これはあくまでも個人的な感覚なのだが、シャープペンシルにオートマチックはいらないかな、と思っている。筆者は極端に集中力が続かないタチなので、書き物をしているとすぐに「一息入れたいなー」と弱音を吐きがち。そういうとき、シャープの芯を出すノックがいい感じに “一瞬の休憩” になるというわけ。対してオートマチックだと、芯が1本なくなるまで休憩タイミングが来ない。これだと集中力を欠いたままダラダラと書き続けることになるので、メリハリが付かなくて、あまりよろしくないのだ。
なので、ひとまず「シャープにノックは欲しい派」なのだが……軸後端のノックノブを押すとき、イチイチ軸を握り直す手間が発生するのがどうも釈然としない。もうちょっと効率の良いノック方法があってもいいんじゃない? とも思うのだ。
先端引っ張りノックのユニークなシャープペンシル
過去には、軸側面にノックボタンを付けたサイドノック式や、軸を中程から少し折り曲げるボディノック式など、いろいろなノック方式のシャープが存在した。ただ、機構的にトラブルが起きやすかったり、コストが高い割にあまり売れなかったり……などの問題から、現在ではそのほとんどが廃番となっているのである。そんななかで、久々に登場した“変態ノック機構”のシャープとして注目されているのが、サンスター文具の「トプルS」だ。
サンスター文具
トッププルシャープ topull S(トプルS)
各360円(税別)
8色展開
トプルSは、見た目からしてなかなかにユニークだ。先端の金属製の口金(?)・プラの細い軸・軸、と三段で構成されたペン先が目に付くが、他にも前軸の不思議な分割や、それ以外にはほとんど凹凸のないデザインなども気になるところ。もちろん、後端にノックノブなんか存在しない。そして、肝心のノック機構に直接関係してくるのが、三段のペン先と前軸分割である。
ノックする際には、まず先端の細軸・軸の段差に人差し指と中指をかける。指をかけるときは、第一関節に近いあたりをひっかけるようにすると、やりやすいだろう。あとはそのまま手を握り込むようにして引き込むと、前軸の分割線のところから押し込まれて、カチッとノックされるという仕組みだ。これがサンスター文具独自の、先端を引き込んでノックする「トッププル機構」である。
ノックする際に軸を持ち替える手間はほとんどないため、効率の点ではかなり良さそう。筆記体勢のまま1ノックして、また筆記に戻るまでの所要時間は確実に1秒以下。かなりスピーディーにノックできるし、すぐさま筆記に戻りやすい。
ただし、ノック感がかなり重めなので、それを指先で操作するのはちょっとしんどいかな? と感じられた。さらに、段差が小さすぎて指の引っかかりが悪く、それをフォローするために、より指の力が必要になる。結果として、何度かノックしていると指がダルくなってしまうのだ。これに関しては、ある程度は慣れによって気にならなくなる……ような気はするが、できれば購入前にいちどノック感を試したほうが良いと思う。
意外な構造でコストダウンを図っている?
実際に試してみて感じたのは、まず先端視界の良さだ。トッププル機構のため、軸先に段差がついて細くなっている分、通常のコーンタイプの口金よりもペン先周辺が見やすい。重心は高めだが、トッププル用の分割線に指が掛からないようにすると、自動的に軸のやや上めを握る姿勢になるので、さほど気にならなかった。
ちなみに芯の補充は、細軸をつまんでひねって軸から分離し、シャープリフィルを抜き出して行う。リフィル自体がかなり細いので、芯は2〜3本でいっぱい。誤動作防止のためには、入れておく芯は無理せず2本で止めておくのが良さそうだ。
ところでこのリフィル、なにか既視感がある。もしかして、多機能ペンで使われている汎用品のシャープユニットをそのまま転用しているのではないか、と思われる。おそらくは生産コストを下げるための試みなのだろうが、わりと思い切った作りである。
他にないユニークなノック機構でありつつ300円台という低価格を実現するには、こういう工夫が必要なのだろう。さまざまな面で非常にチャレンジブルなシャープペンシルといった印象なので、文房具好きならひとまず試しておく価値はあると思う。