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2025/4/27 19:15

発表4日で5万台の注文殺到! ジムニーノマド爆売れの背景と“ジムニーらしさ”の進化を自動車ジャーナリストがあらためて解説

1月30日の発表直後から販売計画台数を大きく超える約5万台の注文を受けたことで、注文の受付を一時的に停止しているスズキのオフロード4WD車「ジムニー ノマド」。ここまで大ヒットしているのは、いったいなぜなのか? 「ノマド」を含む4代目ジムニーシリーズの魅力を語ろう。

 

かつてない現象を巻き起こしている4代目

ジムニーが誕生したのは1970年のこと。車体は小さいながら本格的な悪路走破性を備えた唯一無二の存在として、熱狂的な支持者を生み出してきた。ジープ(Jeep)型のミニという意味を込め、「Jeep」と「Mini」「Tiny」をかけあわせ命名されたもので、メーカーの公式発表でも「発音のしやすさ、覚えやすさなどから作った造語である」とされている。

↑初代ジムニーLJ10型。当時のキャッチコピーは「自然に挑戦する男のくるま」「男の相棒☆ジムニー」など。

 

その初代から2018年に発売された現行の4代目まで、わずか3回しかモデルチェンジしていないのも特徴だが、とくにカジュアルなスタイリングをまとい快適性や先進運転支援機能を充実させた4代目は、かつてない現象を巻き起こし、これまでもたびたび話題になってきた。

↑2018年7月に登場した4代目ジムニー。過去5年の販売台数は約20万台。

 

発売当初から納車の遅れがたびたび報じられるほどの爆発的な人気を博したのを、おそらく読者のみなさんも耳にしたことがあることだろう。軽自動車の「ジムニー」はもちろん、とくに小型車の「ジムニー シエラ」の遅れが顕著だった。時間が経過して納車の遅れが多少は改善するかと思われた頃に、ちょうどコロナ禍や半導体不足に見舞われ、再び納車が遅れるなど、なにかと“納車の遅れ”がずっと取り沙汰されてきた。

↑2018年7月に登場した4代目ジムニー シエラ。過去5年の販売台数は約10万台。

 

5ドア版ジムニーは海外市場で先行投入されていた

そんな中で、4代目ジムニーには歴代ジムニーにはなかった5ドア版が存在し、海外市場に先行して投入されたことが明らかになると、日本での販売を求める声が噴出した。

 

ところが、3ドア版のジムニーやシエラのバックオーダーを大量にかかえており、スズキは「すでに注文いただいたユーザーへの納車のメドがたたないことには、5ドア版を日本に導入するわけにはいかない」と考えている旨を伝え聞いていた。

↑スズキのインド子会社のマルチスズキで発売された「ジムニー5ドア」。車名は5枚ドア版というとことでストレート。

 

一方で、日本でも待ちきれないユーザーに向けてショップが独自に逆輸入して販売したものが見受けられたものの、価格がだいぶ高かった上に、数も場所も限られるので誰でも買えるわけではなく、やはり正規モデルの5ドア版の日本導入を求める声は強かった。

 

かたや納車の遅れは、そう簡単に解消しそうな気配が感じられなかったので、5ドア版の導入はまだ先の話なのかと思っていたところに、やや唐突に5ドア版の国内導入が報じられた。海外向けの5ドアにはとくにサブネームが付かないのに対し、日本向けの5ドア版は「ジムニー ノマド」と命名され、2025年1月30日に発表されるや、直後から注文が殺到して、あっというまに5万台に達し、わずか4日半で受注停止となってしまったのだ。

 

このタイミングでノマドを発表したのは、依然として年単位といわれる3ドアのシエラをすでに注文している人でノマドに流れるケースがあり納期の短縮が図れるという見込みもあったようだ。たしかにそうした人もいた一方で、ノマドの導入を心待ちにしていて新たに注文した人が想像をはるかに超えて多かったという。

 

そんなわけで、5ドア版はしばらく注文できそうにないわけだが、そんなに爆発的な人気を誇るのがどういうクルマなのかを、以下で紹介していこう。

 

本格的な悪路走破性を持つ5ドア コンパクトクロカン4x4

商品コンセプトはズバリ、「本格的な悪路走破性を持つ5ドア コンパクトクロカン4x4」だ。現行型には軽自動車規格のジムニーと、小型車規格のシエラがあることは前述のとおりで、ノマドはシエラをベースにホイールベースと全長を340mm延長するとともにリアドアを追加したという成り立ちとなる。

↑「ジムニー ノマド」。

 

↑2トーンルーフ仕様車は、「シズリングレッドメタリック ブラック2トーンルーフ」、「シフォンアイボリーパールメタリック2 ブラック2トーンルーフ」の2色を設定。

 

これにより後席の乗降性はもちろん、後席のヒップポイントを50mm後方に移動することでひざ前のスペースを拡大するとともに、後席左右の乗員間距離を90mm拡大することで、後席乗員の居住性を高めた。さらに、後席ヒップポイントを20mm高くし、シートクッション厚を確保したほか、リアウインドウまわりにトリムを追加することで、より後席乗員の快適性を高めた。ただし、乗車定員が5人乗りではなく4人乗りである点はシエラと同じだ。

↑長時間走行でも疲れにくいシートを実現。また、前後席シート座面・背もたれ部分には撥水加工を施している。

 

ホイールベースの延長にともない、4名乗車時の荷室床面長がシエラに対して350mm拡大し、荷室容量が126リットルも拡大するとともに、荷物の滑りにくいカーペットを採用するなど、荷室の使い勝手も大幅に向上している。このように後席の乗降性や利便性を理由にシエラを棄却していたユーザーにも選んでもらえる仕様となっている。ホイールベース延長により乗り心地や操縦安定性が向上することも期待できる。

↑ノマドの全長は3890mm。シエラと比べて全高は5mm高くなっているが、全幅はシエラと同様。

 

↑2枚乗車時のイメージ。荷室内寸法は幅1210mm、床面長(2名乗車時)1240mm/床面長(4名乗車時)590mm、高960mm。荷室容量は211リットルとなる。

 

エクステリアはジムニーシリーズに通じる5スロットグリルを採用しながらも、クロームの縁取りとガンメタリックの塗装を施した専用のグリルとして上質感を演出している。日本初導入の車体色というメインカラーの「シズリングレッドメタリック/ブラックルーフ」もノマドの雰囲気によく似合っている。

 

1.5リッター直4エンジンはジムニーシエラと共通で、先進予防安全技術についても、衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」を標準装備としたほか、4AT車には標準装備のACCとともに後退時ブレーキサポートや後方誤発進抑制機能を採用するなど、不満のない内容となっている。

↑ラダーフレームはジムニー ノマド用に新作し、優れた悪路走破性を継承。

 

グレードの区別はなく、車両価格は5MT車が265万1000円、4AT車が275万円となっている。これはシエラの上級グレードである「JC」に対して56万6500円高いことになるが、他メーカーも含め自動車の価格が軒並み上昇する中で、この内容でこの価格なら注文が殺到するのもうなずけるというものだ。

 

即座に受注停止になるほどの人気に対し、スズキは「予想を大きく超える受注により多くのユーザーや関係者に迷惑をかけていることを申し訳なく思っており、これ以上、迷惑をかけないために注文を停止せざるをえなかった」というが、「全社を挙げて取り組み、何とか早くお届けできるように対応に努めております」とのコメントを広報担当氏からもらったことを読者のみなさんにもお伝えしておきたい。

 

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