文房具
筆記用具
2023/12/10 20:00

話題の静音ボールペン「mute-on(ミュートン)」の音だけじゃない独自ギミックを検証

近年、筆記具業界で注目されている機能のひとつが「静音化」である。大まかに言えば「ノック音をいかに静かにするか」という技術で、ぺんてる「Calm」シリーズやパイロット「フリクションボールノックゾーン」に搭載され、話題となっている。

 

例えば試験で集中しているときなど、周囲で延々と「カチカチ」されたらイライラとしてしまうだろう。自分はそういった “音ハラスメント” をしないよう、ちゃんと気をつけて静音仕様のペンを使いましょう、というのが、昨今の静音ペンの流れのようだ。

 

トップクラスの静音性能をもつボールペン

そんななか、2023年4月、音ハラ対策の静音仕様ペンとして発売されたのがサンスター文具の「mute-on」(ミュートン)である。全8色(インクは黒のみ)の軸色名が、「夜更かしの猫」「浜辺の小瓶」のように、ちょっとした物語を感じさせるネーミングになっているところがポイントだ。個人的には、この手の色名にかなり気恥ずかしさを感じてしまうのだが……これは多分、筆者がメーカーの想定するターゲットユーザー層ではないからだろう。

サンスター文具
mute-on(ミュートン)
240円(税別)
8色展開

 

↑全8色の軸色にはそれぞれポエミーな名前が付けられている

 

さて、肝心の静音性に関してだが、昨今の静音仕様ペンの中ではまずトップクラスの静かさと言って間違いなさそう。ノック音そのものは、生活音の中に紛れてしまうとほぼ聞こえなくなるレベルで、これをうるさいと感じる人はまずいないはず。それぐらいに静かだ。

 

↑一般的なノックと比べて20db以上小さい音なので、静かな場所で耳を澄まさない限り音が気になることはなさそうだ

 

ノックに関してはもうひとつ、静音性に加えて「ノック解除忘れ防止」の機能も搭載されている。三角軸から浮きあがるように配置されていたクリップが、ノックノブを押し込むのに連動して、軸へ沈み込むように動くのである。つまり、この動作によってクリップが効かなくなるので、うっかりペン先を出したままシャツの胸ポケットや手帳に挿そうとしても気付くでしょ? というギミックなのだ。

 

このクリップの動きが妙にかわいいので、ついつい用もないのに繰り返しノックしてしまう人は出てきそうだ。(音ハラの心配が少ないので、その点も安心だ)

↑ノックに連動して動く「ノック解除忘れ防止」クリップ

 

リフィルは専用の0.5mmゲルインクを搭載。最近のサンスター文具ではお馴染みとなりつつある “たっぷりインクフロー” で、サラサラと気持ちの良い書き味が楽しめる。この手のつゆだく系がお好きな方であれば、かなりハマるのではないだろうか。

↑ペン先近くまであるエラストマーグリップ+三角軸のおかげで、どこを握ってもかなり安定感がある

 

↑良好なインクフローでかなり爽快感のある書き味となっている

 

LAMYと似ているようで違う。独自のノック機構に注目

実は筆者がこの「mute-on」を最初に見たときに感じたのが「あれ、これLAMY(ラミー)のnoto(ノト)では?」ということ。LAMYの「noto」といえば、世界的な工業デザイナーである深澤直人氏が手がけたボールペンで、ハートカムと呼ばれる特殊な機構で静音ノックを実現した逸品である。なめらかな三角形の軸と、長楕円のノックノブ、軸に切り込むようなクリップも特徴的だ。これらの要素だけで見ると、やはりこの2つ、近いような気もする。

↑LAMY「noto」(左)との比較。ノックノブや三角軸などの要素を抜き出せば似ているんだけど、並べてみると印象はわりと違う

 

さらに、ノックに連動したクリップの上下動も、同じくLAMYの「swift」に搭載されているギミック。これはさすがに、LAMYを意識していない、ということはないはずだ。ただし、当然ながら「mute-on」のノックはサンスター文具の独自機構(ハートカムではない)だし、デザインも突き詰めていけば別物。なので、捉え方としては「LAMYをリスペクトして進化させた」ということでいいんじゃないだろうか。

↑サンスター文具独自の静音ノック機構。写真中央のオレンジ色パーツが透明カバーに掘られた溝を動くことでノックを行うようだ

 

なにより、静音ノックにノック解除忘れ防止、爽快感のあるリフィル、握りやすいグリップなどなど、これだけあれこれ詰め込んで税別240円という価格はかなり衝撃的。これは買い逃すともったいない級のペンなので、見つけたらまずは即ゲットして、あれこれ試してみるのが正解だと思う。

 

筆者はまず、色名の気恥ずかしさだけは乗り越える必要があるけども。