【いい電の秘密⑧】摺上川沿いに宿が並ぶ新旧風景を見比べる
いい電の終点駅、飯坂温泉駅。駅前からすでに温泉街が始まっていて、温泉情緒が楽しめる。
飯坂温泉の起源は古くは日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征までさかのぼるとされる。12世紀に西行法師も立寄ったとされる古い温泉地だ。
温泉街には共同湯が点在、湯治場として賑わった。明治後期に、飯坂温泉へ鉄道が通じたことで、より身近な温泉地として訪れる人が増えた。かつての温泉街の情景は古い絵葉書で偲ぶことができる。
ここでは現在の温泉街の代表的な風景と、大正・昭和初期の絵葉書と見比べてみよう。
ゆるやかにカーブする摺上川沿いに温泉街が建ち並ぶ様子は飯坂温泉の代表的な風景として親しまれてきた。
下は、約90年以上前の大正から昭和初期と推測される摺上川沿いの光景だ。3〜5階建ての木造の宿が、ぎっしりと建ち並ぶ。川には小舟も係留されている。
現代と比べると、建物は近代的なビル建築と様変わりしているが、建物を写し出す摺上川のゆるやかな流れは、100年たっても変わりないことがおもしろい。
【いい電の秘密⑨】芭蕉も浸かった鯖湖湯の新旧風景を見比べる
飯坂温泉は、古くは「鯖湖の湯」と呼ばれた。その名もずばりの名が付いた共同湯「鯖湖湯(さばこゆ)」が温泉街の中にあり名物となっている。
1869(元禄2)年には松尾芭蕉もこの湯にはいったとされていたとされる。日本最古の木造建築の共同浴場でもあった。
建て替えられたのが平成になってからとはいえ、木造の古い姿を再現した湯屋造りの共同湯があるのは何とも魅力的なところ。ただし鯖湖湯に使われる源泉温度は51度と高めで、やや冷ましているとはいえ、ぬる湯好きにはちょっと厳しいかもしれない。