覗けば深い女のトンネルとは? 第4回「コンプレックスは口に出さなきゃ気にならない」
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が人気ですね。あのエロ大魔神みたいな星野源さんが、オクテで女慣れしてないウブな三十路男性を演じているというのがまず面白いです。本人もノリノリなんだろうなあ。エンディングの「恋ダンス」も、トライしてみたくなる難易度のダンスでカワイイです。しかもドラマのストーリーは原作をうまくアレンジしていて、脚本も上手い。
・・・・・・とまあ、人気要素たっぷりの作品ですが、とにかく平匡さんがめっちゃ好みです!! 原作もドラマも。控えめで冷静で、勉強もできて、仕事も真面目そう。地味目だけど清潔感があって、話はきちんと聞いてくれるし、前向きだし、もういますぐ結婚したいです。もちろん女性向けマンガに登場するキャラだから、女ウケするに決まってるんですよね。だけど、平匡さんも女子の妄想の産物だろうなと思ったりします。
ちょっと平匡さんから話はそれますが、多くの女性は美容やファッションに熱心ですよね。これは女性が常日頃から、男性の視線を浴びる「客体」だからです。芸能人は、メディアに出れば出るほどみるみる垢抜けていくじゃないですか。あれも同じ。人から見られることで、「これはおかしいのかな」「これはいいのかな」と客観的に自分を見るようになるのです。女は「見た目」を意識せざるを得ない環境にあるんですね。こうして芸能人はもちろん、男性たちから視線を浴びることが多い世の女性たちは、せっせと外見を磨くことに腐心します。
だけど逆に女は、男性ほど世の中のあらゆる異性をエロの対象としてシゲシゲ見たりしません。イケメンのことは「きれいねえ」と思ってシゲシゲ眺めるかもしれないけど(なのでイケメンたちはさらに見た目を意識するようになるでしょう)。一方で、世の中で視線を集める機会の少なかった男性は、びっくりするほど見た目に無頓着なことがあるようです。
例えば、『31歳ゲームプログラマーが婚活するとこうなる』(御手洗直子)のプログラマーさんは、婚活をするまで、想像を絶する汚らしさだったみたいです。婚活相手に「臭い」と注意されるって、どんだけですか。風呂も入らず、洗ってもない服を着て外に出るとか、マジで意味がわかりません。婚活をするようになってようやく、着るものや髪型を意識するようになったようです。生まれて初めて、自分が「客体」でもあることを意識したんですね。
身体的なコンプレックスは、たいていの人にはあると思います。でも女は「身長が低い男」「ブサメン」を嫌うのではないんです。身長が低いことやブサメンであることを気にしてウジウジしている人が面倒くさいんです。「身長高い方が女性は好きだよね……?」とか言われても、返事が面倒くさいです。そんなもの気にせず、すがすがしく勉強したり仕事したりしている男性は一緒にいて楽しいですし、フツーにモテます。つまり、コンプレックスはわざわざ口に出さなきゃいいんです。
人って、コンプレックスやプライドを隠そうとすると、つい相手を見下した発言をしてしまうもの。自分をアピールしようとして、まわりに文句を言ったり、自分の話ばっかりしてしまったり。でも平匡さんは、女性慣れしてなくてワタワタしてるけど、女やみくりを見下したりはしません。
というようなことを考えると、それまで目立って客体になったことがなかった平匡さんが、見た目や行動に粗相がなくて、チャーミングで魅力的だなんて、もう奇跡ですよ。女性経験がないことはコンプレックスみたいだけど、深くつき合うまではそんなそぶりも見せないし、「お前、なんでいままで誰もいなかったの?」と胸ぐら掴んで聞いてみたいです。
まあ、ウブですれてないのがいいだなんて、おじさんの処女信仰みたいなものでしょうか。不器用男子は若い女性には受けないかもしれないですね。