パナソニック サイクルテックが展開するカスタムオーダーシステム「パナソニック オーダー システム(POS)」に、新しいクロモリフレーム「FRCD07」が加わりました。2026年7月から受注を開始したモデルです。
細身のパイプが生み出すクロモリらしいスタイルを残しながら、ディスクブレーキやスルーアクスルなど現代のロードバイクに求められる規格に対応したことが大きな特徴です。
今回、新型FRCD07の発表に合わせて、大阪府柏原市にあるパナソニック サイクルテックの工房を見学する機会を得ました。そこで見えてきたのは、単に昔ながらのクロモリバイクを作り続けている姿ではありません。職人の手仕事とメーカーとしての品質管理、そして最新技術を組み合わせながら進化を続ける、新世代のオーダーバイクづくりだったのです。

その根底には、創業者・松下幸之助が自転車に寄せていた思いがあります。
松下幸之助にとって自転車はものづくりの原点
パナソニックと自転車との関係は古く、その原点をたどると松下幸之助に行き着きます。
工房に展示されていた資料によれば、「自転車は私の心のふるさと」という松下幸之助の言葉が掲げられていました。
資料を読むと松下幸之助は1905年、丁稚として五代自転車店へ奉公。1923年には自転車用砲弾型ランプを考案・発売し、1927年には自転車用角型ランプに初めて「National」の商標を付けています。

さらに1976年、松下電器創業60周年には「電気屋らしい自転車を作れ」という命題を課し、1979年には電気自転車を発売した歴史も紹介されていました。

現在のパナソニック サイクルテックにとって自転車は、数ある製品のひとつというだけではなく、松下幸之助のものづくりの原点にもつながる存在といえるのです。
1987年に始まった「自分だけの一台」
そうした歴史の中で1987年6月1日に誕生したのがPOSです。
体型や好みに合わせ、自分だけの一台を作る。当時としては先進的だったパソコンやFAXを活用することで、オーダー車でありながら約2週間という短納期を実現しました。発売初月には504台を受注したといいます。
POSはその後、欧州のプロロードレースにも挑戦します。1990年から3年間にわたって機材を供給し、通算79勝を記録。そのうちツール・ド・フランスでも5勝するなど、実戦を通じてフレーム技術を磨いていきました。
職人の技とメーカーだからできる品質管理を両立させた工房
このPOSによるものづくりは、現在も柏原市の工房で続けられています。
実際に工房へ足を踏み入れると、フレームが文字通り「人の手によって作られている」ことを実感します。
フレーム製作ではパイプやラグなどを治具にセットし、職人が炎を使って接合していきます。大量生産の自動化された生産ラインとはかなり印象が異なり、一台ずつフレームを仕立てていく、まさに「工房」という表現がよく似合います。


作業は炎を当てる位置や熱の加え方などを見極めながら進められます。これらは完成車では塗装によって見えなくなる部分ですが、その内部においてもこうした職人の仕事が積み重ねられているのです。


ただし、POSは「職人によるハンドメイド」だけを強みにしているわけではありません。
取材では個人ビルダーへの敬意を示したうえで、「メーカーだからこそ信頼性試験をしっかり行えることも強み」と説明されました。職人による少量生産と、メーカーとして培ってきた品質管理。その両方を組み合わせていることがPOSならではの特徴なのです。
色を選ぶところから「自分だけの一台」が始まる
印象的だったのが塗装工程です。見学時には防護服とマスクを着用した職人が、スプレーガンを使ってパーツを一本ずつ塗装する様子を見ることができました。

そして、この塗装こそオーダーバイクならではの楽しさを実感できる部分です。
FRCD07では34色からフレームカラーを選択できます。ホワイトやブラックなどの定番色から、ブルー、レッド、グリーンなど鮮やかなカラーまで選択肢は多彩です。体格に合わせることに加え、「どんな色の一台にするか」を考えられることもPOSならではの魅力といえるでしょう。

さらに今回、新しい表現として設定されたのが「マーブルエフェクト」です。
日本最大のスポーツ自転車フェスティバルであるサイクルモードで試験的に展示したところ、好評だったため正式にラインアップされたもので、複雑な模様とカラーを組み合わせることで一般的な単色塗装とは大きく異なる表情を作り出します。このアップチャージは6万6000円(税込)です。

実車を見ると、その効果はより鮮明です。細身のクロモリパイプに複雑な模様が重なり、光の当たり方によっても表情が変化するのがわかります。量産完成車とは違う、自分だけの一台を所有する楽しさを視覚的にも感じさせてくれます。


クロモリを「現代のロードバイク」に進化
こうしたPOSのものづくりから生まれた最新モデルがFRCD07なのです。
開発の背景には「最新コンポーネントで組める金属フレームのディスクロードが欲しい」「クロモリの美しさを普遍的なものとして作り続けてほしい」といったユーザーの声がありました。イベントで実施したアンケートでも、クロモリに最新機構を求める回答が6割弱に達したといいます。
メインパイプにはカイセイ製クロモリパイプ「ULTIMA」を採用。この日の取材ではクロモリの特徴について、「バネ感がありつつもフレームがしなるような乗り味」と説明されました。その特性を生かしながら、ロードバイクらしいクイックなハンドリングや加速感を狙ったジオメトリーとしているのです。

一方で規格はしっかり現代化されています。POSオリジナルのワンポイントファイブヘッドラグを採用し、フラットマウントタイプのディスクブレーキ、前後12mmスルーアクスルに対応しました。リア周りを見ると、細身のクロモリフレームと最新のディスクブレーキが共存していることがよくわかります。まさに「伝統と最新技術の融合」を象徴する部分といえるでしょう。

なお、フレームサイズは460~610mmまで10mm刻み。フレームセット価格は36万5000円(税込)からとなっています。
40年近く経っても変わらないPOSの原点
2027年、POSは誕生から40周年を迎えます。そんななかで、大阪・柏原市の工房を訪れて強く感じたのは、POSが昔ながらの自転車づくりを単に保存しているブランドではないということでした。
松下幸之助が自転車に深い思いを抱き、1987年には「自分だけの一台」を作るPOSが誕生しました。そして現在も職人がフレームを組み、仕上げ、塗装しています。その一方、FRCD07にはディスクブレーキやスルーアクスルなど現代の技術を積極的に取り入れています。
受け継いできた技術を守るだけでなく、それを生かして今の時代にふさわしい一台を作る。2026年7月に受注を開始したFRCD07は、松下幸之助の時代から続く自転車への思いと、約40年間にわたってPOSが培ってきたオーダーバイクづくりを、現代のロードバイクとして形にした一台なのです。
