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2024/3/8 11:00

20年ぶりの犯罪増加、対応は大丈夫? 最新防犯カメラの性能とその効果

新型コロナの影響による自粛モードも明け、人の流れが増えたことを背景に、犯罪が増加傾向にあると警察庁の発表データにより明らかになりました。刑法犯の認知率は、2021年の最小認知件数から2年連続で増加し続けており、前年比では17%もの増加になったとのこと(参照:警察庁)。内訳をみると、なかでも路上強盗やひったくりなどの街頭犯罪が前年より21%の大幅増加となり、殺人や強盗などを含む重犯罪の認知率は30%近くの増加を記録しました。

 

また、本稿のテーマとなる各家庭を対象にした「空き巣」や「住居侵入」といった犯罪では、それぞれ11.8%増、11.7%増と、こちらも高い増加率となりました。このことから、一般家庭での対策の必要性が増していると言えます。

 

個人の防犯対策として比較的に取り組みやすいのが防犯カメラの設置です。しかし、実際に一般家庭に防犯カメラを設置するとなると性能や選び方を迷いますよね。そこで本記事では個人用防犯カメラの性能について見ていきます。

 

家庭に設置する防犯カメラの性能

まず注目すべきは、画質です。一般的には画素数が大きければ大きいほど綺麗な画質で記録できます。ひと昔前までは41〜52万画素といった低解像度が主流でしたが、デジタルカメラが普及した現在では、有効画素数が200万〜400万(フルHDからフルHD+)の防犯カメラが家庭用として売れ筋です。

 

フルHD(1920×1080ピクセル)といえば、地上デジタル放送に近い画質(※)。撮影した映像を部分的に拡大しても、画像が荒くなりづらいレベルです。顔の識別や車のナンバープレートなどの確認も可能であるため、まずはこのスペックの機種を検討するといいでしょう。

(※)地デジ放送の実際の画質は1440×1080

 

400万画素のフルHD+となれば、さらに鮮明な映像が撮影可能になります。犯罪者の手元など細部までしっかりと映し出されるレベル。一度でも被害経験がある場合や、近隣で犯罪が発生している場合は、犯人の証拠保全のためにもこちらのスペックが有効です。

 

因みに、業務用ではさらに画素数の大きい4K(800万画素クラス)や8K(3300万画素クラス)の防犯カメラも登場しています。

 

夜間の防犯カメラの性能は?

続いて注目したいのが夜間・暗所性能や防塵・防水性能といった機能です。防犯カメラには屋内設置用と屋外設置用のタイプがあり、屋外設置用であれば、一般的にこれらの機能を保有しています。

 

夜間・暗所性能を有する防犯カメラは、赤外線を使って撮影する機種もあります。赤外線は人に見えない特殊な光であるため、暗い場所でも撮影が可能。以前は赤外線カメラで撮影した画像は白黒になっていましたが、近年では暗闇でもカラー撮影が可能な赤外線カラー暗視カメラも登場しています。

 

また、一部のモデルではカメラ本体にライトや人感センサーを搭載しており、センサーが感知すると自動でライトを点灯し撮影する機種もあります。ライトが付くことで撮影に必要な明るさを確保するだけでなく、不審人物を近づきにくくする効果も期待できるでしょう。ただし人通りが多い場所に設置すると、頻繁にセンサーが反応してしまい、近隣トラブルになる場合もあるので注意が必要です。

 

録画方法は?

最後に注目するのが録画方法です。以前はカメラに接続したHDDレコーダーやメモリーカードに録画されるのが主流でしたが、現在ではネットワーク接続でクラウドに保存できるタイプも増加。スマートフォンなどを使用して、リアルタイムで映像をチェックできる機能も一般化してきました。旅行や仕事などで外出中でも、気になったときに確認できるため便利です。

 

なお、パナソニックからはテレビドアホンとワイヤレス接続できる防犯カメラが発売されています。ドアホンで映像が確認できるため、パソコンやスマートフォンの操作に慣れていない高齢者でも利用できるシステムといえるでしょう。

 

防犯カメラの設置は抑止力となり得るの?

防犯カメラの性能が進化しているとはいえ、実際に防犯カメラを一般家庭に取り付ける利点はあるのでしょうか。警察官として18年勤務経験を持つ佐藤卓也氏に聞いてみました。

 

「防犯カメラの大きな利点は2つあります。1つは犯罪予防の効果です。空き巣などの犯人は警戒心のない地域や、見つかりにくい場所を狙います。そのため、防犯カメラが付いているだけで犯人に対して防犯意識の高い家だと思わせる効果が期待できます。実際に、現職時代に連続空き巣犯のひき当たり時には『この家はカメラがあるから入らなかった』と語った犯人もいました」(佐藤氏)

 

防犯カメラを設置するだけでも抑止効果を期待できると佐藤氏。加えて、防犯カメラの画像は犯人の逮捕にも大きく活躍すると言います。

 

「もうひとつの利点は、犯人検挙に結びつく点です。警察は被害の届け出があったときには客観的な証拠を集めるわけですが、そのような証拠がない場合、多くの捜査が必要になり時間を要してしまいます。そんななかで防犯カメラに映った映像は、立派な客観的証拠になり得るため、非常に有効です。以上のことから、防犯カメラの設置は犯罪の予防と証拠保全に有効であるといえます。ただ、設置する際には個人情報やプライバシーへの配慮を忘れてはいけません」(佐藤氏)

 

警察庁政策評価研究会「第40回議事録」(参考:警察庁)によると、防犯カメラ画像等を端緒とした検挙件数は上昇していることから、警察庁としても防犯カメラが有効であると考えられています。

 

一方で、日本の防犯カメラの設置台数は少ないようです。英調査会社コンパリテックが2023年に公開した世界の防犯カメラ設置台数上位都市に関するレポートによると、人口1000人あたりの設置台数は中国が約400台。インドのハイデラバードで約83台。シンガポールでは約19台と続き、東京は1台という結果になりました。世界と比べると圧倒的に少ない台数であることがわかります。

 

防犯カメラの数が多いほど安心であるとは限りませんが、自分の身は自分で守る姿勢が大事になってくるでしょう。