わかっている人には当たり前すぎるけど、わかってない人には全然思いも付かないこと、というものがある。例えば、町内会のイベントチラシや店舗のフライヤーを自作する場合。B5サイズのチラシを作るときに、わざわざB5の紙に印刷することはない。だって、B4にB5のチラシを2面プリントして半分に切れば、紙1枚でチラシは2枚になる。つまり、印刷代も半分になるのだ……。
日常的にフライヤーを作ったり同人誌を作ったりするような人には「何をいまさら」という話なのだが、そういうことを知らない人だって意外と多くいるのである。今回紹介するのは、そういうのを知らない人も知ってる人も、使うだけで“紙を半分カットするのがとてもラクになる”スライド式断裁機、プラス「ハンブンコ」である。
プラス ハンブンコ A3タイプ(10800円)/A4タイプ(5940円) ※写真はA3タイプ
最も特徴的なのは、台の左右から展開する水色のWゲージと、台の中央に位置するカッターレール。「手動の裁断機では世界初」というこのWゲージは、片側を動かすと連動して逆サイドも同じだけ動く。つまり、このゲージで紙を両端から挟み込むと、自動的に紙の中央とカッターレールの位置が合うようになっているのだ。そうなれば、あとはレールに沿ってカッターをスライドさせるだけでスパッと紙が真っ二つになる。
通常の断裁機だと面倒な紙の位置決めが一発で済むので“作業時間すら半分になるんじゃないか?”という簡単さだ。断裁作業に慣れていない人でも、ゲージで紙を挟むだけならミスなくできるだろう。また、できないという人も2、3回動かしてみれば、わりとすぐにコツが掴める。
もちろん、台のメモリでカット幅を決めることもできる。ゲージで紙を押し出すように切っていくと、紙を同じ幅で短冊のように切り揃えるのも簡単。チケットのような長細い形も、手早く量産することができる。
肝となるカット能力だが、1回のカット(カッターを上下往復)でまとめて切れる枚数は、メーカーの推奨値でコピー用紙20枚。それぐらいなら、ほぼ切りズレなく、すべて真ん中から切ることができる。この「20枚がズレなく切れる」という性能、実は1万円以下の断裁機ではなかなか達成できない、わりと難しいレベルなのだ。
まず、ハンブンコはカッター部が二本のレールをまたがる構造になっている。この安定性のおかげで刃がガタつきにくく、カッターを上下に往復させても刃が同じ道筋を通ってくれるのだ。
さらに、刃の下にあるカッターマットが逆三角形なのも地味に効果が感じられる。従来の板状マットだと台の中で動いてしまうことがあるが、逆三角形のマットはくさびのように台に食い込むので安定しやすい。
高額な断裁機のように、レールや台の剛性がガッチリ高くて安定してるのとはやはり違う。あくまでも価格なりのヤワな印象なのに、実際に切ってみると刃が常に同じところを通るので、「へー」と驚かされる感じだ。また、用途を広げる別売オプションパーツとして、切り取り線が入れられるミシン目カッターと折り目刃も用意されている。
特に折り目刃は、コピー誌のような小冊子を作るときに、いちいち紙を折り目がズレないようわずかな枚数ずつ手で折って……という労力を、半分どころか1/10ぐらいに軽減してくれる。個人的にはマストバイなオプションだと思う(ただし、折り目がうまくつけられるのはコピー紙で10枚ほど)。
刃の交換も非常に簡単。カッター部のフタをパカッと開けて、ファミコンのROMカセットのような刃カートリッジを差し替えるだけ。刃に直接触れることもないので、子どもにも安心して作業を手伝ってもらえるはずだ。
さて、もし買うにあたっての話だが、このハンブンコ……サイズがA4タイプとA3タイプの2種類ある。間違えやすいところだが、A4タイプは「A3サイズの紙を半分にカットすると、A4サイズ2枚にできる」もの。A3タイプなら「A2サイズの紙を半分にカットすれば、A3サイズ2枚にできる」ということだ。
一般の家庭にあるプリンターだと、どんなに大きくてもA3出力まで。ということは、普通に使う限りA4タイプで充分に事足りるということになる。そもそも印刷関係者でもない限り、A2の紙を扱うこと自体ほぼないだろう。
かくいう筆者は、この類の製品は「大が小を兼ねる」と信じているのでA3タイプを購入しているが、価格はA4タイプの倍近い。購入した際に、Amazonの1-Clickを押す手が一瞬“A4でもいいんじゃないかな……”と止まったことは、正直に告白しておこう。