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2017/3/31 21:00

そんなにショック!? 実際に住んでみて衝撃を受けた「サッカーに熱狂するフランス人の姿」

フランス人というと、クールで皮肉屋、そして個人主義なイメージが一般的だと思います。実際にフランスで暮らしてみて、自分の考えを冷静に主張し、他人に安易に迎合せず、群れることが少ないクラスメートたちと接し、「これがフランス人の気質か」と納得したものです。

 

そんなフランスの人たちですが、ことサッカーに関していうと、燃えてくるものがあるようです。

 

スペインのリーガ・エスパニョーラやドイツのブンデスリーガ、イングランドのプレミアリーグ、イタリアのセリエAといった、いわゆる四大リーグと比べると日本でのなじみは薄いかもしれません。しかし、フランス国内リーグのリーグ・アンは、チームそれぞれ多くのファンを抱え、熱狂度はかなりのものです。

 

■チャンピオンズリーグ決勝トーナメント事件

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私は、いまはボーヌに住んでいますが、昨年はディジョンの寮に住んでいました。当時「リーグ・ドゥ」(2部リーグ)だったディジョンFCOのホームスタジアムのすぐそばで、夜遅くまで激しく騒ぐサポーターたちに、「フランス人でもサッカーになると人が変わるのだ」と驚いたものです。

 

このように、サッカーがある程度身近だった私にとっても、フランス人のサッカー熱の突き抜けぶりを思い知る事件があったのです。

 

3月8日に行われたチャンピオンズリーグ決勝トーナメントの1回戦、リーグ・アンでは常に優勝争いにからむ人気ナンバーワンチーム、パリ・サンジェルマン(PSG)のアウェーゲーム。

 

対するは、スペインを代表するクラブチーム、バルセロナFC。日本ほか、世界中にファンがいるビッグクラブです。メッシ、ネイマール、スアレス。MSNトリオ、有名ですね。個人的にはイニエスタが好きだったりします。

 

2月に行われたパリでのホームゲームでは、事前の予想を100%覆し、なんと4-0でバルセロナを叩き潰したPSG。この2戦目を待たずに、バルセロナの選手が2回戦進出についてギブアップ宣言していたのを報道で見ました。

 

それはそうでしょう。なにせ、4点差ですから。サッカーの常識からいったら、ひっくり返すのは至難の業ですよね。この試合後、フランスのサッカーファンは幸福な時間を過ごしていました。あのバルセロナに4-0ですから。

 

そして、運命の3月8日。奇跡が起こりました。

 

6-1。バルセロナ激勝。ありえない逆転劇。「ブラボー、バルセロナ! さすが、世界のトップチーム! いいもの見せてもらった!」なんて世界中は思ったでしょうが、フランスだけは、違いました。

 

■残念な結果にキャスターも男子も動揺!

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ゲーム翌日の3月9日。朝起きて、いつものようにテレビでニュース番組を見ていたら……。大統領選候補者の動静を伝えるトップのニュースで、キャスターが口火をきったのは、PSGの「事件」についてでした。

 

キャスターがこの話を振ると、政治や候補者の公約について語るお役目のゲストの識者たちもそれに乗ってきます。「悲劇だ」、「恥だ」、「ありえない」、「1戦目で浮かれ過ぎた」……。

 

「大統領選よりサッカー優先?」と違和感を覚えた朝でした。

 

そして、学校に行くと、クラスの男子の雰囲気が何か違うのです。普段元気な子がうつむいて黙っていたり、穏やかな子がイライラしていたり。女子に理由を聞くと、「バルサ戦の結果で落ち込んでいるのよ。触らない方がいいわよ。ああいうのは放っておくしかないのよ」と教えてくれました。

 

負けて悔しいのはわかるけど、大人がそこまで引きずるものなのでしょうか。でも、実際にひどくダメージを受けています。

 

■フランス人男性はサッカーが生きがい

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そして、その日の夜。この一戦がフランスに及ぼした衝撃の大きさをスポーツニュースで知ることになります。20時からの番組では、前日の試合の分析が分刻みで行われていました。

 

評論家、元サッカー選手、サッカーキャスターなど総勢8人ほどで、敗因やまずかったプレーに対してそれぞれが怒り狂いながら主張していきます。進行はめちゃくちゃ。会話のキャッチボールは成立せず。お互い言葉を上からかぶせつつ、怒鳴る。もちろん司会者はいるのですが、その司会者が興奮して自分の主張を話しまくるので、もう収集がつきません。

 

日本でも深夜の討論番組などで激論が交わされる、というシーンはよく見ましたが、その熱くなり方とはケタが違うものでした。結局、この日の結論は、「分析しきれないので翌日に持ち越し」、というものでした。

 

テレビも新聞も街でも、話題はすべてPSGの惨敗。そこには多様な意見などなく、男性みんながみんな、同じ論調で怒りあう。日本と違い、政治や経済の議論をお互いにするのがフランスなのですが、政治よりも大統領選よりも、実はサッカーが重要だったのかと思い知った敗戦後でした。

 

あの日から3週間あまりが過ぎ、フランスのみなさんは「あの試合は事故だった」と言い聞かせることで、ようやく落ち着いてきたように思えます。

 

フランス人がサッカー好きなのは知っていましたが、ここまでだとは思いませんでした。フランスの男性にとって、サッカーは娯楽、いえ、生きがいといったほうがいいかもしれません。