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2019/1/19 17:30

閑散路線「南海加太線」が人気路線に様変わりーー鯛で人を釣った「めでたいでんしゃ」

【めでたい加太線に乗る1】まずは紀の川を渡る鉄橋に注目したい

つい車両の解説が多くなってしまったが、ここからは加太線の沿線模様に移ろう。和歌山市へ初めて訪れる方にまずアドバイス。

 

和歌山市には玄関口となる駅が2駅ある。JRの代表的な駅が和歌山駅。JR阪和線、JR紀勢本線や和歌山電鐵の電車が発着する。一方、南海の代表的な駅が和歌山市駅となる。それぞれ特急停車駅で、大阪方面からのアクセスが良い。

 

このJRの和歌山駅と南海の和歌山市駅は直線距離で2.5kmほど離れている。とても徒歩で移動とはいかない。といって、両駅を結ぶJR紀勢本線の電車を乗ろうとすると、列車本数が少ない(日中は1時間に1本)。特急列車などとの待合せも良いとは言えない。そこで和歌山駅を利用する時には、和歌山駅→和歌山市駅間をバス(和歌山バス)で移動したほうが賢明だ。本数も多く便利で乗車5分ほどで和歌山市駅に到着する。

↑和歌山市駅へは大阪・難波駅から特急サザンの利用が便利。同特急は和歌山市駅側の4両が有料で座席指定制(大人510円)。後ろ4両が運賃のみで乗車できる無料車両となっている。写真の12000系は車両も新しく快適だ

 

加太線の電車は朝晩が15〜20分おき、日中は30分おきに運行される。和歌山市駅から加太駅までの乗車時間は23〜24分。終点の加太駅近辺を散歩するとしても2〜3時間あれば、十分に楽しめるローカル線でもある。

 

和歌山市駅から加太線の沿線模様を順に見ていこう。

 

現在、和歌山市駅は駅の改良工事中。2020年10月にはホテル、市民図書館などが入る主要3棟ができ上がる予定だ。現在は、駅構内にコンビニはあるが、周辺に食事できる施設などがなくちょっと不便に感じられた。

 

↑和歌山市駅の3番線ホームから加太線の電車が発車する。隣の2番線からはJR紀勢本線の和歌山駅行きの電車が発着する。4〜7番線は南海本線と南海和歌山港駅行きの電車が発着する。ちなみに和歌山市駅は1番線ホームがなく欠番扱いとなっている

 

↑南海本線の紀の川橋梁は上り線(左側)と下り線では誕生した年が異なり、橋の上部の造作が異なっている。上り線は1903(明治36)年の誕生、中心部はプラットトラス橋という構造。下り線は1922(大正11)年の誕生でワーレントラス橋という構造を持つ

 

和歌山市駅を出て紀ノ川駅までは南海本線の路線を走る。両駅の間に流れるのが紀の川だ。紀の川は紀伊半島の中央にある大台ケ原を水源とした河川で、多雨な紀伊半島を流れる河川だけに、水量が常に豊富だ。

 

この紀の川を渡る南海本線の紀の川橋梁は上り、下り路線の鉄橋がそれぞれ誕生した年が異なる。橋の上の構造物(トラス橋)の形が違い、鉄道好きとしては気になる橋梁だ。

 

 

【めでたい加太線に乗る2】紀ノ川駅で分岐して西の加太を目指す

紀ノ川駅で南海本線と分岐、ここから本来の加太線の路線が始まる。路線が分岐する地点から左カーブを描き南海本線と分かれていく。しばらくの間、複線区間が続き、その先で単線となるが、線路を複線化できるように用地が確保されている。隣の東松江駅の間には、上り下り列車が行き違いが可能なように信号場も設けられている。

 

東松江駅が近づいてくると左手に大きな工場が見えてくる。こちらは新日鐵住金の和歌山製鉄所だ。こちらで造られる代表的な製品が高級シームレスパイプで、世界の石油・天然ガスの開発に使われている。

↑紀ノ川駅に停車する「めでたいでんしゃ かい」。駅の先で加太線へ入る。同駅が加太線の起点駅となるが特急は停車しない。難波駅方面から訪れ、和歌山市駅で加太線に乗り継ぐ場合、和歌山市駅〜紀ノ川駅間の重複乗車が認められている

 

↑紀ノ川駅で南海本線と分岐、カーブを描き加太線に入る。駅近くは複線となっている。また隣の東松江駅までの間には列車の行き違いが可能な信号場もある。写真は2230系。1960年前後に山岳区間直通運転用に造られた21001系を近年、支線用に改造した

 

紀ノ川駅を出て一つ目の駅、東松江駅の手前で、土入川(どにゅうがわ)を渡る。この鉄橋付近から、旧加太線の線路が和歌山市駅方面へ延びていた。そんな面影が線路に平行して設けられた歩行者用道路にも残っている。

 

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