【注目その⑦】自動運転が解除となり手動運転になる時とは?
自動運転はあらかじめ、マッピングされたルートを読み込み、それにあわせて自動運転が行われる。通常、走り始める指示を出し、走り始めたら、バスが止まるまで、何もなければ、ハンドル・アクセル操作は自動で行われる。
とはいえ、道路上ではイレギュラーなことも起きる。このバスでは前述したようにブレーキペダルに付いた小さな青ペダルを踏むか、またハンドルを操作、さらに運転席の左上のモニタ内のボタンを押せば、手動運転に切り替えられる。
どのような時に手動に切り替えるのだろう。まずはルート上に路肩駐車する車両があった場合、これは手動に切り替えハンドル操作をして、追い抜くことが必要になる。
また後続車が追い越しをかけた場合、前方を歩行者が渡った場合、自転車を追い抜く場合など、こうした場合は、手動に切り替えてバスの操作を行う。
【注目その⑧】出発式ののち一般利用者を乗せて走り出す
自動運転の実証実験が始まった9月14日。報道陣を乗せた試乗会が催された後に、出発式が開かれた。横浜市の林琢己経済局長、相鉄バスの菅谷雅夫社長、群馬大の小木津武樹准教授、と今回のプロジェクトに関わる事業者の挨拶が続いた。また里山ガーデンを運営する横浜市緑の協会、上原啓史理事長が来賓として紹介された。(敬称略/下記のテープカット写真・右から順番に)
事業者によるテープカットののち、まずは地元の保育園の園児および家族20名を乗せて、里山ガーデンへ向けて自動運転バスが走っていった。
その後は、通常のバスと、自動運転バスが交互に里山ガーデンとの間を結ぶシャトル便として走り始めた。こうして式典は無事に終了。1か月後の10月14日までこの実証実験は行われる。
【注目その⑨】自動運転への関心度は予想以上に高かった
式典が終了し、予定通りシャトル便として走り始めた自動運転バス。今回のプロジェクトは、この自動運転をより一般の人たちにも認知してもらい、将来、本格的な自動運転バスを導入するための一歩という意味合いも大きい。
一般の人たちはプロジェクトをどのように見ていたのだろうか。
ちょうどよこはま動物園のロータリーには「路線バス自動運転プロジェクトアンケート」というボードが用意されていた。下記はボードを設置した後、30分ほどの答えの数値である。
①自動運転バスにご興味はありましたか? | Yes:26 No:0 |
②以前に自動運転バスにご乗車されたことはありますか? | Yes:4 No:22 |
③乗車前に不安がありましたか? | 不安があった:3 特に意識しなかった:11 不安ではなかった:10 |
④乗車後に感じたお気持ちに一番近いものはどれですか? | 不安があった:0 特に意識しなかった:10 不安ではなかった:16 |
⑤お住いはどちらですか? | 横浜市内:20 横浜市外:6 |
このようなアンケートに答えた方々は、やはり自動運転に関心がある人が多いと見えて圧倒的に“興味あり”という答えだった。乗車前に不安を感じた人も、乗ってみたら、不安は解消されたと答えている。
ごく一部の声ではあるものの、今後の時代を見据えて、一般の人たちの多くが、自動運転の技術向上は欠かせないと考えていることがうかがえる。
【注目その⑩】レベル4へ向けて今後の課題を見ていく
最後に今回のプロジェクトを見つつ、今後の課題を確認しておきたい。今回の実証実験では、通常の公道とは異なり、通行車両が少なめで信号も途中に無いシンプルなルートである。
イレギュラーなことが起りうる一般道とはちょっと条件が異なるように感じた。また時速20kmと、いわばスポーツサイクル並みのスピードと遅い。
今後は、言わずもがなだが、まずスピードを高めることが必要になるだろう。さすがに20kmは遅く感じた。また次の段階として、信号がある道、一般車両と混じり、スムーズに走る実験が必要となるだろう。
さらにバス停での停車や、乗客の乗降の問題、運賃の支払いなど、路線バスの自動運転化には多くの問題が横たわる。
鉄道の世界では、新都市交通(自動案内軌条旅客輸送システム)という形で、すでに自動運転の技術が実用化されている。実用化されているものの、つい最近にもトラブルがあり、自動運転は果たして大丈夫なの、という声もあがっている。
乗り物の形態は異なるものの、自動運転が一般人に、より理解され、受け入れられる素地を社会的にも形成されていく必要が、まずあるのかも知れない。
今回の実証実験で関わられた事業者の方々はもちろん、こうしたことはすでに理解していることが、話からもうかがえた。
日本国内の働き手不足、高齢化は待ったなしの状況となっている。こうした社会背景を見ると、自動運転の技術は将来、確実に必要になるであろう。自動運転の技術を導入しくことにより、進歩していく過程では、例えば運転士が急に具合が悪くなった時など、システムが運転のフォロー役になるといった使い方ができるかも知れない。こうしたことが路線バスの安全性を高めることにもつながり、また効率的な運転を図ることに結びつけることもできよう。
将来的には運転士が乗車せず、数台を遠隔操作する「レベル4」という段階の自動運転バスが、一部に導入される時代が来るのかも知れない。先に紹介した群馬大学の小木津准教授は2020年に早くもレベル4の自動運転を目指すと語っている。
そのためには、より技術の精度を高め、さらに自動運転用のセンサを道路側に埋設するなど、社会インフラの整備も必要となっていく。加えて自動運転に関しての法律の整備が必要となってくるのであろう。
私たちも徐々に広がり、浸透しつつある、そうした自動運転への理解を、深めていくことが大切な時代へと近づいているのかも知れない。
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