてくれるのです。私はマルチツールの魅力は対応力だと考えています。困った場面を簡単に乗り切る“利便性”こそが、マルチツールの役目なのではないでしょうか。このTREADをファッションアイテムと思って甘く見ないで欲しいですね。使ってみれば、そのパフォーマンスに驚くはずです。今後は工具としての可能性をより充実させ、スノーボード、サーフィン、ハンティングなど色々な趣味に対応できるTREAD専用のパーツを増やして行きたいですね」
短い時間ではでありましたが、レザーマンの代表としてTREADの素晴らしさを語って下さったベン社長。その笑顔の奥には、マルチツールのトップブランドを率いる自信と責任を感じることができた。ブレスレットタイプのマルチツール「TREAD」の登場によって、レザーマンは新たなる扉を開いたといえるでしょう。
*アメリカでは航空機内への持込みが可能なTREADですが、日本国内では受諾荷物として航空会社にお預けされるスーツケース等での輸送をお勧めします。