1994年に開かれた「F1サンマリノグランプリ(GP)」から25年経ちましたが、事故死した伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナの勇姿は、いまもなお多くの人々の心に焼き付いています。1988年、1990年、1991年と3回のワールドチャンピオンに輝いたセナは、とりわけロータスやマクラーレンの時代にはホンダエンジンのマシンで活躍し、「音速の貴公子」の愛称で日本のファンにも愛されていたことを覚えている方も多いでしょう。
F1史上最高のドライバーともいわれるセナには、たくさんのグッズがありますが、没後25周年にあたる2019年12月6日に新たなメモリアルグッズが発売されました。それはセナが生前のレースで使用したF1マシンのタイヤを削り出して作った超高級ブレスレットです。この製品を手掛けたのは、モンテカルロに拠点を置く高級アクセサリーのモングリップ社。アイルトン・セナ財団と共同で、セナの出場グランプリ数に合わせて161個のブレスレットを限定版として製作し、販売することになりました。
しかしこれは、ただ過去に使用されていたマシンのタイヤから削り出されたというわけではありません。生前セナが見せたなかでもベストパフォーマンスの1つとたたえられた、1993年のヨーロッパGPで使用されたタイヤから削り出されたものなのです。
1993年4月、英国のドニントンパークでのことです。セナが当時乗っていたマクラーレンMP4/8フォードは非力なエンジンを搭載しており、宿命のライバルであるアラン・プロストが乗るウイリアムズ・ルノーに大きく水をあけられていました。
このヨーロッパGP予選でも1位のプロストから1.55秒もの大差をつけられて、4番手のスタート。しかし、決勝当日の天気が雨だったという悪条件をセナは味方につけました。雨天のドライビングは非常に滑りやすく難易度が増しますが、その分アクセルを踏み込めず車速が落ちるので、マシンの差が出にくくなる利点もあります。
このウェットコンディションに勝負を賭けたセナは、スタートで5位に落ちるも、そこから上位陣をごぼう抜きにしました。1周目にしてトップに立つと、目まぐるしく変わる天候のなかでうまく立ち回り、最後は3位以下をすべて周回後れにするという圧倒的な強さで勝利を収めたのです。
このメモリアルレースで使用されたタイヤを削り出しブレスレットを作るという企画は、昨年5月に発表されました。モングリップ社にはタイヤを削り出して宝飾品にする実績がすでにあり、今回もそのノウハウを生かして記念グッズを作り上げようとしたのです。
これほど特別なものはない
発売日にはモンテカルロで記者会見が行われ、モングリップ社のジャンカルロ・メディチCEOとアイルトンの甥である元F1ドライバーのブルーノ・セナ氏が出席しました。「あのレースこそが、アイルトンが見せたパフォーマンスのなかでは1番だと思う。僕も彼のいろいろな記念の品を持っているけれど、モダンでエレガントなこのブレスレッドほど特別なものはないよ」とブルーノは語りました。
イタリアの向上で作られたこのブレスレットは、1つひとつの大きさが異なり、オリジナリティに溢れた製品です。初期ロットとして41本が完成し、アイルトンが生前に好んでつけていたカーナンバー12番にちなんで、まずそのうちの12本が売り出されました。
18K ROSE GOLDを使っていることもあり、価格も1本約3670ユーロ(約45万円)と超高級。それにもかかわらず売れ行きは好調で、初期ロットはたちまち完売しました。現在は第2弾の販売が予定されています。
「身に着けることができる記念品を叔父アイルトンのファンの皆さまに差し上げたいと思っていました。これを身に付けることで、素敵な時代の記憶が蘇るはずです」と、アイルトンの姪でセナ財団のブランドディレクターを務めるビアンカ・セナ女史は述べています。なかなか手が出せないブレスレットですが、セナのファンにとってはお金以上に価値がある品物かもしれませんね。