CX-3は、もともとスタイリッシュなコンパクトカーを作ろうと企画され、それがたまたまSUVっぽくなったという経緯を持ちます。このクラスとしては異例のロングノーズ&スモールキャビンによるフォルムは、居住性や荷室はそれなりにとどまるものの、独特の美しさを醸し出しています。
小排気量ディーゼルは力強くスムーズ。さらに、エンジンの駆動力制御により4輪の接地荷重を最適化する「G-ベクタリングコントロール(以下GVC)」など、マツダ独自の技術を満載しています。
今回は、「ハンドリング/取り回し」「乗り心地」「質感」「安全性」「居住性」「ユーティリティ」の6項目にわたって、各5点満点でモータージャーナリストの岡本幸一郎さんが徹底採点。国産コンパクトSUV購入の際の参考にしてください。
【今回はグレード「XD Lパッケージ 2WD」で採点】
マツダ
CX-3
237万6000円~306万6400円
CX-5の弟分として登場。エンジンはディーゼルのみの割り切った設定で、今回の中で唯一、ATとMTが選べるのが特徴です。スカイアクティブ技術をはじめ、マツダ独自の技術を駆使した走りは他車とは一線を画する完成度を誇ります。居住空間は前席は申し分ないのですが、後席はそれなり……。トランクの奥行きも小さめ。実用車としての使い勝手よりも、サイズとデザインに共感を覚える人向きです。
【評価項目01】
ハンドリング/取り回し評価:4.5点
GVCの採用により、極めて高い直進安定性や操安性を実現。運転すると、曲がるときのステアリング舵角が小さくてすむことがすぐわかります。
エンジンはディーゼルのみと潔い内容。1.5Lの小排気量ディーゼルはリニアな特性で運転しやすくなっています。特有のノック音や振動を低減するハイテク技術も搭載。
【評価項目02】
乗り心地評価:3.5点
交差点を曲がるような日常的なケースでも、身体が横に振られる感覚が小さくなることを体感。GVCは、間接的な乗り心地にもその恩恵が得られます。
【評価項目03】
質感評価:5.0点
ホワイトレザーやアルミパネルなどを用いて、このクラスの常識を打ち破る上質さを表現。国産車では珍しい回転式エアコン送風口は風向きを直感的に調整でき、見た目にも高級感があります。
水平基調デザインの高級感ある室内。エアコン吹き出し口はグレードによって加飾が異なります。
【評価項目04】
安全性評価:4.0点
単眼カメラとミリ波レーダーを用いたシステムを設定。ドライビングポジションがとても自然なうえ、視線を進行方向から極力移動させずにすむように各部が工夫されています。
停止状態まで追従(0〜約100㎞/h)する安全運転支援システム「アイ・アクティブセンス」を採用。搭載カメラが速度制限などを認識、ドライバーに安全運転を促します。
【評価項目05】
居住性評価:2.5点
頭上:コブシ0.5個分のスペース
膝まわり:コブシ1.5個分のスペース
足下:コブシ1個分のスペース
(身長172cmの男性が乗車した場合)
ステップが低いのはよしとして、前後席間の距離が小さいため、乗降性や居住性はそれなり。リアシートはクッションが厚く、ヒップポイントが意外と高めに設定されています。
前席よりも着座位置を25㎜内側に、37㎜高く設定することで着座位置を高めにしています。
【評価項目06】
ユーティリティ評価:3.0点
荷室容量:通常時350L
ラゲッジは広くはないものの、開口部は大きめ。フレキシブルボードの下にサブトランクのある二重構造により、荷物を分けたりフロア高を変えたりと様々な使い方ができます。
XVやC-HR、ヴェゼルなどと比べて小柄なボディながら350Lの積載容量を確保。床下のボードはシーンに応じてアレンジ可能。
【ここもスゴイ】
①国産車では唯一となる統合コントローラーを装備
「マツダコネクト」はシフト後方のダイヤル式コマンダーにより操作。これも視線移動を少なくするためです。
②上質さ&機能性を両立した心地良いシート
滑りやすく汚れやすい部分はラックススエードを配し、乗り心地をアップ。赤いアクセントも上質です。
【総合評価】
総合評価:22.5/30
取り回し:4.5、乗り心地:3.5、質感:5、安全性:4、居住性:2.5、ユーティリティ:3
デザインと走りの両得!SUV界のホットハッチ的存在
SUVというよりスタイリッシュなコンパクトカー的な存在。実用性を求める人には向かない側面がありますが、それもCX-3の性格のうち。洗練されたデザインと走りが魅力のモデル。
【モータージャーナリスト岡本幸一郎さんオススメのグレード】
CX-3 XD Lパッケージ(4WD)
上級装備の充実ぶりから最上級のLパッケージ狙い
「エンジンはディーゼルのみで、2WDと4WD、MTとATが選べる。グレードは予算に余裕があればぜひLパッケージを選びたいところ。競合他車にはないCX-3ならではの上級装備が与えられるからだ。駆動方式について、いまのマツダは相当ハイレベルな4WDシステムを用意しており、本命は4WDだ」(岡本)
【パッケージ&グレード構成】
【解説してくれた人】
モータージャーナリスト
岡本幸一郎さん
1968年生まれ。矢継ぎ早に登場する新型車のほぼすべて網羅。年間の試乗台数は数百台におよぶ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。