ホンダは新基準原付に適合した「スーパーカブ110Lite」「スーパーカブ110プロLite」「クロスカブ110Lite」を11月20日に、「Dio 110Lite」を12月11日に発売しました。いずれも2025年4月1日から施行された新しい車両区分に適合したバイクで、業界初の適合モデルとなります。

排気量をアップした「新基準原付」が誕生した背景には何があった?
そもそも新基準原付と従来の原付とは何が違うのでしょうか? 新基準原付は一言で言えば、排気量が50cc超125cc以下でありつつも、最高出力が4.0kW(約5.4馬力)以下に抑えられたバイクのことを指します。この条件を満たすことで、新たな法律上では従来の50ccバイクと同じ「原付一種」として扱われるのです。

これまで原付一種とは、排気量50cc以下の車両を指していました。しかし、2025年11月から新たな排出ガス規制が実施されることになり、排気量が小さいまま対応するのは技術的にもコスト面でも困難であるとして、その対応策が検討されてきたのです。
もともと50ccという排気量区分は、自転車に原動機を取り付けて走っていた時代の名残であり、世界的に見れば日本のみのカテゴリーでした。海外の低排気量のバイクは125ccが主流であり、日本でだけ50ccのバイクを提供する負担はメーカーにとっても大きかったであろうことは否定できません。




こうした課題を解決しようとした結果、総排気量を拡大して排気ガス規制に対応する一方で、50cc超125cc以下・最高出力4.0kW以下に制御したバイクが「原付免許」で運転できるよう、道路交通法施行規則の一部改正が施行され、今回の製品発表となったのです。
新基準原付は交通ルールもこれまでの50cc原付とまったく同じです。法定速度は30km/hであり、二人乗りも禁止されています。指定された交差点ではこれまで通り二段階右折が必要となることも変わりません。また、50ccを超えていますが、ナンバープレートも従来の原付と同じ白色のものが交付されます。
注意すべきは、原付免許で運転できるのはこの新基準原付のみであって、50cc超125cc以下のすべてのバイクが運転できるわけではないということです。あくまで原付免許で運転できるのは最高出力4.0kW以下に抑えられた新基準原付に限られ、これを超える原付二種バイクを運転した場合は無免許運転になります。
新基準の4機種、原付二種のベース車と何が違う?
では、発表された4機種はどんな特徴があるのでしょうか。それぞれベースとなった車両は、車名の通りスーパーカブ110、スーパーカブ110プロ、クロスカブ110、Dio 110Liteです。そのため、ちょっと見ただけではその違いはほとんどわかりません。しかし、よく見ると車体のフロント部に『Lite』と記されたステッカーが貼ってあることに気付きます。



ベース車との違いを識別するのにもっともわかりやすいのが、フロントフェンダー先端の白いステッカー、リアフェンダーにある白い三角ステッカーで、これはいわば原付二種であることを示すものであって、当然ながら新基準原付にこのステッカーは貼られていません。また、新基準原付は二人乗りができませんから、リアのタンデムステップを装備していないのも大きな違いです(スーパーカブ110プロは元々1名乗車であるためタンデムステップは非装備)。
それと、メーターにも違いがあります。ベース車は最高が140km/hまで刻んでありますが、新基準原付では制限速度が30km/hとなるため、スピードメーターは最高で60km/hまでの専用品になっているのです。これらの点を除けば110ccエンジンや車体を含めベース車と新基準原付は共通であり、二人乗り用関連のパーツ以外は共通で装着できるようになっています。
新基準原付は「各機能の向上や出力・トルクの向上で価格に見合うメリット」(ホンダ)
ここで一つ疑問が湧くのが、エンジンが同じでどうやってパワーを制御しているのかということ。ホンダによれば、吸気量を絞ってECUの燃料調整を行うことで規定内の出力に設定しているそうです。とはいえ、出力・トルクは従来の原付より全域で上回っているので、走りやすさは大幅に向上していると見て間違いないでしょう。
この件についてホンダは、「従来の50cc原付と比べて(取り扱いの面で)大きく異なることはないと考えており、むしろ(最高出力・最大トルクともに向上していることから)スムーズな加速感や力強い登坂力などにより、それらが運転のしやすさに寄与している」とコメントしています。





具体的な車両については、「スーパーカブ110 Liteシリーズでは車格は変わらず、制動装置に前輪ディスクブレーキ(フロントのみに機能するABS付き)を搭載するなど、制動時の安心感も高めています。なお、クロスカブ110 Liteは、従来の50ccモデルのタイヤサイズ14インチに対して17インチと大径化しました」(ホンダ)と述べています。やはり、走行性能の向上がポイントとなるようです。
Dio110 Liteについても、「従来の50ccスクーターからの重量増に対しては、足つき性を考慮してベースモデルより15mm、シート高を低減させ、サイドスタンドの標準装備により、取り回しやすさに配慮」したとし、特に最小回転半径は「これまでの50ccスクーター『タクト』と同じ1.8mとなっています」と説明しています。




一方で、新基準原付の価格は従来の原付よりも大幅に高くなってしまいました。当然ながら、排気量アップが大きな要因です。原付二種のベース車と比べても、その差はせいぜい1万円程度安くなっているにとどまります。販売への影響も心配されますが、これについてホンダに質問すると、「新基準原付となったことで、各機能の向上が図られ、出力・トルクもアップしていることから価格以上の価値が届けられている」との回答。このあたりの判断はまさにユーザー次第であり、今後の推移を見ていくしかないようです。
新基準原付の誕生は、原付を唯一の足として使っていた人たちにとって朗報だったことは間違いありません。しかも動力性能においては従来の50cc原付をはるかに上回っているわけで、これが原付免許で乗れるメリットは大きかったといえるでしょう。今後は社会全体に正しい運用が図られていくことが何よりも重要なのではないでしょうか。
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