一般的に“ノート”として扱われているものには、超大きくざっくり分けて2つある。紙束を綴じた、いわゆる「ノート」と、開閉可能なリングで専用の用紙を綴じた「ルーズリーフ」だ。
もちろん前者のノートと言うだけでも、糊や糸で綴じたもの、リング綴じのものといろいろあるし、細かく分類していったら面倒くさいことになる。とりあえずここは、ノートとルーズリーフの2つだ、と思ってもらいたい。
この2つにはそれぞれ、使う上でメリットとデメリットがある。(今さら! と言う人は、この段落は読み飛ばしてOK)
ノートは、軽くスリムなので携帯しやすい。また、基本的に価格が安い。一方デメリットは、ページの編集(入れ替え)ができないので、基本的に1つの系列順にしか記入しづらい(これがメリットになるケースもあるが、今回は述べない)。
対してルーズリーフは、ページ編集ができるのが最大のメリット。インデックスを使えば1冊で複数の系列が扱えるのも便利だし、横罫・方眼などタイプの違う用紙の混在も可能。その代わり、開閉リングを備えたバインダーは分厚くて重い。
あくまでも個人の考え方や好みで選ぶものなので、どっちがベストという話ではない。だが、それだけに「自分に合ったノート選び」というのは難しいのである。しかも昨年末には、“ノート”にもう一つ選択肢が加わり、さらにどれを使うべきか悩ましいことになったのだ。
第三のノート、誕生!———PageBase「SlideNote」
ノートでもルーズリーフでもない、新しい第三の選択肢というのが、印刷会社を母体とした新ブランドPageBaseの「SlideNote」だ。
製品名で自らノートを名乗っているものの、使い方はルーズリーフっぽくページ編集が可能で、そのくせ用紙にリング穴は不要というのだから、かなり異質な存在と言える。
PageBase(ページベース)
SlideNote(スライドノート)A4サイズ
2020円(税別)
初手からタネを明かしてしまうと、これ、“ノートっぽく使えるファイルバインダー”なのである。
ただ、中に綴じリングやクリアポケットはない。表紙を開けばページが始まっているので、意識しなければ、まったく普通にノートとして使うことができる。だが、このページは自由に取り外したり、差し替えたりが可能となっているのだ。
どういうことかというと、実は背の部分に2か所、スライド式の金属クリップが埋め込まれているのだ。
背の部分をつまんで外向きに引っ張ると、クリップがオープン。適当に紙を差し込んだら、背を再びスライドさせて戻す。するとクリップが紙を挟んで固定する。これで元通り、ノートとして使える状態になるという仕組みだ。
実のところ、既存のレールファイルを使えば似たような使い方もできるのだが、背を少しスライドさせるだけで開閉できるのは、圧倒的にラク。
ノートのページとして使う用紙は、専用サイト「Paper&Print」から購入できる。先に述べた通り、発売元のPageBaseは母体が印刷会社なので、紙と罫線タイプを自由に組み合わせての注文が可能だ。
紙は、一般的な上質紙から、高級ノート用の「OKフールス」、手帳で人気の「トモエリバー」、銀行業務用の「バンクペーパー」など12種類。罫線は横罫や方眼から五線譜、400字詰原稿用紙を含む8種類。罫線に関しては希望を伝えてのカスタムも可能なので、まぁ好き放題という感じだ。
これなら、紙にうるさい文房具好きも黙るだろ、という揃えとなっている。
しかし、勘のいい人ならとっくにお気づきだろう。「ん? そもそもこれ、専用用紙とか要らなくない?」
そう、ある意味ではそれも正解かも。紙と印刷精度にこだわらなければ、例えば上質紙に普通のプリンターで罫線を裏表印刷したヤツでも、挟んでしまえば自由に使える。どころか、無罫線でよければコピー用紙の束をそのままガチャッと入れちゃっても問題なし!
当然ながら、穴の空いたルーズリーフ用紙だってそのまま挟み込みOK。要するに、A4の紙ならもうなんだって挟んで持ち歩けるわけだ。
とはいえ、紙質や罫線を気にしたいなら、やっぱり専用紙を注文したほうが幸せになれるとは思うけど。
さらに、ファイルバインダー要素を強めに考えれば、ノート用紙以外にも、プリントアウトした資料や小冊子も挟んでファイリングが可能だ。議事録をとったノートページの次に、もらった資料を挟む、といった使い方をすれば、一冊で仕事内容を集約した業務ノートだって簡単に作れるのである。
世の中的に“紙”と言えば、ほとんどがA4サイズを基準に動いている。つまりA4サイズの「SlideNote」があれば、だいたいの紙モノは自由にノートっぽく使えるということだ。
ここまでの話だと「すげー、もうこれ一択じゃん!」って気分にもなるが、もちろん、実際に使ってみるといくつか良くない部分も見受けられた。
まず、クリップを背パーツで押さえる構造のため、表紙の開閉がかなり硬い。机に置いて180度開くだけでも、手でグイッと押さえる必要があるのだ。そのため、ノド側(ページを見開いた際の中央付近)への書き込みがかなりやりづらい。もしかしたら、筆記時は紙をバラして使って、書き終わったものを閲覧用に再クリップする、というのがラクなのかも。
もうひとつ、背パーツにロック機構がないので、カバンから取り出すときにうっかりスライドさせてしまい、中の紙がまとめてバサッと落ちてしまうこともあった。これはちょっと困る。
……などの不満はいくつかあるが、とはいえ第三のノートとして期待するだけのポテンシャルは十分にあると思う。
ファイルバインダーなんだけど、クリアホルダーぐらいの手軽さで紙を持ち運べて、ノートにもなる。これは紙の運用を考える上でかなり面白い選択肢になり得るのではないだろうか。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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