【わ鐵の秘密⑨】足尾駅の構内で保存されている車両群は?
通洞駅に比べると足尾駅はトロッコわたらせ渓谷号が到着した時間帯以外には閑散としている。かつて足尾駅は、足尾線の拠点だった。駅の趣はわ鐵の駅の中でも一番でないだろうか。筆者は足尾駅の造りが気に入っている。
私と同じように魅力を感じる人が多いのだろうか。駅舎を見に、そして写真を撮影に訪れる人を多く見かける。
さらに駅構内に隣接して、気動車や貨車、そして入れ替え用の貨車移動機など計9両の車両が保存されていた。車内などの公開も年に3回ほど設定されている。車両は駐車スペースに隣接して置かれているので、外からでもその姿を十分に見ることができる。
同車両群は保存車両を中心とした博物館の創設を目指し、集められたもの。そのためにNPO法人足尾歴史館・トロッコ部が設けられた。現在は同法人が解散となり、あしおトロッコ館として再出発している。通常は仕事を持つ鉄道ファンがみな手弁当で行ってきた保存活動だけに、保存車両の状態などを見るにつけ、その難しさが感じられた。
【わ鐵の秘密⑩】終着駅・間藤駅の先はどうなっている?
さて起点の桐生駅から1時間半。終点の間藤駅(まとうえき)に到着した。手前の通洞駅、そして足尾駅に比べて、さらに閑散とした印象の駅だ。山の入口の駅という趣が強い。
しかし、この駅が終点とはいうのには中途半端な感じがあるのだが。
足尾鉱山が盛況だった時代、この間藤駅の先に足尾本山駅という貨物駅があった。間藤駅は当時、旅客列車の終点となっていた駅で、貨物列車はこの駅から1.9km先に入った足尾本山駅を目指した。
間藤駅の先、県道250号線を少し北へ歩いてみた。線路は間藤駅のすぐ先で途絶えているが、駅の先、600mほど歩くと、県道を横切る踏切の跡と、線路が残っている。渡良瀬川の上流、松木川に架かっていた鉄橋も、橋脚そして橋桁がしっかりと残っている。
蒸気機関車が走っていた時代は、間藤駅構内はスイッチバックをして登る構造の駅になっていた。そして先にある足尾本山駅を目指した。
間藤駅の先には足尾銅山が栄えたころの面影を残す社宅跡なども残されている。鉱山として栄えた当時と比べれば、現状は寂しい限りだが、近代日本の基礎を築いた足尾の町を歩くだけでも、過去の繁栄ぶりをわずかに偲ぶことができる。
わたらせ渓谷鐵道では間藤駅から足尾本山(同駅の構内は入れない)まで廃線跡をたどるツアーをたびたび開催している。通常は入ることができない廃線跡やトンネル内を、係員が同行することにより巡ることができる。廃線巡りが好きの方にぜひお勧めしたいツアーだ。
【ギャラリー】