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2024/1/14 19:30

3色ボールペンは黒赤青だと誰が決めた!“黒黒赤”に矜持を感じるサクラクレパス「ボールサインiD3C」の実用性はどうだ?

手帳と一緒にペンを持ち歩く場合、“3色ボールペン”を選ぶ人は多いのではないだろうか。メインの筆記色である黒、プライベートなど書き分けるサブ筆記色の青、訂正や注意喚起色の赤……など、色ごとに用途を定めることで、手帳の狭い紙面においても情報を整理しやすいメリットがあるからだ。

 

日本初の3色ボールペンは、1964年にゼブラが発売した「スリーカラー」。黒・青・赤の3色がスライドノックで1本の軸に収まった、現在の製品とさほど変わらないようなスタイルである。これはつまり、約60年も前から3色ボールペンに採用されるインク色は変わっていないということ。でも、果たしてこの“黒・青・赤”が絶対的な正解なんだろうか?

 

“黒”がメインではない3色ボールペン

考えてみるまでもなく、情報を整理するためにボールペンに必要なのは、書き分けを行うためのインク色の違いだけ。常に黒・青・赤である必要はないはずだが、機能としてはメインとサブの筆記色が2色+訂正用の赤という組み合わせが使いやすいだろう。その点で言えば、サクラクレバスから2023年に発売された「ボールサインiD 3C」はなかなかに興味深い。

サクラクレパス
ボールサインiD 3C
各850円(税別)
全3タイプ

 

「ボールサインiD」といえば、2020年に発売されたゲルインクボールペンのシリーズで、6色すべてがカラーブラックという思い切ったラインナップで人気となったもの。今回取り上げるボールサイン iD 3Cは名前の通り、同シリーズによる多色ボールペンの3色タイプとなる。当然、こちらにもカラーブラックを搭載している。軸色はホワイトとブラックの2タイプだが、0.4mmのボール径や3色の組み合わせに差異はないので、好みの軸色を選べばOKだ。

 

ラインナップは「黒(ピュアブラック)・青・赤」(下図A)、「ナイトブラック・黒・赤」(下図B)、「フォレストブラック・黒・赤」(下図C)の3種類。ナイトブラックはいわゆるブルーブラックのひとつで、知的さを感じさせる大人のブルーといった雰囲気。一方のフォレストブラックはグリーン系の落ち着いたブラックで、ゆったりと書き物をするときに向いていそう。

↑ボールサインiDシリーズだけに、カラーブラック搭載が大きなポイントだ

 

↑サラッとしつつコントロールも効きやすい、バランスの取れた書き味も楽しい

 

ペン先を出すには、スライドノックにくっついた粒のようなノブ(兼カラー表示)に指をかけて押し込んで操作する。このノブがあまりに小さいので少し不安になるかもしれないが、エラストマー製で摩擦力は充分にあり、実用性は問題無し。また、ノブが小さい=インク色が目立ちにくいことで、全体的に単色ボールペンのようなスッキリとしたデザインになっているのもポイントだ。

↑カラー表示も兼ねた粒状のノブは、見た目で思うよりも指掛かりが良く、ノックしやすい

 

ノックの配置から見ても、やはり黒はメインじゃなかった!?

ところで、スライドノックの配置に注目したら面白いことに気づいた。(A)のスライドは、黒がクリップに向かって右側、クリップ裏が青、クリップ左が赤という配置。つまり、クリップ右がメイン筆記色の場所ということだろう。そこであらためて(B)と(C)のスライドを見ると、クリップ右側にはナイトブラック/フォレストブラックがあり、裏が黒、左が赤という配置である。(B)と(C)においてメイン筆記色はあくまでもカラーブラック系で、黒はサブという立ち位置であると言えよう。

↑一般的に金属クリップに向かって右側がメイン筆記色の位置と考えると、ボールサインiD 3Cではカラーブラックがメインかも

 

考えてみれば確かに、わざわざカラーブラックのペンを選んで買うのは、それをメインに使いたいからに他ならない。それにしても、絶対的なメイン筆記色である黒をサブに据えてしまうという割り切りには、「サクラクレパス、思い切ったな……」と驚かされた。

 

ただし、少し残念だったのがグリップの仕上がりだ。実は、初代でツルツルした素材ゆえに握りづらかったグリップが、上位モデルの「ボールサインiDプラス」では摩擦力の高いマットなものに改良されている。ところが、今回のボールサインiD 3C では、なぜか初代と同じようなグリップに戻されていた。筆圧が強かったり手汗をかいたりする人間にとって、現状の素材だとかなり滑りやすいので、戻ってしまったのは正直もったいないなーと感じた。

↑円筒形の一部を削いだような通称 “iD設計” グリップ。指は置きやすいが、ツルツルすべるの点で握りづらく感じた

 

それでも、カラーブラックを選べる3色ボールペンというのは他に無く、それだけでも価値は高い。少なくとも初代ボールサインiDでカラーブラックの楽しみを知った人なら、買って損はないだろう。個人的にはボールサインiDのパープル系ミステリアスブラックが推し色なので、いずれはそれもボールサインiD 3C のラインアップされないかなぁ、と期待している。