【きだてたく文房具レビュー】大量に収納でき素早く取り出せる特大ペンケース
最近、立て続けに「便利なペンケースを紹介してください」という問い合わせを受けた。この連載でも、以下のように過去に何度も機能的なペンケースを取り上げているので、紹介すること自体は、まぁお手の物といった感じだ。
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けれども少し興味深かったのは、そういう質問をしてくる方々がほぼ100%「収納力の高い製品とか、そういったものを」と言うのである。確かにペンケースに関して、収納力というのは大事なポイントではあるけれど、収納力がある=便利、という考え方はちょっと違うのだ。例えば、ペン1本と蛍光マーカー1本あれば仕事ができる、という人にペンが30本以上入る収納力のペンケースを紹介しても、何の意味もないだろう。つまるところ収納力とは、色柄や素材、見た目に近い、“使う人の好み”の要素なのである。
じゃあ便利なペンケースってなんだよ、と問われたら、筆者は「中身の見渡しやすさ」と「中身の取り出しやすさ・しまいやすさ」だと答える。いかに中の文房具がスムーズに使えるか、がペンケースの便利さにかかっていると思うのだ。
そこで今回は、特にその便利さに極端に特化した製品を紹介したい。
「sussu stan by(スッス スタンバイ)」は、自立型化粧ポーチ「sussu」を作ったメーカー、SAZAREがクラウドファンディングで立ち上げたペンケース……というかツールケースである。
見た目にはA4サイズより一回り小さいセカンドバッグといったところで、ペンケースというにはかなり大きい。女性だと普段使いのバッグに入らないという人も多いはずで、ここでユーザーを選んでしまうのはやや残念な感じではある。
使う際には、マグネットで留めてあるフタを大きく開いて裏側にパチンと留め直すと、自立してスタンドとなる。いわゆる“立つペンケース”的な使い方ができるわけだが、特徴的なのは、その形状と内部のポケットだ。
まず形状だが、カバンに入るか入らないかでマイナスになっていたサイズが、展開時には意外なほどの使いやすさに転じるのである。
ご覧の通り、ちょっとしたパーテーションかという広い自立面にずらりと文房具が並ぶので、見渡しやすさが抜群なのだ。実際に使ってみても、使いたい文房具をいちいち探す手間はゼロで、瞬間的にサッと狙ったものに手が伸びるのである。
そしてもう一つのポイントとして挙げたのが、メーカーが“青海波ポケット”と呼称しているポケット。
青海波(せいがいは)というのは日本の伝統文様のひとつで、Wi-Fiのマークが互い違いに並んでいるような模様のこと(ああ、あれのことか、と思い出す人もいるのでは)。マチの大きいポケットが深・中・浅の三段で互い違いに並んでいる様子が青海波っぽい、ということで名付けられたのだろう。
この青海波ポケットが、とにかく文房具を出し入れするのがラク。かなりダブダブにフチが余っているので、テープのりや消しゴムのような厚みのあるものもスッと出し入れができるのだ。
取り出すのも戻すのも、いちいちポケットのフチを指で浮かせて中に滑り込ませて……といった手間がない。本当にスッと入れてスッと戻せる感じ。
で、それだけ厚いものが入るポケットが段になっているということで、深ポケットに何か入れると、次段の中ポケットにまで厚みが響いて収納がしにくくなる。
……と聞くと不便そうに感じるかもしれないが、実はこれも使いやすさのポイントなのだ。厚いものを入れたポケットの前段ポケットには別のものが入らないので、結果として横方向にも文房具が交互に並ぶことになる。つまり陰に入って隠れてしまうものがないので、中身が非常に見渡しやすいのである。
結果として、収納力は外見から考えるとだいぶ少なくなるが、使いやすさでプラスマイナスすると、個人的にはかなりプラスだと感じた。
さらに面白いのは、深段のポケットが面ファスナー留めになっているということ。ここを全て解放してしまえば、手帳やタブレットなんかもすっぽり入ってしまうのだ。
このサイズなら、文房具ではなくタブレット+モバイルバッテリー+ケーブルや小型マウスなどのガジェットをまとめて収納するケースとしても、充分に使えるだろう。
とにかく、中身の見渡しやすさ・出し入れのしやすさを考えると、外出先に持ち運ぶというより、むしろ自宅の机の上に常時立てておきたいぐらいの使いやすさである。普段は本棚にでもしまっておいて、使う時だけ机の上に立てれば必要な文房具がズラリと揃う。自室のないお父さんの放浪対応型・移動書斎としていかがだろうか。