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2019/9/15 18:00

昭和初期の風景がそのまま残る!「天浜線」11の秘密

【天浜線の秘密⑩】上り下りが目立つ路線、緑のトンネルを抜けて

駅や施設など見どころが多い天浜線。どうしても話題がそちらに向きがちだが、沿線および乗車した様子をここでレポートしよう。駅や施設へ訪れるだけでなく、乗っても楽しいのが天浜線だ。

 

乗車した印象としては東海道本線のように直線路が続く路線とは異なり、カーブが多く、適度なアップダウンがある。

 

沿線途中には太平洋(遠州灘)に流れ出る天竜川などの大小河川が流れる。天浜線はこれら河川の中流域を横切るように走っている。川を渡る箇所では標高が低くなり、川と川との間の区間では、なだらかながらも山越えとなる。険しいというほどではないが、適度な勾配があり、列車はそのつど上り下りする。

 

カーブのある路線を走り、橋を渡り、上り下り、山を越える部分では短いトンネルを抜ける。加えて奥浜名湖の風景。変化に富む路線風景そのものと言って良いだろう。

 

↑JR掛川駅北口の改札口を出たら左へ。その先に天浜線掛川駅がある。小さな待合スペースと、切符の販売窓口が設けられる。JR駅の1番線ホームからも連絡通路があり、こちらを利用の場合は簡易型自動改札機の通り抜けが必要となる

 

さて起点の駅となる掛川駅。JR掛川駅1番線の西端に天浜線の連絡改札口がある。また駅北口を出て、天浜線掛川駅の玄関口へ向かっても良い。小さめの駅舎内には切符の自動販売機、並んで窓口、そして改札口がある。ちなみに1日フリーきっぷは1700円。掛川駅から新所原駅までの運賃は1450円なので、途中下車を数回する時には一日フリーきっぷの方が得になる。

 

天浜線掛川駅構内の線路は行き止まりの頭端式ホーム。1・2番線ホームがあり、ここから折り返し運転となる。列車は朝夕がほぼ30分間隔、日中が1時間おき。多くの列車が終点の新所原駅まで直通で走るが、日中は途中の天竜二俣駅で車両変更が行われることもある。

 

掛川駅を12時59分発の229列車。週末のこの日、1両単行で運転される列車の座席はほぼ満席状態で、立って乗車する人もいるほどだった。

 

↑戸綿駅(とわたえき)〜遠州森駅間で渡るのが太田川。この太田川橋梁も登録有形文化財に指定されている。橋の長さは192mのガーダー橋で、竣功年は1935(昭和10)年。天浜線の橋梁の中では古めだ

 

天浜線は全線が単線、非電化。途中駅で上り列車と行き違いをしつつ走る。

 

しばらく掛川市内の駅を停車しつつ、列車は進む。市内区間では駅間が短く、部活帰りの若者たちの乗り降りが目立つ。桜木駅を過ぎると、列車は北を目指す。路線は県道40号線(掛川天竜線)と並走して走る。新東名高速道路の下をくぐり、太田川を渡れば、森町の玄関口、遠州森駅へ到着する。ここまでほぼ30分、立っている人もほぼいなくなり、車内にはのんびりした雰囲気となる。

 

さらに走ると、遠江という地名を唯一残した遠江一宮駅へ。この駅でかなりの乗客が下りてしまう。遠江一宮駅の先からは周辺に水田が目立つようになる。丘の上に近代的な工場が建つ風景を眺めつつ、天浜線の中心駅、天竜二俣駅へ到着する。

 

ここでホームの向いに乗継ぎの329列車が待機していた。ちょうど転車台の見学スペシャルツアー「洗って!回って!列車でGO!」が終了した後ということもあって、座席は満席状態で、天竜二俣駅を発車した。

 

↑宮口駅〜フルーツパーク間では緑のトンネルをくぐるように走る。天浜線を乗車してみて、掛川駅〜天竜二俣駅間よりも、西鹿島駅と新所原駅の間の方がより変化があり楽しく感じられた

