【三岐線で新発見⑥】開館している日に行きたい貨物鉄道博物館
丹生川駅(にゅうかわえき)の近くに月に一度しか開館しない博物館がある。その名は「貨物鉄道博物館」。鉄道による貨物輸送が130周年を迎えた2003(平成15)年に開館した。日本で唯一の貨物鉄道専門の博物館で、一般からの寄付と、ボランティアにより運営されている。
専従のスタッフがいないためにオープンは月に1度。毎月第一日曜日の開館となっている(1月のみ2週目に変更)。4月は7日、5月は5日の予定だ。開館は10時〜16時で、入館無料だ。
月に1日のみと開館日は限られているため筆者も1度きりしか訪れたことがない。保存している車両は、今では見ることが少なくなった貨車を中心に15両。中には国立科学博物館の「重要科学技術史資料」(未来技術遺産)登録」されている車両が残る。次回はまた日を合わせて訪れたいと思った。
保存車両が博物館の周囲、そして丹生川駅前の線路に置かれている。屋外で保存しているために風雨による影響も大きい。そのためボランティアの人たちが手弁当で定期的に補修、そして塗装などの作業を進めている。
すでに走る姿を見ることができなくかった車両ばかり。そうした車両を少しでも美しく長く保存しようという有志の人たちの思いには頭が下がる。
【三岐線で新発見⑦】東藤原駅の先に分岐する引込線はどこへ?
丹生川駅付近からは左右に田園風景が広がる。また前に横に位置を変えて鈴鹿山脈や藤原岳が見えるようになる。
三岐線の旅も終盤、東藤原駅に到着した。非常にきれいなレンガ建ての駅舎に模様替えされていた。2017年に建て替えられたばかりだそうだ。少しずつ変る沿線の風景。こうした新しい発見が楽しい。
この東藤原駅は車両区がある保々駅に次いで規模が大きい。ホームに平行して留置線が何本も設けられ、貨車が停まる様子が見える。時にはホームで電気機関車に牽かれた貨物列車が停車している姿に出会う。
さて東藤原駅の先、構内から何本かの線路が分岐しているが、この先はどこへ行くのだろう。
上記の写真は東藤原4号踏切という東藤原駅近くの踏切横から撮影したもの。右はしが三岐線の線路で、左側が太平洋セメントの藤原工場への引込線となっていている。右手の三岐線の線路の先にも右手の工場へ入る引込線があり、このあたりの線路の敷かれ方が興味をそそる。
ちなみに東藤原4号踏切には注意書きがあり、貨物列車の入れ換え作業などで踏切が閉まってしまう時間がある。ここでは5〜15分ぐらい閉まることもあり、踏切にはその時間が記されている。とはいえ踏切を利用する大半は工場の関係者ということもあり、分かった上で踏切を利用している人が多いようだった。
【三岐線で新発見⑧】終点の西藤原駅で気になるSLを発見!
東藤原駅からは工場群を眺めつつ終点駅へ向かう。次の西野尻駅は三岐線で唯一の無人駅で、ホーム一つの簡素な駅だ。
三岐線はワンマン運転が基本なので、この駅で降車する人がいた場合は、運転士が乗車券を回収する。西野尻駅を発車すると、間もなく、終点の西藤原駅だ。このあたりまでくると、左手に鈴鹿山脈の山並みが迫ってくる。
東藤原駅が近くに工場が見え、賑やかに感じたのに比べて、終点の西藤原駅は静かな印象の駅だった。駅の背後には藤原岳が間近に見える。藤原岳の登山口が近くにあるたけにハイカーの姿も目立つ。
さて鉄道好きとしては三岐線の停車ホームの真向かいに保存される車両たちを見ておきたいところ。
先頭に置かれる蒸気機関車はE101形蒸気機関車のE102号機。三岐線が開業するにあたって汽車製造(後に川崎重工業に吸収合併)に発注した車両で、開業当時に貨車を牽いて走った車両だ。その後、20年以上にわたり三岐線を走ったが、電化されたのち、大阪窯業セメントに譲渡された。その後、三岐鉄道が70周年を向かえるにあたって里帰りした歴史的な機関車だ。
同駅で保存される車両は屋根があり、さらに掃除なども行われようで状態が非常に良い。こうした保存車両の状態を見るにつけ、三岐鉄道のスタッフの方々が、鉄道車両をいかに大切にしているのか、その思いが伝わってくるようでうれしい。
なお、保存車両が置かれた前の公園にはミニ鉄道用の線路が敷かれている。2015年3月までは三岐鉄道により「ウィステリア鉄道(地元が藤原であるから付けられた名前・藤=ウィステリア)」が走っていた。現在は県立の桑名工業高校の生徒さんたちが運転を引き継ぎ、庭園鉄道「桑工ゆめ鉄道」を走らせている。次回の運転は4月27日(土)の予定だ。