乗り物
2025/2/18 19:30

運転中に視線を外すことなく速度が確認できる!日本精機が後付けヘッドアップディスプレイ「ルミエハッド」を発売へ

スピードメーターなど自動車用計器類大手の日本精機は、後付けで自分でも簡単に装着できるヘッドアップディスプレイ(HUD)「LumieHUD(ルミエハッド)」を205年春より発売します(当初、発売を2月下旬としていましたが延期されました)。カラバリはブルー/グレー/アイボリーの3色を用意し、価格はいずれも2万2000円(税込)。アイボリーのみ少し遅れて春頃の発売になる見込みです。

↑ボディカラーは、全3色(ブルー/グレー/アイボリー)を用意した

 

コンパクトカーや軽自動車向けにHUDの機能をコンパクトに一体化

ルミエハッドの最大の特徴は、光を反射させて表示する複雑な構造を持つHUDにも関わらず、それを一体化して大きさを抑えたことにあります。HUDは光学反射の原理を利用して、フロントガラスに映像を投影することで、速度やナビゲーションの案内などの情報を虚像として2m程度先に映し出します。これによりドライバーは視線を移動させることなく自然に情報が得られるのです。

↑ドライバーの視線からはこんな風に見える。※速度はイメージです

 

↑ドライバーは視線をほとんど移動することなく、速度を把握できる

 

ただ、これまではコスト上の兼ね合いから、一部の軽自動車(スズキ「スペーシア」など)を除けば高級車を中心に標準搭載されてきたのが実情でした。そうした背景があるためか、日本精機の調査によれば、サイズの小さいコンパクトカーや軽自動車のユーザーには認知度が低い傾向にあります。そこで同社はHUDの普及を図るべく、ルミエハッドの主なユーザー層をここに絞り込んで開発を行ったのです。

 

開発にあたって課題となったのは、「複雑な構造で成り立っていたHUDをいかにコンパクトにするかだった」と開発者は語ります。HUDは一般的に、表示器から発光された表示は反射鏡と凹面鏡で2回反射してフロントウインドウに像を投影する仕組みとなっています。それ故、表示されている像を見ているだけでは想像も付かないほど大型なのです。つまり、この解決こそが開発における最大の課題でした。

↑HUD(ヘッドアップディスプレイ)の仕組み。複雑な光学系を持つため、ダッシュボード内には大型システムが隠れている(出典:日本精機)

 

光学系の大幅な改良で本体のコンパクト化を実現

ポイントは、像を表示するコンバイナに凹面鏡の役割を持たせたことにあります。

 

ダッシュボードに組み込まれるHUDは、光源となる表示器から発出された像を、反射鏡と凹面鏡の2回反射させてフロントウインドウに像を投影する仕組みとなっています。ルミエハッドでは、表示器から発出された光は補正鏡と呼ばれる凸面鏡に1回反射させるだけでコンバイナに像を投影します。つまり、本来なら像を拡大するために必要な凹面鏡と、それを映し出すフロントウインドウの役割を、コンバイナが果たすことでシステムのコンパクト化が実現したのです。

↑ルミエハッドの製品仕様と光学構造。反射経路をシンプルにし、なおかつコンバイナに凹面鏡とフロントガラスの役割を持たすことで実現した(出典:日本精機)

 

光学系を専用設計としたことで、本体のコンパクト化にかかわらず、およそ1.5m先に虚像が浮かび上がることに成功。ダッシュボードの上に置いてもHUDとしてのメリットは十分発揮できるというわけです。

↑HUDによって実際よりも遠くに虚像を表示できるため、視界に入りやすく楽に情報が読み取れる(出典:日本精機)

 

また、ダッシュボードに置いて使う以上、冷却にも気遣う必要がありますが、これは表示を速度のみとし、輝度が高く温度が上がりにくい表示器を使用することで対応。さらに、HUDでは一般的に凹面鏡を電動で動かすことがほとんどですが、ルミエハッドではそれを省き、代わりにスペーサーを本体に差し込むことで代用しています。こうした工夫が本体のコンパクト化につながったのです。

 

その本体は、片手でも十分に乗るコンパクトさ(幅121×奥行111×高さ113mm)で、コンバイナと呼ばれる透明のパネルにリアルタイムの走行速度を映し出します。速度は本体に内蔵するGPSユニットで受信した情報を元に計算して表示するため、車両側との接続はUSB(タイプA)から取る電源のみ。これなら、誰でも簡単に取り付けられます。

↑ルミエハッド本体の大きさを検討できるよう、ペーパークラフトが用意されている。ホームページからもダウンロード可能 https://lumiehud.moado.jp/

 

↑クルマとはUSBケーブル1本接続するだけ。誰でもすぐに使える

 

前方を見ているだけで、自然に速度表示が視界に入ってくる

発表会場ではデモ機による実演もされていました。車両はホンダ「フリード」。ダッシュボードがメーターも含め、横一線にデザインされていることもあり、ルミエハッドを載せた状態でも違和感なく取り付けられています。特にコンバイナの高さがボンネットの先端あたりに投影されているように見えるので、表示された速度情報は自然に視界に入ってくる感じです。

↑ダッシュボードの上に後付けして使う「ルミエハッド」。速度表示が自然に視線内に入ってくる。取り付け車種は新型フリード

 

↑ルミエハッドの発表説明会にて。日本精機の佐藤浩一社長は「今後はルミエハッドをベースに様々な機能をHUDで表示できるようバリエーションを増やし、シリーズ化していきたい」としていた

 

会場は屋外でしたが、それでも輝度は十分で、表示はくっきり鮮明に見えます。表示は自動調光されるとのことですが、任意で5段階に調整ができます。これなら日差しが強い時期でも十分に対応できるでしょう。速度は気付かないうちにうっかり超過してしまうもの。この表示によって走行速度が常に視野内に入ってくれば、そんなミスも未然に防ぐことにつながります。その意味でもルミエハッドは安全なドライブに大きく貢献するでしょう。

↑ルミエハッドのサイドには、自動調光のためのセンサーや、明るさを5段階に切り替えられるスイッチが用意されている

 

ただ、個人的は、表示が速度だけということで少々物足りなさを感じてしまうのも確かです。私としては、ルミエハッドの登場によってHUDが身近になり、それがより普及につながることへの期待値は大きいと感じています。ただ、可能であれば、スマートフォンと連携して、ナビアプリでの“ターンbyターン”案内にも対応できたりすれば、後付けHUDの魅力も増すのではないでしょうか。

 

日本精機の佐藤浩一社長は、「ルミエハッド はHUDの普及を第1の目的としているため、機能は絞って価格を下げている。今後はルミエハッドをベースに様々な機能をHUDで表示できるようバリエーションを増やし、シリーズ化していきたい」と発言していましたが、HUDの魅力が広く伝わるような商品展開を期待したいと思います。

 

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