近年、キャンパーの間で何かと話題なのが、ルーフテント。車の屋根にテントを乗せて、そのまま屋根の上で就寝するというものですが、何しろ日本国内での取り扱い店はあまりに少なく、現物を目にする機会も限られており、そしてそれなりに高価……。便利で楽しいルーフテントですが、ここはユーザーにとってまだまだハードルが高そうです。というわけで今回は、ルーフテントの老舗メーカーであるイタリアのAUTOHOME社の日本総代理店であり、20年以上ルーフテントを販売し続けるZIFER JAPANの飯田謙一郎さんの案内のもと、そのなんたるかに迫ります。
クルマ1台分のスペースがあればどこでも眠ることができる!
――近年キャンパーの間で話題になっているルーフテントですが、これはどういった経緯で注目されるようになったのでしょうか?
飯田謙一郎さん(以下:飯田) まず設営の楽なところに尽きるでしょうね。私がルーフテントの販売を始める前までは、勤めていた貿易会社でキャンピングカーを扱っていました。でも当時キャンピングカーは珍らしく価格も高価なものばかり。なんとか購入してキャンピングカーでオートキャンプ場に行っても、当時は「キャンピングカーの方は1泊1万円以上」といった高価な設定にされ、ユーザーにとっては、キャンプを楽に楽しむために何千万円も出して、キャンピングカーを買ったのに、泊まるのにまた1泊1万円もかかかるのかと(笑)。
やがて、RV協会というキャンピングカーの団体がもっと安価な方法でキャンピングカーを使用できるようにと道の駅でも泊まれるような普及活動をしたことによって、キャンピングカーは以前より使いやすくなりましたが、まだまだ日本国内でキャンピングカーを使えるシーンは限られています。
一方、ルーフテントの場合は、最初に言った通り設営が楽で、場所も選びません。クルマの屋根の上にテントがあるので(笑)。もちろんクルマ1台分のスペースがあれば、宿泊を認められたあらゆる場所で大丈夫ですし、もちろん、オートキャンプ場でも。こういった「場所を選ばないテント」という利便性がまず人気の理由なのではないかと思います。
ヨーロッパでは50年前から作られていたルーフテント!
――ルーフテントが世界的に普及していった歴史はなんだったのですか?
飯田 最初に作られたのはイタリアですが、浸透していったのはドイツ、フランスです。50年以上前からの歴史を持ち、古くから愛用されています。例えばフォルクスワーゲンだとか、メルセデス・ベンツなどの屋根の上に付けて休日、キャンプをして過ごす。あるいはカメラマンなどが自然を撮影する際、何日も同じ場所で過ごさなければいけないときに使うというプロユース。そういった場面で重宝されていたようです。
だから、日本では真新しく感じられるかもしれないですが、ヨーロッパやアメリカではその利便性からすでに浸透していたものなんです。昨年、ミニのクロスオーバーではエアトップのルーフテントを純正で取り付けられるようにしていましたし、プジョーも今年、オーバーランド付きを発表しました。プジョーは日本仕様でそれが入ってくるかどうかは定かではないですけど、このようにルーフテントは世界ではよく使われているものなんです。
屋根の上で寝て、本当に屋根は潰れないのだろうか
――ただ、正直心配に思うのは、屋根の上で寝たりして、クルマの屋根は潰れないかってことなんです。どうでしょうか?
飯田 これはよく言われますね(笑)。まず、ルーフテント自体は50キロくらいあります。一般的なクルマの場合、キャリアはだいたい最大積載重量が70~100キロまでは大丈夫と言われています。ただし、これは動荷重での計算で、積んだまま高速を走ったり、カーブを曲がったり、急ブレーキを踏んだりという走行中のことも想定しています。それらの衝撃的な荷重も想定すると静止した状態なら少なくとも500~600キロまでは積むことができないと、100キロのものを積んで走ることはできないだろうと言うのがイタリアメーカーの解釈なんですね。つまり、最大積載重量の5~6倍は大丈夫だろうという見解です。
もともとキャリアメーカーがそこまで謳っているわけではないので、あくまでもイタリアのメーカーの見解なのですが、当社としては発売当初から日本のユーザーの方にはもう少し控えめに最大積載重量の2.5~3倍が目安……と言って販売させていただいています。しかし、それでも私が販売させていただいたルーフテントを18年以上もクルマを買い替える度に付け替えて、使い続けてくださっている方もいますし、日本でもすでに2000台以上のクルマに取り付けられ使用されてきました。クルマの載せ換えも考えれば、ものすごい数の実績値になります。最終的にはユーザー様の御判断にお任せしていますが、ヨーロッパでは先ほど言った大手の自動車メーカーが採用した際の基準はわからないものの、やはり問題なく取り付けられるからこそ採用したのだと思います。