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2020/6/21 18:15

Jリーガーが続々と賛同! コンサドーレ札幌・荒野拓馬が始めた「RESCUE HERO」で全国の生産者を支援

2月末、全国に先駆けて緊急事態宣言を発令した北海道。コロナウィルスの深刻な問題に、日本国民全体がまだ気づく前だった時期だ。世界中での感染者数の増加が報道される中、恐怖や危険性を感じながらも、北海道民以外の人にとってはどこか「対岸の火事」のような認識だったことも否定できないだろう。

 

北海道といえば、その広大な土地と海に囲まれた土地を活かした、食材の宝庫。多くの観光客が全国各地から訪れ、絶品の海の幸など新鮮で美味しい食材に舌鼓を打つ光景が常だった。

 

しかし、コロナ禍により日常は一変。観光客どころか一般市民も外出を控え、飲食業界はこれまでにない大打撃を受けた。飲食業界が開店休業の状態になると、食材を供給している生産者も立ち行かなくなってしまう。通常通りの収穫量がありながら買い手がつかず、その豊富な食材たちは「廃棄」という結末を迎えてしまう。食材の宝庫とされている北海道だからこそ、この「フードロス問題」は他の地域よりも深刻なのだ。

 

そんな生産者の声に耳を傾け、独自の活動をスタートさせたプロスポーツ選手がいる。サッカーJ1のコンサドーレ札幌に所属する荒野拓馬だ。2019年度末から、鈴木武蔵らを中心に『NPO Hokkaido Dream』を設立するなど、チームとしての活動のほか、社会活動にも力を入れる荒野。コロナウィルスの影響により、Jリーグも中断。試合だけでなく、チームとしての全体練習すらもができない状況の中「スポーツ選手として、試合がないと僕たちは何もない」という想いが強く浮かんだのだという。

 

そんな中でNPOメンバーの鈴木武蔵、菅野孝憲らと「なにか自分たちにできることはないか」と話し合う中で、自らが中心となって立ち上げたのが『RESCUE HERO』という活動だ。

 

↑「フードロス問題」という社会課題を解決すべく、荒野拓馬が鈴木武蔵、菅野孝憲らとともに立ち上げた『RESCUE HERO』

 

4月20日。自身が27歳の誕生日を迎えたその日に立ち上げを決意したというこのプロジェクトは、ニュースなどでも頻繁に報道されている「フードロス問題」に着目したものとなっている。主な活動はHP上での商品販売だ。コロナウィルスの影響で、廃棄の危機にある食材をホームページに掲載・出品。出品価格の10%を社会貢献活動費にあてた後、その残額が生産者に直接支払われる仕組みになっており、生産者だけでなく彼らが取り組む社会活動の一助にもなっている。

 

日本のみならず、世界中で問題となっているフードロス問題だが、活動の土台を固めるためにも、まずは彼が生まれ育った北海道の生産者を支援するところからスタートした。生産者への呼びかけは、荒野が自身のSNSで実施。

 

その結果、生産者から直接メッセージが届いた他、フードロス問題に対する様々な声も多数寄せられたという。そして、活動開始からわずか5日後には、サイト開設・商品掲載に至った。コロナ禍の苦境では、どのような支援でも、対策のスピード感が1つの重要なポイントとなってくる。その中で、個人のSNSを駆使しながらプロジェクトを進めることで、官庁や大企業にはできないほどのスピード感で支援の手を広げることができたのだ。

 

立ち上げ時から、『RESCUE HERO』の活動に対しては非常に温かい声が寄せられているという。「北海道の食材を出品した時から、これまで何度もリピートしてくれている方もいらっしゃいます。多い人では、8~9回ほど購入してくれている方もいるほどなんです。」と荒野が話すように、支援の輪は着実に広がっていると言える。

 

↑リモート取材に応じる荒野。「実は僕が一番のヘビーユーザーで、何度もリピート購入して美味しくいただいています!」と笑う

 

また、荒野は「この活動では、商品を購入・支援した人が直接生産者を救っているんだ!という想いを強く感じてほしい」と力強く語ってくれた。その想いは、荒野自身のTwitterのタイムライン上で垣間見ることができる。彼は「RESCUE HERO」で商品を購入した人たちに対して「レスキューありがとう You are a HERO」というリプライを行なっている。

 

Jリーグ再開に向けて、チーム全体での練習も行う中、時間の合間を縫ってSNSでの発信にも力を入れているのだ。「感謝の気持ちを伝えたいのはもちろん、僕が発信することで自分自身が生産者を救っているんだという実感にも繋がってくれれば嬉しいです。」と、荒野はその意図について話してくれた。

 

立ち上げ時から、意識的にSNSでファンに呼びかけたことで、彼の想いはファンだけではなく、全国のJリーガーたちにも確実に広がっていった。荒野がSNSで頻繁に活動を報告していたことで「素晴らしい活動だね」「ぜひ力になりたい」と、親交のあるJリーガー達が次々と賛同。北海道から始まったこのプロジェクトは、今や海を渡り全国に広まっている。

 

湘南ベルマーレの福田晃斗、サガン鳥栖の高丘陽平、FC琉球の上里一将らを始めとした選手たちが中心となり、活動は各地へと広がり、今や沖縄の生産者を支援するにまで至っている。今後は、Jリーグ所属選手だけではなく、理念に共感してくれる他のスポーツ選手も巻き込むことで、より大きな活動を展開していくことも考えているという。

 

「北海道だけではなく、全国には本当に素晴らしい食材がたくさんあります。もちろん、支援という意味合いもあるでしょうが、純粋に食材としての魅力があるからこそ購入いただけているとも思います。これを機に、全国にあるまだまだ知られていない食材の魅力に気付いていただければ、私達にとってもこれほど嬉しいことはありません。」と、支援を機に、これまで出会わなかった食を純粋に楽しむことで、問題意識が広まってほしいと荒野は語る。

 

実際にサイトをみてみると、「これが廃棄になってしまうのか!?」と思うような魅力的な商品がずらりと並んでいる。荒野は「実は僕が一番のヘビーユーザーで、何度もリピート購入して美味しくいただいています!」と、笑いながら話してくれた。純粋に食材を美味しく楽しむことで誰かの“HERO”になれるのなら、こんなに素晴らしいことはない。コロナ禍で苦しむ生産者を助けるという意味はもちろん、食を楽しむという観点からも、ぜひサイトを訪れてみてほしい。

 

RESCUE HERO :https://rescuehero.net/