【豊橋鉄道市内線】豊橋市内を走る路面電車も見どころいっぱい
豊橋鉄道では路面電車の路線を「豊鉄市内線」と案内している。路線名は東田(あずまだ)本線が正式な名前だ。ここでは市内線という通称名で呼ぶことにしよう。
ちなみに東海中部地方では、豊橋鉄道市内線が唯一の路面電車でもある。
市内線の路線は駅前〜赤岩口間の4.8kmと、井原〜運動公園前間の0.6kmの計5.4kmである。
路面電車は豊橋駅東口にある「駅前」停留場から発車する。行き先は「赤岩口(あかいわぐち)」と「運動公園前」がメインだ。途中の「競輪場前」止まりも走っている。
名鉄や都電の譲渡車輌に加えて新製した低床車輌も走る
市内線で使われる車輌は5種類。
まず低床のLRV(Light Rail Vehicleの略)タイプのT1000形「ほっトラム」は、1925年以来、約83年ぶりとなる自社発注の新製車輌でもある。
ほか、モ3200形は名鉄岐阜市内線で使われていたモ580形3両を譲り受けたもの。モ3500形は東京都交通局の都電荒川線を走った7000形で、4両が走る。
モ780形は名鉄岐阜市内線を走ったモ780形で、市内線では7両が走り、主力車輌として活躍している。そのほか、モ800形という車輌も1両走る。こちらは名鉄美濃町線を走っていた車輌だ。
市内線を走る電車は、T1000形以外は、名鉄と都電として活躍した車両が多い。豊橋鉄道へやってきたこれらの電車たち。独特のラッピング広告をほどこされ、見ているだけでも楽しい電車に出会える。
日本一の急カーブに加えて、国道1号を堂々と走る姿も名物に
市内線は豊橋駅から、豊橋市街を通る旧東海道方面や、三河吉田藩の藩庁がおかれた吉田城趾方面へ行くのに便利な路線だ。
興味深いのは、市役所前から東八町(ひがしはっちょう)にかけて国道1号を走ること。国道1号を走る路面電車は、全国を走る路面電車でもこの豊橋鉄道市内線だけ。自動車や長距離トラックと並走する姿を目にすることができる。
国道1号を通るとともに、面白い光景を見ることができるのが井原電停付近。井原電停から運動公園前へ行く電車は、交差点内で急カーブを曲がる。このカーブの大きさは半径11mというもの。このカーブは日本の営業線のなかでは最も急なカーブとされている。
ちなみに普通鉄道のカーブは最も急なものでも半径60mぐらい。それでもかなりスピードを落として走ることが必要だ。
路面電車でも半径30mぐらいがかなり急とされているので、半径11mというカーブは極端だ。このカーブを曲がれるように、同市内線の電車は改造されている。
T1000形は、この急カーブを曲がり切れないため、運動公園前への運用は行われていないほどだ。日本で最も厳しいカーブを路面電車が曲がるその光景はぜひとも見ておきたい。
赤岩口へ向かう電車は井原電停の先を直進する。赤岩口には同線の車輌基地がある。
この赤岩口も、同路線の見どころの1つ。車庫から出庫する電車は市内線に入る際に一度、道路上に設けられた折り返し線に入って、そこでスイッチバックして赤岩口電停へ入る。
折り返し線は道路中央にあり、通行する自動車の進入防止の柵もなく、何とも心もとない印象だが、通行するドライバーも慣れているのだろう。白線にそって電車の線路を避けて通る様子が見受けられる。