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2018/5/11 20:30

まもなく見られなくなる? 終焉近づく「国鉄形電車」のいまと今後【2018年春 保存版】

国鉄形の特急電車189系・381系の動向は?

2018年の春、首都圏でその動向が最も注目された車両が、特急形電車の189系だった。1975(昭和50)年、国鉄が信越本線用に造った車両で、近年は中央本線の多くの臨時列車に使われてきた。国鉄時代に生まれた特急らしい姿を保った車両で人気も高かった。

 

189系は6両×4編成が残っていたが、この春に3編成がほぼ同時期に引退となった。まだ走るだろうと思われていた車両だっただけに、多くの鉄道ファンを驚かせることに。残るは長野総合車両センターに配置されるN102編成のみとなっている。一編成のみとなった車両の今後の動向が注目される。

↑長野総合車両センターに配置される189系のN102編成。あずさ色で塗られる。この5月19〜20日には「桔梗ヶ原ワイナリー号」として長野駅〜塩尻駅間を走る予定だ

 

国鉄時代に生まれた特急用の電車には、あと2種類、国鉄形電車が残っている。381系と185系電車だ。

 

1973(昭和48)年に登場したのが381系電車。カーブが多い路線のスピードアップを図るため振子装置が組み込まれた初の車両だった。中央本線などで活躍したが、すでにJR東海に受け継がれた381系は、全車が引退、JR西日本に残る車両のみとなっている。

 

そのうち、紀勢本線、福知山線などを走った381系は、すでに消えて、残るは岡山駅〜出雲市駅間を結ぶ特急「やくも」のみとなった。振子装置の動きに違和感を覚える利用者も多く、人気薄なのがちょっと残念だ。

↑特急「やくも」として走る381系電車。車両はすべてが「ゆったりやくも」カラーで塗られる。JR西日本の381系の運用は、すでにこの「やくも」のみとなっている

 

さて、特急形電車の残り一車両、185系の動向。現在は、東京と伊豆半島を結ぶ特急「踊り子」として多くの車両が使われている。この185系も、今後は中央本線などを走るE257系との入れ換えが予想されている。

 

この185系や、381系の運用が終わるとき(2018年5月時点で両車両とも車両変更の発表は行われていない)に、本当に国鉄形の特急電車が終焉の時を迎えることになりそうだ。

↑特急「踊り子」以外にも首都圏を走る臨時列車として使われる185系。この車両もすでに生まれてから30年以上たっている

 

そのほか今後の動向が気になる車両をいくつか−−

国鉄の最晩年に生まれた車両も徐々にだが、引退する車両が出始めている。そんな晩年生まれで気になる車両をいくつかここで見ておこう。

 

まずは105系。この電車は地方路線用に造られた電車で2両編成が基本。1両が電動車、もう1両は付随車という構成だ。輸送密度の低い路線にはうってつけの電車で、現在はJR西日本管内のみに残る。運行される路線は近畿地方では和歌山線や桜井線など、中国地方では、宇部線、小野田線などだ。

 

そんな105系が走る和歌山線、桜井線に新車を導入することが2018年3月に発表された。広島地区にも導入されている227系で、2両編成×28本が造られる。車載型IC改札機を搭載した車両で、2019年春に登場、2020年春には105系が全車置き換えとなる予定だ。

↑和歌山線を走る105系。オーシャンブルーの和歌山色で塗られる。和歌山線には103系を改造した105系も走る。103系の改造車は写真のようにかつての姿を色濃く残す

 

205系も一部の路線では動向が注目される存在になりつつある。205系は国鉄の1985年に登場した通勤形電車。JRになったあとも増備された。軽量ステンレス製の車体で、最初に山手線に導入されるなど、首都圏ではおなじみになった電車だった。

 

いまでも郊外の路線を走り続けているが、多くが正面の形を変更した更新車両が多くなっている。そんななかで、オリジナルの形をした205系が走っていたのが、武蔵野線だ。この武蔵野線でも、205系の後に造られた209系や、E231系といった車両との置き換えが進められつつある。

 

2018年2月にはJR東日本から武蔵野線を走っていた205系の全車両がインドネシア通勤鉄道会社に譲渡されることが発表された。オリジナル色が強い武蔵野線の205系も近日中に見納めとなりそうだ。

↑長年、活躍してきた武蔵野線の205系だが、全車両がインドネシア・ジャカルタの鉄道会社への譲渡が発表された。ここ1〜2年で209系やE231系に置き換えられそうだ

 

希少な車両ゆえに生き延びている国鉄形電車もある

国鉄時代に生まれた電車のなかで、希少な存在なだけに、いまも重宝される電車がある。そんな国鉄形電車の話題にふれておこう。

 

まずは123系。この123系、荷物用電車として生まれた。1両の前後に運転席があり、1両で運行できるように造られている。鉄道での手荷物・郵便輸送が、廃止されたこともあり、国鉄時代の最晩年に、13両が一般乗客向けの電車に改造された。現在、残るのはJR西日本の5両のみ。宇部線、小野田線といった路線で使われている。

 

JR西日本では1両で運行できる125系をすでに開発していて、小浜線、加古川線で利用している。とはいえ、やはり都市部向け新車両の増備が優先されそう。宇野線や小野田線では、今後しばらくの間は123系が走り続けそうだ。

↑荷物車を改造して造られたJR西日本の123系。1両で走ることができ、利用者の少ないローカル路線では重宝される存在でもある。まだまだその活躍を見ることができそうだ

 

JR九州の415系も希少がゆえに生き延びている国鉄形電車といっていいだろう。JR九州の電車は、ほとんどが交流電車。筑肥線など一部に直流電車が使われる。両電化方式に対応した交直流両用電車は、国鉄時代に生まれた415系のみだ。JR九州の在来線は、ほとんどが交流電化区間だが、関門トンネルをはさんで下関駅まで走る場合は、下関側が直流電化区間となるため、交直両用電車が必要となる。唯一の交直流両用電車である415系が欠かせないわけだ。

↑415系はJR九州では唯一となる交直流両用電車。関門トンネルを越えて下関駅まで電車を走らせるために、必要不可欠な存在となっている

 

415系は1971(昭和46)年からの製造とかなりの古参車両でもある。すでにJR東日本に引き継がれた415系は全車が引退したが、JR九州では先の事情があり、JR東日本からの譲渡された車両を含め150両以上の大所帯が残存する。

 

JR九州では将来に備え、新交直流電車の新造では無く、蓄電池形ディーゼルエレクトリック車両を開発中。関門区間での運用も検討されているようだが、415系の置き換えは、だいぶ先の話となりそうだ。

 

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