 

二俣本町駅(ふたまたほんまちえき)を過ぎて間もなく天竜川を越えた、次の駅、西鹿島駅で多くの人が下りてしまう。この駅から遠州鉄道に乗車して浜松駅を目指すのだろう。

 

しばらく空席が目立った。宮口駅を過ぎたあたりから沿線の緑が急に濃くなっていく。緑のトンネルをくぐって走る区間が連なり、車窓から望む風景がより爽やかさを増していく。

 

 

【天浜線の秘密⑪】終点の新所原駅の西側は愛知県豊橋市となる

遠州二俣駅から走ること約30分。気賀駅に到着する。気賀は浜名湖北部、旧細江町の玄関口にもあたる。乗り降りが多い駅で、列車はここで満席となった。この気賀駅近くには気賀関所がある。東海道の本道として使われた本坂通(姫街道)に設けられた関所で、気賀は浜名湖北部の交通の要衝であったことが分かる。

 

気賀駅からは進行方向、左手に注目したい。気賀駅の隣の西気賀駅を過ぎると間もなく浜名湖が見えてくる。こうした湖畔の風景が知波田駅(ちばたえき)付近まで楽しめる。

 

↑浜名湖畔にある浜名湖佐久米駅(はまなこさくめえき)。11月〜3月ごろにかけて、多くのユリカモメが訪れる駅として知られている。鳥インフルエンザがここ数年、問題となり餌やりを自粛したことから、以前ほどユリカモメの飛来は多くはないとされる

 

↑都筑駅(つづきえき)〜三ケ日駅間が最も浜名湖が良く見える区間。この付近の浜名湖は大崎半島により仕切られた支湖部分とされ、猪鼻湖(いのはなこ)という名前が付く。この湖付近から西側沿線にはミカン園が多くなってくる

 

三ケ日駅付近からも乗客が少しずつ乗り込む。奥浜名湖の風景は見えてはいるものの、やや離れた位置からとなる。終点の新所原駅が近づいてきた。沿線には田園やミカン園が広がる。

 

終点の一つ手前の駅はアスモ前駅だ。どのような意味がある駅名なのだろうと、思ったら、駅前にある自動車部品工場のメーカー名がそのまま駅名になったとのこと。現在はデンソー湖西製作所と名称が変わったので、駅名を変更したいところだが、コスト面の問題から、当分の間、駅名は元のままとなっている。

 

アスモ前駅を発車して、間もなく民家が沿線に見えてくると、間もなく終点の新所原駅に到着した。浜名湖に近い土地とあってか、駅舎内にウナギ店がある。改札を通るとウナギを焼く香りが鼻をくすぐる。

 

↑天浜線の新所原駅。JR駅をまたぐ自由通路を下りたところにある。このホームから掛川駅方面の列車が折り返す。駅舎内にはうなぎ店がある。養鰻業を営む人が自ら開いた店とあって国産鰻が美味しく、しかも手ごろな価格で楽しめるとあって人気も高い

 

新所原駅は静岡県最西部にある駅。駅の西側すぐの所に県境があり、越えると愛知県豊橋市となる。そのせいなのか、天浜線の列車を下車した多くが、そのまま東海道本線を豊橋方面への列車に乗り換える人が多かった。推測するに、新所原駅がある湖西市は、静岡県内の都市ではあるものの、豊橋市の経済圏に含まれるのかも知れない。

 

新所原駅から豊橋駅まで、東海道本線の列車でわずか2駅、約10分で到着する。もし天浜線の列車が国鉄時代と同じように豊橋駅まで直通運転していたとしたら、より便利だろうし、利用者がもっと多くなったのかも知れない。

 

↑静岡県の最西部にある東海道本線の新所原駅。2016年に橋上駅舎と自由通路が造られ、より快適に。天浜線の列車が右奥に見える。この駅のすぐ西側に愛知県との県境がある。ちなみに静岡県の最東部、熱海駅までは177.8km(営業キロ)とかなり離れている

 

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